「PTA解散」の波紋 退会止められなかった岡山県連合会の苦悩 広がる保護者負担見直し(24年9月30日 産経新聞オンライン無料版)

 

記事(和田基宏、宇山友明) 日本PTA全国協議会

 

 

(1)

岡山県内の公立小中学校の保護者らでつくる県PTA連合会が今年度末での解散を発表し、波紋が広がっている。

文部科学省によると、都道府県レベルのPTA組織解散は全国初。

加盟団体や会員数が減少して組織の維持が難しくなったためだが、同様の動きが他のPTA組織にも波及するのか、関係者は注視している。

 

◆最盛期は18万人

 

(2)

(岡山県PTA連合会の神田敏和会長)

「昔のやり方を踏襲してしまった。私たちの力が及ばなかった」。はホームページでの解散発表後、こう話してうなだれた。

 

(3)

昭和23年設立の同連合会は、岡山県内の郡市のPTA組織をつなぐ会議を開いて課題を共有するほか、県教育庁への要望や講師を招いた研修会開催などを担ってきた。

平成20年度には県内全21郡市のPTA組織が加盟し会員は約18万人を数えたが、近年は大幅に減少。

昨年度から今年度にかけて加盟組織は半減して5郡市となり、会員も約9800人に減っていた。

運営費は加盟組織が会員数に応じて払う年会費(1人当たり130円)と積立金で賄われており、2年ほど前から資金の枯渇が危惧されていたという。

 

◆「メリット感じない」

 

(4)

PTAを巡っては、共働き家庭の増加などで負担感が増し、小中学校単位の組織でも役員のなり手が減少。

任意加入であることを明確にした結果、会員数が減るなどの課題も浮上している。

(神田会長)

 同連合会を退会した組織からは「会議に参加しても、あまりメリットを感じない」との意見があった。

市町村単位で課題や要望は異なるとして、県教育庁への要望は10年ほど前から行っていなかった。

 事務局職員をパート勤務に切り替えるなど経費節減に努めたが「このままでは立ちゆかなくなる」とみて今年3月、解散を提案した。

 

(5)

神田会長は「情報伝達中心の運営を見直し、意見交換を含めた交流を増やすよう努めてきたが、退会の流れを止められなかった」と悔やんだ。

 

(大阪府PTA協議会の事務局長)

 「似たような状況は大阪にもある」と明かす。

「楽しんで一生懸命活動している人もいることは知ってほしいが、世の中が変わってきた。時代に応じた活動のあり方を考えなければならない」

 

(同連合会の神田会長)

 「効果的に活動し、教育委員会などと協力して意義ある事業をしている都道府県のPTA組織はたくさんある」と強調し、「解散の流れが続かないでほしい」と語った。

 

◆役員選出は立候補制に

 

(6)

かつてのPTAは子供の小学校入学と同時に半ば強制的に加入させられた上、会費徴収のほか、在学中に一度は役員や委員を務めることを義務付けられるなど、保護者の負担感が強かった。

こうした形態は少子化や共働きが進む今の時代にそぐわないとの指摘もあり、活動内容の見直しや業務の外部委託といった動きが拡大。自主性を重んじる組織へと変わりつつある。

 

 

(7)

(大阪府高槻市立赤大路小PTA)

 昨年4月から、任意加入であることを明確にし、「入会届」を提出した保護者のみが会員になるようにした。

規約も大幅に改定し、業務を通学路の見守りなどに縮小、保護者同士の親睦会を廃止した。

 PTA内のイベントは企画した会員らが担い、希望者だけが参加する仕組みに見直し、役員や委員の選出も「児童1人につき1役」から立候補制に変更した。

(会長の岩崎健一郎さん(43))

 「以前のPTAは活動目的が不明確で、個人情報の取り扱いにも問題があった」。

 約450人だった会員数は入会届の導入で約130人に減ったが「保護者からは『PTAに対するもやもやが消えた』との意見もあり、今のところ特に活動への支障はない」と強調する。

 

(8)

 PTA業務を企業が請け負う動きも広がっている。

(大手旅行会社「近畿日本ツーリスト」を傘下に持つKNT―CTホールディングス(東京))

 令和4年からPTA業務の代行事業をスタート。

 広報紙の印刷や発送、イベントの企画運営、PTA専用ウェブサイトの開設などを請け負っている。(和田基宏、宇山友明)

 

■東洋経済ONLINE

目的不明?PTAの総本山にわき上がる疑問(2016/09/18 8:00)

ここでも「強制がつらい」という悲鳴が!

 

多くの一般保護者が、知らぬ間に会費を納めているPTAの連合組織「P連」、そして全国組織の「日P(公益社団法人 日本PTA全国協議会)」。前回記事に続き、これらの団体のナゾに迫ります。

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そもそもP連は、各校のPTA活動をよりよくするためにつくられた組織のはずです(と筆者は認識しています)。ところが、P連の活動を担う各PTAの本部役員に話を聞くと、P連の活動がむしろ負担となり、現場を苦しめているケースも少なくないようです。

前回は、P連の活動の“強制性”に関する悩みの声をたくさん紹介しましたが、実は活動以外の面でも、P連のあり方に対する疑問の声はいろいろと聞こえてきます。

まずは、それらを紹介しましょう。

疑問に思っても、一会長では太刀打ちできない

「現在P連には入っていないのですが、入っているPTAから、“なんで辞めたの? 戻ったほうがいい”等々言われ、圧力を受けます。この横並び意識、抜け駆け厳禁の空気感に、一会長個人では太刀打ちできません。向こうは行政と一枚岩ですから」

「旧態依然のやり方が継続されている。P連の会長は立候補制で、いまのやり方を好ましいと思う方が手を挙げるため、改革的な話が出ることはほとんどありません」

「(単Pやその会員は)P連におカネを出しているのだから、会計報告や活動報告がほしいが、広報誌にはわりとどうでもいい話しか載らないし、うちのP連はホームページもない。もっと透明性がほしい」

「P連のことは会長(役員)をやった人にしかわからない。一般の保護者は存在すら知らない人も多い。(P連の)ホームページには予算報告も活動内容も載っていない。分担金に見合った活動をしているのか、そもそも必要な団体なのか、一般保護者には判断がつかないだろう」

 

「うちのPTAは“世帯単位”でおカネを集めているが、P連は“児童単位”で分担金を求めてくるので、金額が合わない」

「P連は“全員加入”を前提に、“PTAの加入世帯数”ではなく“学校の在籍世帯or生徒数”で分担金を求めてくる。そのため、非加入世帯の分を加入世帯の会費で負担する形にならざるを得ない。これについては上部組織に抗議するのが筋だが、そうではなく、非加入世帯を責める方向に話がいってしまう。上部組織からは、何のフォローもない」

「おカネがたくさんあるところは内紛が多い。担当者による使い込みが発覚したこともある」

「毎年、(P連の)専従職員を数名雇用している。うち一人は元校長。名前だけで、事務局に来ない人もいる」

「ここ数年は教育委員会がP連の取りまとめをしてくれるようになり、仕事はとても楽になってありがたいが、その分なんでも言いなり。以前はみんなで意見を戦わせるような場面もあったが、今は皆無」

「市P連だけでよい。県Pや日Pまで入りたくないが(その市Pが県P・日Pにも入っているため)入らざるを得ない。過去に一度(県P・日Pを)抜けたが、揉めてまた戻った」

「P連会長は市から委託される仕事が多く、しょっちゅう会議に呼ばれる。これが一番ストレスだった。子育て、給食など、面白いものもあったが、なかには“なぜP連会長が出る必要があるのか?”と思うものも少なくなかった」

ちなみに、役員さんたちはこのような疑問や不満を、普段大勢がいる場ではなかなか口にしません。我慢強い人が多いのです。

一対一の場や、アンケートで尋ねるとようやく、「いや、実はおかしいと思うんですよ」と話してくれる傾向があります。

一方では「本当に、楽しい」という側面も

さて、ここまで読んできて、「P連なんて、本当に必要なの?」と思った人が多いと思いますが、実は一方で、「P連、楽しい!」というポジティブな声も、意外とあるのです(大勢の場ではこちらが優勢です)。

たとえば、こういったものです。

「自分の学校のPTAでは、会長が押し付け合いになり、非常に嫌な思いをしたが、P連は“頼まれると断れない”タイプの人が多く集まっているので、そういったストレスが少ない。特に今の(P連の)役員は、“嫌々やっている人”がいないので、精神衛生上よい。楽しい」

「楽しいです。P連では会長同士でよく飲みに行くので、いろんな人と深く知り合える。単P(PTA)の活動では、飲む機会が少ないので、あまりじっくり話をできる機会がない。P連は顔の広い人や面白い人も多い。P連の活動にがっつりかかわると、どうしても時間はとられてしまうが、自分にとってはメリットのほうが大きいと感じます」

「区の教育委員会がいろいろお膳立てしてくれるし、活動も多くはないのであまり負担ではない。いろんな人と知り合えるのはありがたい」

「市P連が春に主催する研修会は、よかった。各PTAの同じ役職(副会長、書記、会計など)の人同士で、情報交換できる。普段、ほかの学校(PTA)のやり方を知る機会がないので、とても参考になった」

「都道府県Pや日Pに参加するのは意味がないと思うが、基礎自治体(市区町村郡)のP連は、行政や教育委員会との交流・折衝において、意味があると思う」

「地域に公園を増やすよう、P連で要望を出しています。もし実現するなら、P連をやっていてよかったと思う」

「P連がとりまとめているサークル活動(強制ではないもの)は、みんな楽しそう。バレーボール、コーラス、卓球など」

「(P連に)専従の職員がいて、単Pの活動をサポートしてくれる。非加入者への対応に悩んでいたとき、相談に乗ってくれてありがたかった」

なお、P連の専従職員については、残念な話を聞くことも多いのですが、なかにはPTA活動の問題点を改善しようと一生懸命奮闘している職員さんも確実にいることを、念のため書き添えておきます。

改善すべき主な問題点

さて、このようにP連に対しては、さまざまな肯定的な評価・否定的な評価があります。

ただし“肯定的な評価”は、「そんなに、イヤじゃない」というニュアンスのものが多く、積極的にP連やその活動を評価するものは少ないようです。

以下、P連について、筆者が「特に改善が必要」と感じる点について、ざっくりとまとめておきます。

1 強制をやめる

各PTAでの参加強制や加入強制が問題になっていますが、連合組織であるP連においても強制が行われているのでは、各PTAで同様のことが起きてしまうのも無理はありません。

これまでさんざん書いてきたことですが、活動を強制するからPTAは嫌われるし、つまらなくなるのです。P連こそがまず、自主性に則った活動をする必要があるでしょう。強制するのは法にも反します。

2 会計情報をしっかり開示する

ほとんどのP連は、情報開示が不足していると感じます。P連の活動はPTA活動と違い、一般保護者の目に触れる機会がほとんどありませんが、一般保護者から集めたおカネで運営しているわけですから、ちゃんと説明する責任があるでしょう。

現在、会員がどれくらいいて、全部でいくらの予算や資産があり、何にいくら使い、どんな活動をしているか。そういったことを、一般公開のホームページなどを使って、広く知らせるのが道義ではないでしょうか。

3 予算の額や必要性を見直す

人口の多い市区Pや都道府県P、日Pなどは、予算規模がかなり大きくなります。本当に、そこまでの予算が必要なのでしょうか? 情報開示も少ないため、適正に使われているのかどうか、われわれ一般保護者には判断がつきません。

PTAは基本的に、各学校で行う活動です。その補助的な役割を果たすP連に、適正な予算は、本当はどのくらいなのか?また、市や区のP連、都道府県P、日Pなど、いくつものP連に加入することが本当に必要なのか?

運営費を負担するわれわれみんなで、一度よく考える必要があるでしょう。

4 時代(PTA)のニーズに合わせる

子ども=世帯数が減り、共働きやひとり親世帯の増加で忙しい保護者が増えているいま、PTA活動のスリム化は避けられない課題です。P連においても、活動の負担についての悩みの声がよく聞かれますから、やはりスリム化は早く進めたほうがよいでしょう。

5 任意加入を前提とする

PTAは任意加入の団体ですが、いまも多くのPTAで自動強制加入が行わていることが問題になっています。そうなってしまう原因のひとつは、連合組織であるP連が、いまだに「PTA=全員加入」を前提とした仕組みを採用していることにあるでしょう。

多くのP連は、PTAに加入する子どもの数や世帯数ではなく、「学校に在籍する子どもの数、または世帯数」で分担金を集めています。するとどうしても、現場も“PTAには全家庭が加入するもの”という考えになりやすく、任意加入を認めづらい雰囲気になってしまいます。

分担金のことだけではありません。P連には、“現場”であるPTAに寄り添うのではなく、“P連のやり方に現場を合わせさせる”傾向があり、そのために現場の役員を悩ませている場面がまま見受けられます。

何のためにあるのか

P連はそもそも、何のためにあるのか?

一度、根本から見直したほうがよいのではないでしょうか。

以上、大まかですが、今回はP連の問題点を概観しました。今後もP連についての取材を続けていきますので、情報提供が可能な方は、ご連絡ください。

P連の分担金に関するアンケートにも、ご協力いただければ幸いです。

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知られざるPTAの上部組織「P連」「日P」の謎(2016/09/16 6:00)

実はあなたも会費を負担している!

 

子ども1人当たり10円でも、全国から、毎年集まると…

 

 

P連の運営費は、加盟校のPTAが「分担金」として供出しています。つまりP連も、一般保護者から集めたPTA会費で運営されているわけです。

多くの場合、各PTAは、毎年子ども1人、または1世帯当たり「数十~350円くらい」を、市や区のP連に納めます。これは、加盟するすべてのP連(たとえば市P・県P・日P)に納める分担金の合計額です。

市や区のP連は、このなかから都道府県P連に分担金を納め、そして都道府県P連は、このなかから日Pに分担金を納める、という仕組みです。なお、日Pの分担金は「児童・生徒1人あたり10円」と全国一律ですが、市や区、都道府県のP連分担金は、設定がまちまちです。

注)P連によっては、各校定額の基本料のようなものを払うケースもあります。また、各PTAと区Pの間に「地区P」、あるいは市Pと県Pの間に「県内地区P」があり、そこにも分担金を払うケースなどもあります。

確認したところ、平成26年度、日Pに納められた分担金は計約8500万円とのこと。子ども1人10円でも、全国から850万人分も集まれば、随分大きな額になるものです(なお学校基本調査によると、現在全国の公立小中学校に通う児童・生徒数は計約935万人です)。

写真 最寄りの地下鉄駅から、急な坂を下った先にある「公益社団法人 日本PTA全国協議会」の事務所

 

日Pの貸借対照表を見てみると、資産合計は約4億6700万円(同年度)。かなり大きな金額ですが、その理由のひとつはこちら。 

都心(港区赤坂)にある事務所の土地・建物代が、資産の約3分の1を占めています(約1億6千万円)。

ちなみに、多くのPTAはP連に加入していますが、市や区のP連に入らないPTAや、都道府県のP連に加盟しない市や区のP連も、ちらほら見られます。

特に東京は加盟率が低く、たとえば都小P(一般社団法人 東京都小学校PTA協議会)への市区町村P連の加盟率は、2割を切る状況が続いています。

では、P連はいったいどんな活動をしているのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

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