【作品名】フェア・ゲーム

【原題】FAIR GAME

【監督】ダグ・リーマン

【出演】ナオミ・ワッツ、ショーン・ペン

2010年 アメリカ作品

【ストーリー】ビックリマークネタバレになるのでこの映画を観る予定の方は読み進まないでください。
投資会社社員を装うヴァレリー・プレイム(ナオミ・ワッツ)はCIAの秘密諜報員。
元ニジェール大使で夫のジョー・ウィルソン(ショーン・ペン)と、イラクに核開発計画がないことを政府に報告する。
しかし、この報告を無視して2003年、ブッシュ政権はイラクに宣戦布告。
ジョーがニューヨークタイムズ紙にイラクにおける調査報告を寄稿したことから、報復としてヴァレリーが諜報員であることがアメリカ中に公表されてしまい、家庭生活は崩壊の危機に瀕する。
くじけそうになりながらも、メディアを通じふたりは反撃に出る。
最後は議会を動かし、委員会の調査を経て、司法当局を動かし、大統領側に勝利=家庭生活を取り戻す。
ふたりの葛藤と絆がリアルに描かれている。
     お父さんのささやかな幸せと抵抗-フェアゲーム②お父さんのささやかな幸せと抵抗-フェア・ゲーム⑥

               お父さんのささやかな幸せと抵抗-フェア・ゲーム⑨
驚くべきことは、これは実話であり、最後のシーンで本物のヴァレリーが議会で証言するTV映像が流れる。


【感想】
政府の執拗な報復攻撃に夫婦で立ち向かう姿を後半に描くために、前半の展開がスピード感をもって描かれるといえば聞こえがいいが、あまりに場面の変わり方が早くて、疲れる。

座席の背もたれにもたれかかってはいられず、体を前に乗り出して首や肩に力がはいったままになってしまった。

事実に基づいているが、それだけに、当時のアメリカのイラクへの戦争、大量破壊兵器、アメリカの政権や議会の仕組みをある程度認識していないと、ストーリーを追いかけるにも背景が理解できず、面白味は半減するだろう。

うまくまとめあげた映画だが、そういう意味では非常に日本人には理解が難しい作品かもしれない。


主人公ヴァレリーが知人から「人を殺したことあるの?」と問われて返事に窮すシーンや、新人時代に恐ろしい疑似拷問の研修を受けた過去を夫に告白するといった際どいシーンがある。

国家権力の内側にいるときはその巨大な力が個人を守ってくれる。
しかし、その外側に放り出されて、この力に個人が押しつぶされそうになったらどうするか。

このヴァレリーとジョーのケースは、国家権力が都合の悪い事実を隠ぺいするために個人を社会から葬り去ろうとする。これに対して彼らはあらゆる手段で抵抗し、戦いを挑む。
この戦いはやがてメディアでも議会でも取り上げられて、司法当局も動かし、真実が明らかにされ、彼らは名誉を回復し、生活も守られた。
          お父さんのささやかな幸せと抵抗-フェア・ゲーム⑧お父さんのささやかな幸せと抵抗-フェアゲーム③
民主主義の国(?)アメリカであっても、きっと、この何十倍も、闇に葬られているケースがあるのだろう。事故や病気に見せかけて命を失ったり、公表しないことを条件に、いわば泣き寝入りで社会から隠れてひっそりとくらしたり・・・

アメリカ以外の国であったら到底ここまでは戦えなかったことだろう。

実話として語られるだけアメリカはまだよい国なのかもしれない。



ナオミ・ワッツは印象としては、キングコングで注目された女優でそれほどとは思わなかったが、美人でありながら知的なセンスをただよわせ、かつ凛とした姿のカッコイイ女優だった。

若いころは売れずじまいだったが、いまは存在感のある女優だ。
     お父さんのささやかな幸せと抵抗-フェアゲーム①お父さんのささやかな幸せと抵抗-フェア・ゲーム⑩


ショーンペンは悪たれ小僧の印象が強かった。
1985年に歌手のマドンナと結婚したが、4年後に離婚。
1987年には飲酒運転と暴行で逮捕、6ヶ月の実刑を受けている。
他にもトロント映画祭会場内で喫煙し、屋内喫煙を禁じた法令に抵触し罰金刑となるなど、“映画界の悪童”として知られている。

また、過激な抗議活動で知られる反捕鯨団体シーシェパードを支援している。
一方でハイチの大地震では現地へ行き、復興に多額の資金を援助するなど、社会貢献活動をちゃんとしている。

年齢を重ねて、役者としての幅と奥行きが備わったように思う。
今回のジョーの役などは、まさにはまっている。

市民の前での演説シーンは演技とは思えないくらいに上手い。
               お父さんのささやかな幸せと抵抗-フェア・ゲーム⑦


テーマの重みと主演の二人の演技がよかったので、評価は次のとおり。

評価 ★★★★☆