前回、

お産は穏やかで気持ちいいもの

ということを書きました



その時の記事に

『死産という悲しいお産でも痛みを感じなかった』

という、コメントを頂きました


悲しいお産でも、

痛みを感じないお産だったというのは

とてもすてきなお産だったのだと思います


私はどんな子でも

祝福されて産まれてくると思っています


それがたとえ、

死産でもう亡くなっている赤ちゃんだとしても


だから私は

死産に立ち会う時も

赤ちゃんや、ママや、ご家族には


おめでとうございます


とお声がけするようにしています


もちろん、

そうお声がけできるように

関係を築いているつもりではありますが、、、



そんな中でも

忘れられないママがいます

それは若い初産のママ


赤ちゃんは

心臓の奇形があり、

産まれてきても

きっと長くは生きられないと思われる状態


お産の方法は

赤ちゃんになるべく負担をかけないようにするには

帝王切開がベスト


ただ、帝王切開でお産しても

赤ちゃんは長く生きられない

数時間の命かもしれない


ママが帝王切開になると

次の赤ちゃんをお産する時も

帝王切開になってしまい

帝王切開は若いママにとっては

体への負担がとても大きい


数時間しか赤ちゃんが生きられないなら

経腟分娩のお産の方が

ママの体への負担は少なくすむ


そんな状態でも

ママと、パパは

少しでも赤ちゃんの負担が少ない方法がいいと

帝王切開をすると決められました


そして、私達もそのように準備していた矢先、

赤ちゃんはお腹の中で

亡くなってしまいました



赤ちゃんが亡くなってしまったので

お産の方法は

経腟分娩となりました


そして

何日か経っても

陣痛が来なかったので

陣痛促進剤を使って

お産を開始することにしました


赤ちゃんが亡くなってしまい

ママも悲しく

お産も人工的に、始めたこともあり

とても痛がられていました


泣き叫ぶようなお産


そばにいる私達もとてもしのびなく

無痛分娩にしてあげたいけど

死産には

ふだんする無痛分娩は適応できません


その晩、当直だった私は

見るにみかねて

ふだんは使用しない痛み止めを使う処置をしました


そして少し痛みが取れたのか

そのママは寝て体を休めることができ

翌朝お産となりました


外来をしていて、

お産には立ち会えなかったけど

お産の後、病室に伺うと


「先生、あの時、痛み止め使ってくれて

ありがとございました

あれがなかったら、どうなっていたか」


とお礼を言われました


私としては、

不甲斐ない気持ちで

いっぱいでした


お礼を言われても

もっとしてあげられることが

あったんじゃないか

とてもやるせなかったです


心臓の奇形がわかっても

赤ちゃんのことをとても大事に思って

頑張っていたママ



今なら

亡くなった赤ちゃんとママの

最期の共同作業であるお産を

もっと穏やかに過ごしてもらえる方法を

知っています


もう少しお役に立てたかもしれません



これからは

悲しみの中でも

少しでも穏やかなお産ができるよう

サポートできる産婦人科医でありたい



そんな想いを抱くきっかけとなった


忘れられない、ある若いママとの思い出でした




みんなが幸せになる

ために調和をつくる網本頌子でした