今回からは、ワクチン接種によってどんな病気が予防できるのか・ワンちゃん編になります。
現在国内においてワクチンメーカーさんが製造流通しているもので予防できる犬の病気には以下のものがあります。
- 狂犬病
- 犬ジステンパー
- 犬伝染性肝炎
- 犬アデノウイルス2型感染症
- 犬パルボウイルス感染症
- 犬パラインフルエンザウイルス感染症
- 犬コロナウイルス感染症
- 犬レプトスピラ症
今回は更にその中の一つ、「狂犬病」についての話をさせていただきます。
非常に重要な病気ですので、今回はこの一つのみ取り上げさせてもらっています。ちょっと小難しく頭いたーくなってしまうかもしれないお話がありますが、お付き合いいただければと思います。
【狂犬病】
狂犬病ウイルス(Rabies Virus)の感染により起こります。
名前から犬のみの病気と間違われてしまう事もありますが、全ての哺乳類に感染し、発症してしまうと致死率ほぼ100%という恐ろしい病気です。近年流行し記憶に新しいエボラ出血熱の致死率が70~80%と言われておりますので、いかに狂犬病の致死率が突出しているかはおわかりいただけるかと思います。
日本では、人にて海外での感染後に国内で発症した例を除き、人も動物も国内発症は1958年以降確認されておりません。ですが、世界中では今なお沢山の死亡例が報告されております。(日本以外に、狂犬病清浄地域として農林水産大臣指定はアイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアム のみです=その他の地域には狂犬病が存在している又はその疑いが強いという事です。)
感染動物の唾液にウイルスが含まれており、咬傷などによって感染します。
感染原因のほとんどが犬によるものですが、一部野生動物からの感染の報告も海外ではあります。人から人への直接的な感染は確認されておりません。
症状は進行性の神経症状・麻痺症状で、病名の由来ともなったように興奮・狂躁状態となる事もあります。音や光、風などに過敏な反応を示し、麻痺によって飲水ができなくなるため恐水症などともいわれます。最終的には呼吸筋の麻痺・昏睡の後に死亡します。
発症後の治療法はありません。人において数例の回復例がありますが、ごく稀なケースです。(※人における暴露後免疫療法というものについては割愛させていただきます)
動物においても同様に治療法は皆無で、狂犬病と診断またはその疑いありとなった場合は隔離観察が義務付けられており、治療することはできません。
狂犬病にならない為には予防接種しか方法がありません。
狂犬病そのものについては以上になります。とにかく「恐ろしい病気なんだな」という事はおわかりいただけるかと思いますが、やはり日本においてはその感染報告が無い為、どこか遠くの世界の病気の事と思ってしまうかもしれませんね。
ここから先が、少し頭がいたーくなるかもしれないお話になります。
春先、動物病院や行政から狂犬病のワクチンをワンちゃんに接種するように告知が来るのはご存知かと思います。
「何故国内に存在しない病気なのに、狂犬病ワクチンをうつの?」
そう疑問に思われる飼い主様も沢山いらっしゃる事でしょう。
その理由は以下に因ります。
一つは狂犬病予防法という法律が定められているからです。
これは端的にいうと、犬を飼育する全ての飼い主さんは、その犬の畜犬登録と毎年のワクチン接種を義務付けるというものです。
「接種しなければ法律違反になります、だから接種しましょうね。」
…というのはあまりに乱暴な物言いですが、その法律を定めた真意は次の二つ目の理由になります。
二つ目は集団免疫を維持する為です。
集団免疫?なんだそれは?
という事で、集団免疫について例を挙げてお話させていただきます。
とある町で、Aさん家で飼っているワンちゃんがワクチンをうちました。同様に、Aさんの住んでいる町では犬を飼っている方全員がワクチンを接種していました。
ある日、最近遠くから引っ越してきたBさん家のワンちゃんが伝染病にかかっていることがわかりました。Bさん家のワンちゃんはワクチンをうっていませんでした。動物病院で感染がわかるまでの間にお散歩で近所のたくさんのワンちゃんと遊んだりしていました。
さて、ここでもしもAさん家含む町の人がワクチンをうっていなかった場合、どうなっていたでしょうか。Bさん家のワンちゃんは多くの子と接触しているため、接触した子が感染・発症する可能性があります。更に感染した子も伝染病と診断されるまでに他の子と接触したりした場合、どこまでもこの連鎖が続いていきます。
しかし、町の人はワクチンをしっかり接種して伝染病への免疫を獲得していた為、伝染病にかかる子はいませんでした。連鎖が続く=流行してしまう、ということはありませんでした。
例え話ですので、全ての方がワクチン接種をしているという前提条件はかなり厳しいものではありますが、期待していることはこのお話の通りです。
病気に対してワクチン接種をしている割合が多ければ多いほど、その伝染病が流行することがなく、感染先を失った伝染病はやがて消えていき…つまり、最終的には撲滅されます。
その接種している全体の割合というのが集団免疫率というものです。集団免疫率が70%以上で伝染病の流行は防げると一説には言われております。
過去、日本国内には多くの野犬がいました。その野犬が狂犬病の伝染を媒介する可能性があり、事実そういった事もありました。しかし、今は野犬を街中で見かける事はもはや無いでしょう。狂犬病を国内から撲滅するに至るまで、多くの方のご苦労と、そして多くの動物の犠牲の上に今の状況があります。
しかし、今現在の国内における狂犬病ワクチンの接種率は畜犬登録数に対して50%以下、地域によっては20%以下の場所もあります。畜犬登録されていないケースも多いですので、実際の接種割合はもう少し低くなってしまっているでしょう。もしも海外から狂犬病が入り込んでしまった場合、流行してしまう恐れが十分にあり得る状況です。
ワクチンの目的は以下の3つに集約されます。
- 感染を防ぐ(個人)
- 感染しても重症化を防ぐ(個人)
- 流行を防ぐ(集団)
「大(集団)を守るために、小(個人)がワクチンする」ではなく、
「小(個)を守ることが、大(集団)を守ることになる」という事です。
大切な家族である動物を守ることで、結果的にその他の多くの動物を守ることに繋がっていきます。
国内において発症のない狂犬病、そのワクチン接種を行う意義を多くの方にご理解いただければ幸いです。
狂犬病の病気そのものよりも、そのワクチン接種の意味についてスペースを割かせていただきました。
法律で接種が義務付けられてはいますが、ワンちゃんの体調や持病等で接種できない・しない方がよいとは獣医師が判断した場合、行政への届け出が必要となりますので、どうぞご相談下さい。
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うぇる動物病院
042-732-3712
〒194-0032
東京都町田市本町田3599-15 1F
診療時間:午前9時~12時 午後4時~7時
定休:金曜・日祝午後
http://well-ahp.com/
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引用元:ワクチンについてのお話④ 「ワクチンで予防できる犬の病気 ・・・