科学好き遺伝子の遺伝様式(メンデルの法則) | はかせの科学日記〜南相馬市に新しい学校を作りたい〜

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身近な科学を伝えるブログです。
 

私の母方の祖父(紺野文雄)は科学者でした。化学薬品メーカーに勤めていて重役になった後、退職して自ら化学薬品メーカーを山形県酒田市で起業し、大いに山形県に貢献したと聞いています。

祖父の文雄と祖母のキク子(祖母は私の母にそっくりです。)
 
私がまだ幼いころ、そのおじいちゃんからとても素晴らしいお話を教えてもらいました。それは今でいう「質量保存の法則」のことでした。
 
祖父「みいちゃん、ここにマッチがあるね。」
私「うん」
祖父「火を付けるとどうなるかな?」
私「燃えちゃうよ。」
祖父「そうだね、火がついて、燃えて、煙が出て短くなるね。」
私「うん!」
祖父「その煙をぜ〜んぶ集めてぎゅっと小さくすると、もとのマッチと同じ重さになるんだよ。」
私「ほんと?宇宙だったら?」
祖父「地球でも宇宙でもそれは同じだよ。」
私「へーそうなんだ!面白いね!」
 
正確にはマッチに含まれる炭素と空気中の酸素が結びついて二酸化炭素になったり、マッチに含まれる水分が水蒸気となって空気中に放出されるので、煙を全部集めたら、逆にマッチより重くなる、、、、と今ではツッコミを入れるところですが、幼稚園生の私には、そうした祖父の話はとても面白いものでした。
 
祖父はその後、何年もしないうちに亡くなってしまいましたが、科学や自然に興味がある私に対して、そうした科学の最も基礎となる「質量保存の法則」を伝えてくれたことは、私にとってはかけがえのない宝物です。
 
さて、話は少し変わりますが、みなさんは中学校でメンデルの法則を学んだと思います。
メンデルさんは教会の神父さんでしたが、えんどう豆を育てていて、豆の色、形、背丈などの形質(性質や特徴のこと)が次の世代にどのように伝わっていくのかを根気強く調べました。
 
その結果、そこに数学で予測できる3つの法則があることを発見し、1865年に発表しました。今ではそれは「メンデルの遺伝法則」と呼ばれています。
 
メンデルの法則には1、優性の法則 2、分離の法則 3、独立の法則という3つがあります。そのうちの1と2を示したのが以下の図です。
<優性の法則>
黄色い豆と緑の豆を掛け合わせると、全て黄色になりました。これは黄色遺伝子と緑遺伝子が同時にあっても、黄色になるというものです。優性の法則と呼ばれています。*ただし、必ずしも優れた形質というわけではありません。
 
<分離の法則>
全て黄色になったもの同士を掛け合わせると、黄:緑=3:1の比になりました。これは分離の法則と呼ばれていて、一対の染色体のそれぞれに父親、母親由来の遺伝子が載っていることを示すとても重要な法則です。
 
<独立の法則>
現在では、この独立の法則は必ずしも正しくはないことがわかっています。どういうことかというと、たまたまメンデルさんが調べた豆の形質は「色」「形」「背丈」のようにそれぞれがたまたま別の染色体上に載っていたのでしょうが、そうした形質はそれぞれ独立に次世代に伝わると考えられていました。
 
その独立の法則が誤りであることの典型例が「連鎖」と呼ばれるものです。同じ染色体上に、例えば「目の色」「髪の毛の色」などの2つ以上の形質の原因となる遺伝子があった場合、それらは多くの場合、一緒に同じ配偶子(精子、卵子、花粉など)に分配されて、次世代に引き継がれます。
 
今日のテーマは「科学好き遺伝子の遺伝様式」についてです。私の家系図のごく一部を図にしたものが以下のものです。ただし、はかせの娘はいませんので、そこから下は仮定です。
私の母方の祖父は科学者でした。科学者であると同時に赤緑色盲でした。赤緑色盲は、その遺伝子が雌性染色体(X染色体)上にあることがわかっています。
 
人の網膜には赤や緑や黄色や青など特定の色に反応する細胞があって、目から入った画像をそれぞれの細胞が感知して、それを電気信号として脳に伝えます。
 
脳はその信号を解析して、画像として情報処理し、判断に基づいて行動を起こすことになります。
 
では赤緑色盲の人はどこが健常人と違うのでしょうか。それは赤を認識する細胞の数が健常人よりも少なく、それによって目で見えている画像の中の赤の成分への感度が弱くなるのです。
 
ですから、正直に申し上げて、この画像の中でわかるのは左上の12(もしかしたら13)しかわかりません。左下は7のように見えますが、自信がありません。右の四つは全滅です。答えがわかる人は教えて下さい。
 
これは保健室で保健の先生に指でなぞってもらってもわからないのです。見えないものを指でなぞってもらっても見えるようにはなりません。
 
毎年悔しい思いをしていたことを思い出します。
 
しかし、考えてみてください。世の中には先天的、あるいは後天的に障害を持ち、それでも暮らしている人がいるということを。
 
そうした違いは個性とも言えます。なぜそうした赤緑色盲という形質が今も残っているのか、その理由はわかりませんが、いずれにしても、どんな人間であろうとも、現代では生きる権利が保障されており、差別やいじめの原因となってはならないと私は思っています。
 
さて、もう一度、家系図を見てみましょう。
私の祖父は科学者でした。私も科学者です。私は赤緑色盲ですが、父も母もそうした形質はありませんでした。X染色体上劣性遺伝ですので、おそらく母は保因者だったのでしょう。祖父からX染色体と祖母からもX染色体を受け継いだのだと思われます。雌ですから。
 
私は雄ですので、父からY染色体を、母からX染色体を1つずつもらっています。母が体内で作った卵子には正常なX染色体か、赤緑色盲の遺伝子を持ったX染色体かどちらかが含まれていたはずです。
 
私はたまたま赤緑色盲の遺伝子を持ったX染色体をもった母由来の卵子とY染色体を持った父由来の精子が受精したことで生まれた個体だと云えるでしょう。
 
しかし、メンデルの優性の法則に従って、母の形質は健常人(豆で言えば黄色)でした。それを保因者と言います(豆で言えばAa)。
 
ですから、赤緑色盲の形質は祖父から孫(男の子)に引き継がれる隔世遺伝の典型例として大学の講義などでもよく使われます。
 
さて、ここで祖父と私がどちらも科学者であり、私の科学者への扉を開いてくれた「質量保存の法則(マッチのお話)」などを考えると、もしかすると「科学好き遺伝子」というものがX染色体上に連鎖しているという可能性を考えられなくはないと私は考えています。
 
私はそうした勝手な思い込みを、きちんとした遺伝法則をもとに、一般の人に伝えることは、科学教育の基礎となるのではないかと常に考えています。
 
亡くなった祖父母は、そうした思い出だけではなく、実際に私の体内にある遺伝子の発現という形で、私の個体としての形質を決定づけている可能性を考慮したいと思うのです。
 
もし仮に、将来私が再婚して、娘が出来て、さらにその娘が結婚して、男の子(私の孫)を生んだ場合、私が祖父から受け継いだ赤緑色盲の遺伝子を持ったX染色体を引き継いだとしたら、きっと私は改めてその男の子に「質量保存の法則」を話し、彼の科学者としての将来への扉を開きたいと思っています。
 
「亡くなった祖父母がいつもそばにいるという感覚」
 


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