ベースボールプレイヤーズ・ハイ | ちいさな、おはなし。

ベースボールプレイヤーズ・ハイ

最初の一本の外野フライを捕球して返球する。
すぐさま左に走ると、そこにはすでに二人目のノッカーが放った打球が空を走っている。
ギリギリのところで追いついて捕球し、返球するが、すぐに左に走らなければならない。
すると既に、意地悪な三人目のノッカーが打った打球が自分の左斜め後方に飛んでいる。
なんとか追いついて捕球し、ゼーハーいいながら返球する。

これで1セット。これを10セット完了するまで続ける。

エラーしたらそのセットは最初からやり直し。
しかも、エラーしたボールを最後まで追って拾い、
それをノッカーとペアを組むキャッチャー役のコーチに「運んでいく」。
投げ返してはいけない。ペナルティなのだ。この距離がまた遠い。

そして、これら一連の過程で、いっさい足を止めてはいけない。

スタミナと根性の育成。
スポ魂一辺倒の無意味なメニューのようでいて、実はそうではない。

子どもたちが本当にぶっ倒れてはいけないので、そこに交ざって僕もやってみた。
僕はこのチームでテストジャンパーのような存在だ(笑)

いざやってみて、高校時代をよーく思い出した。

最初のうちは元気いっぱい。
しかし3セットくらい終わったところで最初の限界がくる。
走る量がハンパないので、息が苦しくなるのだ。
ノッカーてめえこのクソ野郎!という憎しみ(笑)がわいてくる。

そこでまたひと頑張りする。

すこしノッてくる。

6セットくらい終わったところで二回目の限界がくる。

このころにはノッカーの癖が分かってくるので、
てめえノッカー!貴様の球筋はお見通しだこの野郎、という余裕が生まれるが、
なにしろ息も絶え絶えで足も動かない。
もうだめだと思うが、この頃には強烈な意地が芽生えてくるので止める気にはならない。

なんとかもう一度気持ちがノッてくる。

8セットくらい終わり、あともう少し、というところでエラーしてしまう。
足がふらふらで、これが最後の限界だ。いわゆる「心が折れそう」というやつ。

そこへ飛んでくる意地悪な打球に、憎しみと怒りを込めて飛びつく。ギリギリ捕球成功。
こうなるとあとは楽。

最後の2セットは、目が揺れ、足はガクガク、意識もうろう。
顔を真っ赤にしながらも、ノッカー早く打てやゴルア!みたいな悪態をつきながら、とにかくボールを追い、捕る。そして投げかえす。

気持ちは完全にハイ状態。苦しさを通り越した快感がおしよせてくるのだ。

10本すべて終わって、子どもたちを観察してみた。

案外子どもたちも根性がある。
「苦しさが生み出す意地と興奮状態」で、普段だったらありえない集中力を発揮するヤツが続出。

なにしろエラーしたら最初の位置に戻ってやり直しだ。
ボールに飛びついたことのない子が、必死に飛びつくシーンを何度も目撃した。
立派なダイビングキャッチ。超ファインプレー。

当然ながら一番乗りは僕であったが、その僕に負けて本気で悔しがる選手が一人いた。
普段はきわめておとなしい人物だが、その負けん気の強さに感動し、思わず抱き上げてしまった。

午後、家族の買い物につき合う。
雑貨屋の店内で、買い物かごを手にして、それから。

立ったまま熟睡した。



練習のBGMにこういうダンサブルな曲をかけたい。
Shalamar - Night to Remember