「廃材」に光当てた新作
「廃材」に光当てた新作
もはや生活の中で欠かせない要素となった、エコロジーやリサイクル。今後のひとつの方向性を予感させる活動を、おしゃれの国フランスでみつけた。クロエ不要になった素材をエスプリと職人技で再創造するエルメスの企画と、パリの街の古着回収ポストについて話を聞いた革のブランコ、ワニ革の模型飛行機、紅茶ポットの注ぎ口を使ったコート掛け。エルメスが昨秋初めて発表したコレクション「プティアッシュ」の品々は、それが革の切れ端や品質基準に漏れた品など「廃材出身」とは思えないほど精緻(せいち)で夢のあるデザインが特徴だそのアーティスティック・ディレクターで、エルメス家6代目一族のひとりパスカル・ミュサールは「軽やかなセンスや動きの優雅さ、生活に役立つ物という点はエルメスの基本。クロエ財布そこに、素材への敬意と全く新しい解釈を加えてみようという試み」と説明する製品にならなかった素材をアトリエに集め、内外のクリエーターと社内の馬具や皮革、銀細工など十数部署の職人たちが一堂に会してアイデアを語り合い、共同作業で製品を作った。「まるでアリババの洞窟みたいな有り様だった。縦割り組織の中で分野を超えて創造力を広げていく懐の深さが、社の将来につながると考えた」とミュサール。そのためには、職人たちを1人ずつ説得して回ることが必要だったという柄がわずかにずれたスカーフを外部のデザイナー、グスタボ・リンスがパレオにしたり、角が一部欠けたトランプは木と革でサイドテーブルに仕立てたり。クロエバッグ発表は不定期で、2回目のコレクションは6月中旬から7月初旬まで東京で期間限定販売されたミュサールは子供の頃から古い物や河原の石など「見捨てられていたもの」に興味があったという。「価値のないものはこの世に存在しないと思う。あまり価値がないとされていた物に新たな光を当てる実験室として、そこで見つけた大事な何かを届けていきたい」(編集委員・高橋牧子)
