トコちゃん(その4) | ちいさな、おはなし。

トコちゃん(その4)

あたりいちめんのうつくしい光に包まれながら、
トコちゃんは目をぱちくりさせてつぶやきました。

「お空が目をさましたのね。お花や木も目を覚ましたのね。」

あかるく照らし出された道を、トコちゃんはふたたび歩き始めます。
もう、コッペパンの雲はいないけれど、
お空にはお月さまと星たちが、
道ばたには目をさました色とりどりの花や木たちが、
このちいさな女の子のおぼつかない足取りを、
それはやさしいまなざしで見つめ続けるのでした。

あかるく照らし出された道を、トコちゃんはどんどん歩き続けます。

木という木が、風にゆらめいて、かすれあって、ざわざわと音をたてます。
これこそが、まさに木というもののおしゃべりなのでありますけれども、
トコちゃんにはこのように聞こえました。


「これからどうするんだい?トコちゃん。」


トコちゃんは目をビー玉のようにまんまるにして、すぐさまこう答えました。


「あたち?帰るのよ。おうちに帰るのよ。」



そんなトコちゃんのようすを見て、
あたりの木や花たちは、おもわず目を細め、そして、クスクスと笑い出すのでした。

お空のお月さまや星たちも、いっせいにクスクスと笑い出します。

・・・ザワザワ、クスクス、ザワザワ、クスクス・・・


「お~い。とわこ!」

向こうの方から、おとうさんの声が聞こえます。

トコちゃんはうれしそうに、かけあしを始めました。

でもしばらくしてトコちゃんは、何かを忘れたかのように、
はたと立ち止まって振り返ります。
そしてこう言うのでした。


「お月さまもお星さまも、お花も木も。い~い?
 みんな。あんまりよかふし、しちゃだめよ!」


トコちゃんはもういちど、ささやくように言いました。


「い~い?  よ・・か・・ふ・・し・・ しちゃだめよ!」



そんなトコちゃんのようすを見て、
あたりの木や花たちは、さきほどよりもいっそう目を細め、
そして、ふたたびクスクスと笑い出すのでした。

お空のお月さまや星たちも、も一度クスクスと笑い出しました。
もちろん、タンポポも。みんなやさしく、目を細めて。

・・・ザワザワ、クスクス、ザワザワ、クスクス・・・

おとうさんのもとへ走りよるトコちゃんの後ろ姿を見やりながら、
光をはなつあらゆるものたちのおしゃべりは続きました。

その日は、朝までずっと、お空も大地も、
あかるく光りかがやいたままだったそうです。


(おわり)