書名 孤舟
著者 渡辺淳一
発行 集英社 2010年9月

新聞の書評欄に出ていたので読んでみました。
読み進むほど将来の自分の人生を見ているようで、言い知れぬ不安を感じながらも先を読まずにはいられない、言い換えれば怖いもの見たさのような気持ちでした。
エンディングはうまくまとめてあるので読み終えたときは平穏な気持ちになれて救われた気分でした。

定年後の人生は、現役の現在、真剣には考えていなかったのですが、この本の中盤までは、自分の人生の予言が重ねあわされていくかのように、夫婦、家族、地域、退職後の会社、それぞれがあまりにリアルです。

思えば、小学校から始まる学校生活、就職しての会社生活、結婚し、家族が増え、仕事は常に忙しく、家族のために我慢してシg歩と有線の生活、住宅ローンも背負い、一方で老いた親の世話も・・・

家庭以外に常に存在した所属組織がなくなり、素の自分になったときに自分のために自分の人生をどう生きることができるのか。

家族との過ごし方、休日の過ごし方、会社中心の価値観から自分を大切にする価値観へのシフトを無理せずにできるところからまずはやってみることなんだなぁ、とまじめに感じてしまいました。

この小説を読んだのが今の50代ではなくて30代だったらお気楽に笑って読めたかもしれません。
人生の折り返し点を過ぎていることにいやでも気づかされる現実。
あせることはないが、やはり残された時間は決して潤沢にはない。

やりたいこと、それも将来にむけて続けていけるもの、できれば夫婦で共有できるなにか、ひとつに絞ることもない。好奇心を持ち、いままでの殻に閉じこもることもなく、前向きに毎日を楽しめるようになりたい。自然体で楽しめることが理想。

本を読むことは疑似体験や道の世界を見ることが出来てやっぱり知的好奇心がくすぐられる。
この本は「おもしろかった」という感想とは180度対極にあるものですが、読んでよかったかな。
$お父さんのささやかな幸せと抵抗