書名 悪人
著者 吉田修一
発行 朝日新聞社 2007年4月

映画化されたことと大学生の娘が読んでいたので図書館で借りてみた。

福岡、佐賀、長崎が舞台。
旅行で行ったことはあっても実際に生活をしたことがないので読みながらイメージするだけ。
地方都市とさらにその郊外の田舎。
そこに暮らす人。

都会の華やかさと地元での堅実で単調な生活。
とはいえ、ひとりひとりが同じようで一日一日それぞれに思いを持ちながらしっかりと生活している。
この日常にわずかな歯車の歯がひとつずれただけのようなことで非日常な殺人が起きる。
物語はリアリティーがあり濃密。

仕事とか他人の事であれば感情もある程度はコントロールして人間は理性で物事を判断できるのだろう。しかし、自分のこと、気持ちの上でとても身近な人となると理性で判断できるかは自信がない。不安、恐れ、恐怖・・・。犯罪を犯してしまうプロセス、犯してしまった後の対処の仕方は未知のものほど戸惑うに違いない。

最後の方で被害者の父親が言う台詞が最も印象に残った。

今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎったい。
大切な人がおらん人間は、何でもできると思いこむ。
自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気になっとる。
失うものもなければ、欲しいものもない。
だけんやろ、自分を余裕のある人間っち思いこんで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした目で眺めとる。
そうじゃなかとよ。
本当はそれじゃ駄目とよ。


お父さんのささやかな幸せと抵抗-悪人

「大切な人」・・・家族、両親、これは無条件かな。
親族、これはいろいろ。血のつながりは良くも悪くも切れない。
仕事の先輩、仲間・・・本当に大切な人? いないことはないが・・・
プライベートの友人、「大切」にはちがいない。でも「大切な人」か?

生きていくうえでの「大切な人」って、いそうでいない。
家族を大切にしよう!