24年前の1月16日の朝は、何でもない朝だった。
神戸の小学6年生だった私は、その日から始まる2泊3日のスキーキャンプに出かけて行った。
私たちはバスに揺られて兵庫県の北の高原リゾート、ハチ高原スキー場に出かけたのだ。
私はスキーをするのは初めて。
体育があまり得意ではない私は、期待よりも不安の方が大きかった。
きっとまた、うまくできないに違いない。
でも、少し期待もしていた。
神戸は温かい土地なので、
冬に雪が降ることはあっても滅多に積もることはない。
スキー場になんて行ったことがなかったから、
そこはどんなところなんだろうと少しワクワクしていた。
自分が育った町からたった2日離れるだけ。
つかの間の非日常を体験してきたら、また日常に戻るのだ。
そのことに一片の疑いも抱かなかった
12歳になる前の私。
過去にはどうしたって戻れないけれど、
もしも戻れるなら戻りたい。
戻って言いに行きたい。
今逃げんかったら、死んでまうねんでって
伝えたい。
いつもの日常は、
或る日突然消えてしまう。
戻って叫んだところで
きっと誰も信じはしないんだろうけど。
それでもやっぱり戻りたい。
戻れるのなら
戻らせて。