【題名】日輪の遺産
2011年 日本映画 2時間14分
【監督】佐々部清
【原作】浅田次郎
【出演】極秘任務班
真柴司郎(近衛第一師団・少佐) - 堺雅人
望月庄造(座間五百一連隊・曹長) - 中村獅童
小泉重雄(東部軍経理部・主計中尉) - 福士誠治
森脇女学校
野口孝吉(森脇女学校教師) - ユースケ・サンタマリア
久枝(森脇女学校女生徒) - 森迫永依
スーちゃん(森脇女学校女生徒) - 土屋太鳳
マツさん(森脇女学校女生徒) - 遠藤恵里奈
サッちゃん(森脇女学校女生徒) - 松本花奈
軍首脳
阿南惟幾(陸軍大臣) - 柴俊夫
梅津美治郎(参謀総長) - 串田和美
田中静壱(東部軍司令官) - 山田明郷
森赳(近衛師団長) - 野添義弘
杉山元(第一総軍司令官) - 麿赤兒
GHQ
ダグラス・マッカーサー(連合国軍最高司令官) - ジョン・サヴェージ
イガラシ中尉(GHQ通訳) - 三船力也
その他
伝令の男 - 金児憲史
現代の金原家
金原久枝(庄造の妻) - 八千草薫
金原庄造(旧姓:望月) - 八名信夫
金原荘一郎 - 北見敏之
金原涼子(森脇女子学園中等部教師) - 麻生久美子
後藤俊太郎(森脇女子学園中等部教師) - 塩谷瞬
イガラシ邸
マイケル・エツオ・イガラシ(元在日アメリカ軍司令) - ミッキー・カーチス
ダニエル・ニシオカ(日系新聞記者) - 中野裕太
【ストーリー】
2011年。一人の大地主の老人が亡くなった。
痛いを自宅に安置した座敷で、その婦人が家族を前に、戦時下のある思い出を語り始める。
それは、帝国陸軍がマッカーサーより奪取した時価200兆円にも及ぶ財宝にまつわる、驚愕の真実であった…。
しかしその裏には、極秘任務を遂行した、20名の勤労奉仕の少女達と引率教師、軍の密命を守り抜いた将校達の、祖国復興を願った壮絶なるドラマが存在した。
終戦直前、8月10日、近衛師団の真柴少佐は極秘任務の命を受け、小泉主計中尉、望月曹長はフィリピンでマッカーサーから奪取した財宝の隠匿を行う。
その作業は、平和主義者として特高にマークされていた野口教師が担任する勤労奉仕の女学生達に委ねられた。
ポツダム宣言受諾が決まる一方、軍部には徹底抗戦を主張する一派もおり、さまざまな動きが錯綜する中、8月15日に極秘任務は終了する。
極秘任務はだれにも知られてはならない。
野口先生と女学生達は存在が許されなかった。
司令官である真柴少佐はどう対処したのか。
命の重みと組織の非常、運命の皮肉があわさっての結末である。
(ネタばれになるから書きませんが、わかっちゃいますね)
【感想】
この映画は戦争映画でありながら、戦闘シーンはどこにもない。
登場人物は声に出してこそいわないが、戦争に勝ち目のないことはわかっていた。
わかっていながら、お互いに真実を口にできない心の葛藤がみていてもどかしい。
「少佐殿、アメリカの女学生達も、勉強をせず、こおような勤労奉仕をしているのですか?」
「そうだ。的もわれわれと同じで必死なのだ。」
疑問には思っても、事実が正しく伝えられない環境では、人間はあれこれ考えることを続けられなくなるのかもしれない。
女学生達も、ある面では戦況や自分たちの作業の内容を純粋に信じてしまう。
教育の怖さを感じる。
戦争が終わることが、将兵、女学生を問わず、本当はみんなが望んでいることだった。
堺 雅人(真柴少佐)
NHKの大河ドラマ「新撰組!」で人気がブレークした。私もそれまでは知らない俳優さんだった。
最近では「南極調理人」、「武士の家計簿」と映画で主演。
不思議な存在感がある俳優さん。
今回は、終戦に反対する陸軍中枢の動き、敗戦と復興への思い、任務に携わった民間人の女学生への思い、それらの葛藤を抱えながら、極秘任務遂行の将校をうまく演じている。
特に、野口先生(ユースケ)が自決しに壕へ入るシーンに敬礼をするときの表情は、彼でなければできないすばらしいものだったと思う。
ユースケ・サンタマリア(野口先生)
ユースケ・サンタマリアは平成教育委員会の先生のイメージがかぶってしまったが、けっこう先生ははまった役所のように思ってしまった。
森迫永依(久枝・・・級長)
「憑神(2007年)- 死神おつや 役」でなかなかの子役と思って依頼のスクリーンでのご対面。
けなげな級長(今は使わないでしょうね)を好演。
中村獅童(望月曹長)
戦場で生き残ってきた、たたき上げの兵隊をうまく演じている。
野生というか、動物的「カン」でにおいを嗅ぎ分け、とっさの対応をする姿はうまい。
福士誠治(小泉主計中尉)
東大出のエリート主計中尉。
軍人臭くないところがいいです。
ミッキー・カーチス(イガラシ中尉)
ダグラス・マッカーサーの通訳を務める日系2世のアメリカ軍人という設定。
物語の進行役とも言える役。
1938年東京都生まれ。英国人の祖父を持ち、幼少時代を上海で過ごす。ロカビリー歌手、俳優。
1958年の日劇での第1回ウエスタンカーニバルで、ロカビリー三人男として爆発的ブームを呼んだなんてことは、私でも知識でしか知らないのだから、ほとんどの人は知るわけもないだろうな。
俳優歴も長いし、プロデューサーとして矢沢永吉をはじめとするCAROLの生みの親でもある。
タレントレーサー、落語家など多彩。
これだけの趣味や芸歴があれば、年配の役を演じるのに味が出るんだろうな。
八千草 薫(金原久枝・庄造の妻)
もう実年齢でもいいおばあちゃんのはずだが、品のある女優さんです。
1947年に宝塚歌劇団入団。
美貌・清純派の娘役として宝塚の一時代を風靡。
当時の『お嫁さんにしたい有名人』の統計でたびたび首位に輝いた。
こういう、品があって、物腰のやわらかいおばあちゃんばかりならいいですが、世の中こんなおばあちゃんはめったにいませんね。
最近の戦争を題材にした映画や小説は、アクションやスペクタクルの要素よりも、内面的な人間の心、とか、個人の生活が、大きな流れに翻弄され、勝っても負けても、戦争は幸せをもたらさない、といったトーンのものが多くなってきたように思います。
それがわかっているのに、世界から戦争はなくなりません。
ままならないものです。
採点:★★★★☆
2011年 日本映画 2時間14分
【監督】佐々部清
【原作】浅田次郎
【出演】極秘任務班
真柴司郎(近衛第一師団・少佐) - 堺雅人
望月庄造(座間五百一連隊・曹長) - 中村獅童
小泉重雄(東部軍経理部・主計中尉) - 福士誠治
森脇女学校
野口孝吉(森脇女学校教師) - ユースケ・サンタマリア
久枝(森脇女学校女生徒) - 森迫永依
スーちゃん(森脇女学校女生徒) - 土屋太鳳
マツさん(森脇女学校女生徒) - 遠藤恵里奈
サッちゃん(森脇女学校女生徒) - 松本花奈
軍首脳
阿南惟幾(陸軍大臣) - 柴俊夫
梅津美治郎(参謀総長) - 串田和美
田中静壱(東部軍司令官) - 山田明郷
森赳(近衛師団長) - 野添義弘
杉山元(第一総軍司令官) - 麿赤兒
GHQ
ダグラス・マッカーサー(連合国軍最高司令官) - ジョン・サヴェージ
イガラシ中尉(GHQ通訳) - 三船力也
その他
伝令の男 - 金児憲史
現代の金原家
金原久枝(庄造の妻) - 八千草薫
金原庄造(旧姓:望月) - 八名信夫
金原荘一郎 - 北見敏之
金原涼子(森脇女子学園中等部教師) - 麻生久美子
後藤俊太郎(森脇女子学園中等部教師) - 塩谷瞬
イガラシ邸
マイケル・エツオ・イガラシ(元在日アメリカ軍司令) - ミッキー・カーチス
ダニエル・ニシオカ(日系新聞記者) - 中野裕太
【ストーリー】
2011年。一人の大地主の老人が亡くなった。
痛いを自宅に安置した座敷で、その婦人が家族を前に、戦時下のある思い出を語り始める。
それは、帝国陸軍がマッカーサーより奪取した時価200兆円にも及ぶ財宝にまつわる、驚愕の真実であった…。
しかしその裏には、極秘任務を遂行した、20名の勤労奉仕の少女達と引率教師、軍の密命を守り抜いた将校達の、祖国復興を願った壮絶なるドラマが存在した。
終戦直前、8月10日、近衛師団の真柴少佐は極秘任務の命を受け、小泉主計中尉、望月曹長はフィリピンでマッカーサーから奪取した財宝の隠匿を行う。
その作業は、平和主義者として特高にマークされていた野口教師が担任する勤労奉仕の女学生達に委ねられた。
ポツダム宣言受諾が決まる一方、軍部には徹底抗戦を主張する一派もおり、さまざまな動きが錯綜する中、8月15日に極秘任務は終了する。
極秘任務はだれにも知られてはならない。
野口先生と女学生達は存在が許されなかった。
司令官である真柴少佐はどう対処したのか。
命の重みと組織の非常、運命の皮肉があわさっての結末である。
(ネタばれになるから書きませんが、わかっちゃいますね)
【感想】
この映画は戦争映画でありながら、戦闘シーンはどこにもない。
登場人物は声に出してこそいわないが、戦争に勝ち目のないことはわかっていた。
わかっていながら、お互いに真実を口にできない心の葛藤がみていてもどかしい。
「少佐殿、アメリカの女学生達も、勉強をせず、こおような勤労奉仕をしているのですか?」
「そうだ。的もわれわれと同じで必死なのだ。」
疑問には思っても、事実が正しく伝えられない環境では、人間はあれこれ考えることを続けられなくなるのかもしれない。
女学生達も、ある面では戦況や自分たちの作業の内容を純粋に信じてしまう。
教育の怖さを感じる。
戦争が終わることが、将兵、女学生を問わず、本当はみんなが望んでいることだった。
堺 雅人(真柴少佐)
NHKの大河ドラマ「新撰組!」で人気がブレークした。私もそれまでは知らない俳優さんだった。
最近では「南極調理人」、「武士の家計簿」と映画で主演。
不思議な存在感がある俳優さん。
今回は、終戦に反対する陸軍中枢の動き、敗戦と復興への思い、任務に携わった民間人の女学生への思い、それらの葛藤を抱えながら、極秘任務遂行の将校をうまく演じている。
特に、野口先生(ユースケ)が自決しに壕へ入るシーンに敬礼をするときの表情は、彼でなければできないすばらしいものだったと思う。
ユースケ・サンタマリア(野口先生)
ユースケ・サンタマリアは平成教育委員会の先生のイメージがかぶってしまったが、けっこう先生ははまった役所のように思ってしまった。
森迫永依(久枝・・・級長)
「憑神(2007年)- 死神おつや 役」でなかなかの子役と思って依頼のスクリーンでのご対面。
けなげな級長(今は使わないでしょうね)を好演。
中村獅童(望月曹長)
戦場で生き残ってきた、たたき上げの兵隊をうまく演じている。
野生というか、動物的「カン」でにおいを嗅ぎ分け、とっさの対応をする姿はうまい。
福士誠治(小泉主計中尉)
東大出のエリート主計中尉。
軍人臭くないところがいいです。
ミッキー・カーチス(イガラシ中尉)
ダグラス・マッカーサーの通訳を務める日系2世のアメリカ軍人という設定。
物語の進行役とも言える役。
1938年東京都生まれ。英国人の祖父を持ち、幼少時代を上海で過ごす。ロカビリー歌手、俳優。
1958年の日劇での第1回ウエスタンカーニバルで、ロカビリー三人男として爆発的ブームを呼んだなんてことは、私でも知識でしか知らないのだから、ほとんどの人は知るわけもないだろうな。
俳優歴も長いし、プロデューサーとして矢沢永吉をはじめとするCAROLの生みの親でもある。
タレントレーサー、落語家など多彩。
これだけの趣味や芸歴があれば、年配の役を演じるのに味が出るんだろうな。
八千草 薫(金原久枝・庄造の妻)
もう実年齢でもいいおばあちゃんのはずだが、品のある女優さんです。
1947年に宝塚歌劇団入団。
美貌・清純派の娘役として宝塚の一時代を風靡。
当時の『お嫁さんにしたい有名人』の統計でたびたび首位に輝いた。
こういう、品があって、物腰のやわらかいおばあちゃんばかりならいいですが、世の中こんなおばあちゃんはめったにいませんね。
最近の戦争を題材にした映画や小説は、アクションやスペクタクルの要素よりも、内面的な人間の心、とか、個人の生活が、大きな流れに翻弄され、勝っても負けても、戦争は幸せをもたらさない、といったトーンのものが多くなってきたように思います。
それがわかっているのに、世界から戦争はなくなりません。
ままならないものです。
採点:★★★★☆