「すまないが話がある。いいだろうか?」
「どうぞ」
omega スピードマスター
泣き崩れるエルシアの肩を抱きながら、レイヤーが平然と答えた。彼には動揺した様子が全く見られない。ルナティカにとっては話ができるかどうかが重要なので、それは彼女にとっては非常に好都合だった。だが同時にレイヤーの人間としての感性も多少疑わざるを得なかったが。
「これからの話。お前達、当ては?」
「ないです。一緒に連れて行ってくれるとの話だったのでは?」
「それは私とお前の間の場合だけ。他の二人はどうか」
ルナティカはエルシアとゲイルを交互に見た。ゲイルはなんとなく話をレイヤーから聞いていたし、彼自身現金な人間である。ゲイルはいち早く頷いたが、エルシアは違った。
「やよ」
「聞こえん。もっとはっきり話せ」
「嫌って言ったのよ! 誰がここを離れるもんですか! だって、まだオブレスや皆の墓も作ってないのに!!」
エルシアが癇癪気味に言い放つと、残りの三者の反応は様々だった。ゲイルはうろたえ、レイヤーは多少困ったような顔をし、ルナティカはさらりと受け流した。
ルナティカがちらりとアルフィリース達の方を見ると、彼女達は既に出立の準備をほぼ終えている。余り時間に余裕のない事を悟ったルナティカは、割りきった行動に出た。
「そう、ならばお前だけがここに残るの。そう他の者に伝えておく」
「え私だけって」
「他の二人は連れていく。もうそのように伝えてあるし、私自身がこの二人を気に入っている。鍛えれば戦士として使いものになるかも。今は人手が欲しい時期だから」
「ちょ、ちょっと待ってよ。レイヤーもゲイルも私と残ってくれるんでしょう?」
「う」
ゲイルが言葉に詰まる中、レイヤーはあっさりと言い放った。オメガ アクアテラ
「残らないよ。こんな街にもう用はないし、誰を弔おうにももう全て灰になって残っていないさ。墓に何を埋めていいかもわからない。だいたい墓なんて、生きている人間の自己満足だ。死人はどれほど悲しんでも帰ってこないし、そのために僕達が危険な目に会うなんて馬鹿げてる」
「ひどいわ、レイヤー。そんな事を言うなんて」
「おい、レイヤー。そんな言い方は」
エルシアとゲイルが信じられないと言った様な表情をするが、レイヤーは冷酷とも言える表情を崩さなかった。やがて彼はくるりと踵を返すと、ルナティカを促してアルフィリース達の方に歩いて行った。後にはやや呆然としたゲイルとエルシアが残されている。
そして少し離れると、ルナティカが先を行くレイヤーに声をかけた。
「いいの?」
「何が?」
「あの二人。決断が遅れれば私達は出立してしまう」
「大丈夫だよ」
レイヤーは即答した。その答えには惑いが無い。
「エルシアはああ見えて甘えん坊だ。一見強気だけど、その中身は年相応だ。それに馬鹿じゃないし、一人じゃ何もできないのも彼女はよく知っている。今は頭が混乱しているけど、こちらにきっと付いてくるさ。
それにゲイルも図体ばかりでかいけど、それだけじゃ何もできないことを知っている。彼は生活に何が必要かよくわかっているし、二人じゃこの先どういう事になるかわかっている。いざとなればエルシアを担いででも連れてくるさ」
「大した言いよう。でも、信頼しているんだな」
「そうかな」
レイヤーが素っ気なく言ったのが、ルナティカには不思議に感じられた。こういう感情を、なんと表現すればいいのかルナティカにはわからない。後でリサに聞いてみ
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