【小説】-peRon- No.18「灯籠鬼<朱>」Custom Blythe  カスタムブライス | = peRon = 工房

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monfeen-peRon-  

Custom Blythe No.18

 

 

ー灯籠鬼<朱>ー


 

 

 

 

 

この神社には迷える人々を導いてくれる可愛い小狐がいると噂されている。



「…君はまた参拝者を迷わせたんだって?」

多くの小狐たちが走り回り、いろんな仕事をする中
大きな広場で正座をさせられ、ふてくされている小狐が一匹いた。


「だって・・・ムカついたんだもん。」

「だからと言って参拝者を化かすのはよしなさい。」

手に持つセンスで小狐の頭をポンとたたくのは、小狐たちよりも大きく立派な尾と耳を持つ狐。

「君にはしばらく、この境内の北にある故祁雨寺(こけうじ)での修行を言い渡す。」

「えっ!!あの古びた薄暗い場所に!?」

「あの場所はとても神聖は場所だ。失礼のないように。」


ポーンと広場から放られた小狐は唇を尖らしながら故祁雨寺にしぶしぶ向かった。



しばらく歩くと徐々に日の光が入りずらい道になり、苔が生い茂る涼しい場所にひっそりと佇む屋敷にたどり着いた。

でもなぜこの場所で修行を言い渡したのか小狐はわからなかった。

ただ薄暗い場所で罰として掃除をしろ、というならわかるけど、
修行という意味はどういうことなのだろう。

とりあえずたどり着いた敷地に入り散策していると、薄暗い部屋の奥からポウと光がいくつも生まれていった。


「彼から聞いているよ。ここでしばらく修行をさせろと。」

落ち着いた声色はどこか聞いたことがある。

暗闇からその姿が現れた時、小狐は憤慨した

「僕の邪魔をした苔男!!!!」

小狐はあの出来事を嫌でも思い出した。



********************

稲荷神社に一人の人間の娘がやってきた時だった。

小狐はいつものようにいたずらしようと、しめしめと灯籠鬼の役割である案内を買って出た。

小狐は人間の姿になり、娘を徐々に境内から離れた場所に迷わせようと案内する間、娘の愚痴を聞いていたのだ。

「早く大きくなって、家を出たいの。」
「口うるさいんだもの。」
「親がちゃ失敗したかもね。」

軽々しくいう娘に小狐はいら立ちを感じた。


小狐は嘗てこの境内の近くで、母狐の育児放棄によって死した小狐だった。
恨みにより生まれた鬼火だった小狐を、哀れに思ったお稲荷様の慈悲によって救われ、境内の神具である灯籠を依り代に生まれたのが灯籠の妖怪、小狐だ。

その生前の記憶が反映された小狐は、境内生まれの小狐と違い性格に難があった。

家族という存在を毛嫌いしたり、幸せを求める人間が嫌いだった。

だから母がいるというのに、文句をいう娘に今までにないいたずらをしてやろうと思った。

それなのに、妖力を練り上げて化かそうとした瞬間に、あの苔男が現れた。

小狐の無視するように娘と話をし始めた苔男は、徐々に娘の本音を掘り出していった。



「迷惑を掛けたくなかった。」
「自分の事を後回しにして、私の事ばかり気にして。自分を大切にしてほしかった。」
「親がちゃも、自分が当たって申し訳なかったって思ってる。」


さっきのいう言葉とは違うことを言う娘。
その言葉は両親を思う気持ちでいっぱいだった。

小狐は言葉を失くし、唖然とした。

家族という存在を知らない自分には持ちえない複雑な感情。

それを導くように促す苔男に興味がわいたのは一瞬。
気づくと苔男と娘は小狐の前からいなくなっていた。

「あの苔男っ!僕のおもちゃを取り上げたなぁ~っ!」

小狐の叫びは空しく樹々に木霊した。




一方苔男は、娘をもとの境内につれ戻していた。

「その素直な思いを胸に、願うといい。」

その思いは叶うだろう。

娘は笑顔で苔男にお礼を言って御殿に向かった。


********************



右の顔半分を苔に覆われた男は、開かない瞳を小狐に向けた。

「いたずら狐を面倒見てほしいと言われたけれど、君だったんだね。」

「・・・もしかして、このお寺ってあなたの・・。」

「いいや、私は君と同じ灯籠の妖怪だよ。素材は石だけどね。
あと、此処にはもう祀られている方はいないよ。」



「ふーん・・・。」


苔灯籠に案内された屋敷は古ぼけた場所にあるせいか、屋敷内にも苔や草木が生えていて、もうしばらく誰も管理がされていないのだろうとわかった。

「ねー、修行ってなにするの?」

「そうだね、、、とりあえず今日はこの絵馬を仕分けしようか。」

ドンつと障子をあけられた部屋には、みっちみちに重ねられた絵馬。

「え、これ全部!?」

「ええ全部。さぁ、始めましょう。」






「だぁ~!もう疲れたー!!休憩したいー!」

持っていた絵馬をばらまき、畳に倒れこむ小狐。

「まだ10分の1も終わっていないよ。」

「なんで仕分けなんてしないといけないの?どうせ全部燃やすんだから一緒じゃないの?」

うつ伏せで寝ころびながら足をパタパタ動かす小狐

「最近の人間は意味もない内容だったり、ヒトを呪う絵馬を奉納する者もいるからね。真に他者を思いやる願い事を叶えるために必要なのが、この作業なんだよ。」

「へぇー、あ、これとか?」

小狐が見せた絵馬には「部長が禿げますように。」「(=゚ω゚)ノ」などだ。

「ふふ、そうだよ。よく見つけたね。」

小狐の頭をよしよしとなでると、小狐は顔を真っ赤にして急に立ち上がった。

「な、撫でないでよ!なんかむずむずするから・・・。」

そういってどすどすと部屋から外へ飛び出した小狐に、ほけっとした顔になる苔灯籠だった。

「何か悪いことをしたかな?」




あれから数年、小狐はそれなりに修行をしながら苔灯籠のいうことをしぶしぶ聞く程度に態度は軟化していた。

時々本殿に戻って多少の手伝いをしながら、灯籠の本来の仕事もそれなりにしていた。

時々この奥深い場所にくる人間を化かそうとしたけど、すべて苔灯籠に邪魔されるけどね。


そんなとき、あの時の娘がこの奥深いお寺までやってきた。

「あ、あの時のバカ娘だ。」


娘はあの時、諭してくれた男を探していたらしく、境内の人に聞いてここまで来たらしい。

小狐を見た娘は男の行方を聞いて、屋敷にいるとだけ伝えて娘を見送った。

立ち去る娘を見て、もう娘じゃないんだなと感じた。

以前来た制服姿のどこか虚勢を張った姿とは違い、凛とした姿勢と眼差し。

あの娘があの後どうなったか知らないけど、間違いなく苔灯籠のきっかけがあったからだろうとは思った。



「どうも有難うございました。」

「いえいえ、これも私たちの役目ですから。」

屋敷から出てきた二人をこっそりのぞき見していると、小狐に気づいた二人はこちらに手を振った。


またむずむずする。

「修行の身らしいじゃない。頑張んなね。」
彼女がしゃがみこんで小狐にいうと、

「僕に騙されそうだったくせに、生意気!」

コンコンと怒る小狐。


「ふふ、子供は少しやんちゃなぐらいがちょうどいいんですよ。」

苔灯籠はそんな小狐を撫でながらなだめた。
それが逆効果だったのか、さらに怒って走り去っていってしまった。


「それで、お母様は・・・?」
「・・・去年亡くなったの。余命宣告でもって半年って言われてたのに、受けてから5年も生きてたのよ。すごいでしょ?」

「それは良かった。」

「・・・あの時、素直になれたのは貴方のおかげ。当時の私は思春期真っ盛りの生意気な子供で、親のきもちなんてわからなかった。赤ちゃんを産んで大変さを知って、改めて思ったの。」

どんなに馬鹿をして、失敗しても、見守ってくれる家族たちの温かさを。


「それに、あの子が私と出会わなかったら、今此処に来なかったもの。」


向こうで集めた落ち葉をばらばらと散らして遊んでいる小狐を見た。

「そうですね。」

そんな小狐を見つめる苔灯籠の瞳は閉じられていたけど、彼女は母の温かさに似たものを感じた。



ー神迎祭ー

全国の神様がとある神社に集まる日のため、お稲荷様や小狐以外の兄姉狐たちは数日間不在にする期間が来た。

小狐たちもみな寝静まり、いつもより静かな夜。


小狐も灯籠の火を消し帰ろうとしたとき、事務所の方から妙な物音を聞いた。

キツネの姿でその音のする方へこっそり向かうと、そこにいたのは複数の人影。




「あれ・・、泥棒・・・?」

回収した賽銭を保管する場所でもあった。

物音で起きてきた小狐たちもその異常さに気づいたが、人間から見たらただの動物の狐に出来ることなんて何もなかった。

どうする?
誰か呼ぶ?
でも僕たちしかいないよ?
どうするの?

ガンガンと建物や物を壊す音が聞こえ、小狐たちはみな怯えていた。

泥棒が賽銭が入った箱をもって出てきたとき、小狐は飛び出していた。


泥棒達によって踏みにじられた絵馬やお守り

我慢ならなかった。


小狐は絵馬を踏む男の足にかみついた。


驚いた男は小狐を蹴り上げ、追い払うために近くの箒を持ち出した。


大きく振りかぶり、倒れた小狐にたたきつける瞬間、


猛烈な光によって男たちは一様に目をやられた。

「何をしているんだい?」

いつもの声ではなかった。

二重に聞こえる声は、一つは苔灯籠の声。

しかしもう一つは鐘がなるような声。


でもわかる、いつもの温厚は声色ではなく、怒りに満ちた声だ。

小狐の痛む体を掬い上げたのは巨大な手。

男たちは首を痛めるほど見上げなければ見えない、その大きな存在に悲鳴を上げた。


「神は不在であろうが、悪事は見ているぞ小僧ども。」

金の瞳がギラリとねめつける。
ポウと石の灯籠がゆらり、ユラリと男たちの周りを旋回する。


「許しは三度まで。ゆめゆめ忘れるでないぞ。」

男たちはがたがたと震え上がり、何度も頷くと、脱兎の如く走り去ってしまった。

隠れていた小狐たちは散らかされた賽銭や壊されたものを集めて、あわただしく動き始めた。




「・・・どうしてこんな無茶をしたんだい。」

元の大きさに戻った苔灯籠は腕に収まる小さい狐を見つめた。

「守りたかったの・・・っ。でも、僕じゃ・・・力不足でっ!」

えぐえぐと涙を流し、苔灯籠の着物にしがみついた。

「一緒に、お手伝いしたのに・・・あんな奴らに、」

「・・・境内で悪さをする物にはお狐様の祟りが下る。」

「じゃぁ、僕がしたことは無意味なの・・・?」

「いいや。君による制裁がすでに下っているという意味だよ。
ふふ、あの間抜けな顔を思い出すだけで笑いが出てしまうな。」

「そっか・・・。苔さんもそんなことおもうんだ。」

「ええ、温厚と言われていようと怒りを感じないわけじゃあないよ。ましてや、大切な家族同然の君を傷つけたのだから。」

小狐はその言葉にぽかんとしたのちに、顔を真っ赤にさせていった。


「この数年、君と暮らして長らく忘れていた気持ちを感じていたよ。」

「それって、むずむずする感じと一緒・・・?」

「そうだね・・。どこかむず痒くて、でも幸せなんだ。」


嘗て使いとしてあの方を支えていた。
信仰する人が減り、衰弱したあの方をこの身に降ろすことで妖怪と神の半神となった己。

他者と長く接することがなくなった身は、寂しいという感情はとうになくなり、一人で暮らすことに何も感じなくなっていた。

小狐をあの子から面倒を見てほしいとお願いされて、受け入れてから生活は大きく変わった。

私の周りを面倒くさそうにウロチョロする小狐。
頼んだ仕事を放り投げていたずらをする小狐を叱ったり

慌ただしく一日が流れていく。

でも大変だなんて思わなかった。


あの方が私に接した気持ちは、こんな気持ちだったのだろうか。

人間の家族という形を思い出した。



「僕、母狐に捨てられて、家族ってやつが嫌いだった。
ここに来る幸せそうな家族を見て、嫉妬してたんだと思う・・・。」

境内では同僚のような扱いだったけど、僕だけ違う感じがして居心地が悪かった。


「いたずらっ子でよかったって思うよ・・。苔さんが僕に家族を教えてくれたから。」

「ふふ、君がやんちゃでよかったよ。」


 
 
 
あれからまた数年

「どうして泣いてるの?」

「ヒックっ・・・お母さんとけんかしてっ、しかられたの・・・っ」

「そっか・・・。」

朱い袖口でうずくまる少女の涙をぬぐってやる。

「どうして叱られたかわかる?」

「わ、わたしが・・・お友達のおもちゃこわしちゃった、から。」

「そっか。壊したから叱られたの?」

「・・・壊したことも、怒られた・・けど、」

「けど?」

「お友達にあやまらなかったから・・、だから・・。」

「君のお母さんはすごいね。」

よしよしと少女の頭を撫でながら、小さい手を引っ張りながら立ち上がらせる。

「叱るってことは、憎まれ役を買ってでも君の成長を願っているからできることなんだよ」

「、私・・・お母さんきらいっていっちゃった・・・。」

「今はどう?」

「きらいじゃない・・・、好きだもん。」

「じゃあその気持ちをちゃんと伝えよう。」


少女はやっとうつむいた顔をあげた。

ギュッとつないだ手を引き、境内に導いた。



少女を探していた母親がこちらにかけてきて、少女を抱きしめた。
迷った子を心配した彼女は嘗てのあの娘。

少女は母親に涙ながらにあやまり、母親はその素直な気持ちで友達にあやまっておいでといった。




この神社には迷える人々を導いてくれる可愛い小狐がいると噂されている






「あなたにあの子を任せてよかったです。」

「そうかい?あのいたずらっ子を見ていると、昔の君をおもいだすよ。先代はよく手を焼いたと聞いたから。」

「・・・・では、私は次の仕事に戻りますので。」

「ふふ、お稲荷様も大変だね。」




 

 

 

 

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最後までお読みいただきありがとうございました!

 

神社とお寺一緒の場所にありますが、神仏習合という設定にしてます(=゚ω゚)ノ

そんなに詳しいわけではないので、いろいろごった煮ですwww

 

今回は家族愛をテーマに互いを導きあう灯籠鬼のお話になりました。

 

小狐くんは灯籠鬼<朱>の神社系列の灯籠

苔さんは灯籠鬼<石>の寺院系列の灯籠という形です。

 

誰しもとおる思春期にある生意気な時期を経て、小狐はちょっとづつ成長しました。

 

今ではただ案内するのではなく、導く案内の仕方に。

 

苔さんの背中を見て育ちました!!

 

お稲荷様は小説内では狐の姿で描かれていますが、実際は狐は使いの姿であり、お稲荷様自身は狐とは関係ないらしいですが、わかりやすいのでその形を取りました(;^ω^)

 

いつかこのお稲荷様もカスタムできたらいいなぁ~!

 

 

 

ではでは、最後までお付き合いいただきありがとうございました!