5日のVIX急上昇、ボラティリティーのプロの見方はヘッドフェイク(24年8月10日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)

原題:Volatility Pros Say Record VIX Surge on Monday Was a Head Fake(抜粋)

 

記事の概要

(1)要点

  •     恐怖指数とも呼ばれるVIX、市場のストレスを過大評価した可能性
  •     流動性不足やショートカバーなどが急上昇を引き起こしたもよう

(2)「一世代に一度の乱高下が世界の市場を脅かしたが、見た目と実際が違うかも」

(3)「VIXは今週初めの一時42ポイント急上昇は、市場の現実を反映しない「過度に弱気」を一瞬示した」

(4)「VIXの65は完全なパニックだが、流動性不足や指数の算出方法などに起因する可能性がある」

(5)「デリバティブのプロはVIXではなく、実際の資金の流れを反映するVIX先物で市場心理を読む」

(6)「5日の市場では、VIX先物の上昇はVIXそのものよりずっと小さかった」

(7)「世界の株式の急落により過去最大のVIX上昇が正当化されたのか」

(8)「予測モデルでは、5日のVIX急騰は投資家一斉の売りの兆候だが、反発のきっかけとなる可能性もある」

(9)「だからといってVIXの65超への上昇を押し目買いの青信号と見なすのは間違い」

(10)「VIXが65のときVIX先物の上昇は5ポイントで、取引終了時には両者の差は急速に縮まった」

(11)「今回のVIX急騰は投資家の恐怖心を過大評価した可能性があるかもしれない」

 

記事(Lu Wang、Denitsa Tsekova)

 

(1)要点

  •     恐怖指数とも呼ばれるVIX、市場のストレスを過大評価した可能性
  •     流動性不足やショートカバーなどが急上昇を引き起こしたもよう

 

(2)「一世代に一度の乱高下が世界の市場を脅かしたが、見た目と実際が違うかも」

一見すると記録に残るような株価ショック、一世代に一度の乱高下が世界の市場全体に響きわたるといった状況だった。だが5日に起きた極端なボラティリティーイベントが、実際は見た目と異なるものだったとしたらどうだろうか。

  

(3)「VIXは今週初めの一時42ポイント急上昇は、市場の現実を反映しない「過度に弱気」を一瞬示した」

 VIXは、米国株における予想されるストレスを測る指標として利用されることから恐怖指数とも呼ばれる。

だが一部のオプション取引のプロは、今週初めの早い時間における取引でVIXが一時42ポイント急上昇した際、市場の現実との結び付きが薄い、過度に弱気なセンチメントを一瞬示したのではないかと考えている。

  

(4)「VIXの65は完全なパニックだが、流動性不足や指数の算出方法などに起因する可能性がある」

前例を見ない急上昇でVIXは65を上回った。

これは、通常であれば完全なパニックを示唆するまれな水準だ。

だがこの動きは、流動性不足とみられる状況やボラティリティーの読みを誤ったことによるショートカバー、または単にVIXの算出方法といったいくつかのテクニカル要因によって引き起こされた可能性があることが分かっている。

  

(5)「デリバティブのプロはVIXではなく、実際の資金の流れを反映するVIX先物で市場心理を読む」

こうした議論は、VIX自体が取引されているわけではなく、VIXがS&P500種株価指数に連動するオプション価格から算出される数値であるという事実を反映している。

  市場心理をより正確に読み取る上で、デリバティブ(金融派生商品)の専門家はVIXではなく、実際の資金の流れを反映するVIX先物に注目することが多い。

 

(6)「5日の市場では、VIX先物の上昇はVIXそのものよりずっと小さかった」

5日の市場では、VIX先物の上昇はVIXそのものよりずっと小さかった。

 (デリバティブ分析会社アシム500の操業者、ロッキー・フィッシュマン氏)

「市場のクオートより実際の取引の方が重要だ」と指摘。

「通常の取引時間外に相場が大きく動いた場合、ヘッジ需要を測る尺度としてはVIXそのものよりもVIX先物の期近物の方が優れているかもしれない」と述べた。

(■クォート OANDA証券

 FX会社が取引相手(顧客)に取引レートを提示すること、あるいは提示するレート自体のことです。 FX市場では顧客からの注文が入ったときにすでにそのプライスが有効でない場合は注文がキャンセルされ、再度次のレートが提示されます)

 

 

  

(7)「世界の株式の急落により過去最大のVIX上昇が正当化されたのか」

  ネガティブなマクロ経済指標を受けて、米経済の健全性への懸念から世界の株式は急落。

一方でAI(人工知能)を背景としたテクノロジー株のメルトアップを巡り、数週間にわたって懸念が強まってきていた。

日本では、利上げが円キャリートレードの巻き戻しを引き起こし、混乱が生じた。

 問題は、これら全てにより、日中ベースで過去最大となったVIXの上昇が正当化されたかどうかだ。VIXはこれまでにも金融危機や「ボルマゲドン」などを経験してきた。

 

(8)「予測モデルでは、5日のVIX急騰は投資家一斉の売りの兆候だが、反発のきっかけとなる可能性もある」

これは極めて重要な問題だ。VIXは株価の次の方向性を予測するウォール街の多くのモデルにおける重要なインプットであり、5日に起きたような突然の急上昇は通常、投資家の降伏の兆候と見なされ、反発のきっかけとなる可能性がある。

 

(9)「だからといってVIXの65超への上昇を押し目買いの青信号と見なすのは間違い」

S&P500種は6日以降の3営業日で上昇している。

(アカデミー・セキュリティーズのマクロ戦略責任者、ピーター・チア氏)

だからといって、VIXの65超への上昇を押し目買いの青信号と見なすのは間違いだと、は語る。

同氏は、「ボラティリティーの急上昇があり、それで全てが終わったという『事実』に非常に多くの人が安心感を抱いていることに、私は極めて神経質になっている」と記した。

  

(10)「VIXが65のときVIX先物の上昇は5ポイントで、取引終了時には両者の差は急速に縮まった」

VIXは5日、5時間足らずで42ポイント上昇し、ニューヨーク時間午前8時37分には65.73を付けた。だがVIXに連動する先物(8月限)は同じ時間帯に約5ポイントしか上昇しなかった。

VIXと同先物の期近物の水準の差は最大で32ポイントだった。

  だがこの大きなスプレッドは長く続かず、取引終了時までには8ポイントにまで縮小した。

 

(11)「今回のVIX急騰は投資家の恐怖心を過大評価した可能性があるかもしれない」

スプレッドが急速に戻ったことは、当初のVIX急上昇が投資家の恐怖心を過大評価した可能性が高いことを示していると、一部の市場参加者は捉えている。

 

原題:Volatility Pros Say Record VIX Surge on Monday Was a Head Fake(抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

VIX指数(恐怖指数)の急騰 サマーズ氏が米証券取引委員会に調査を要請

VIX指数の記録的上昇、サマーズ氏がSECや取引所に調査促す(24年8月10日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)

原題:Summers Calls for SEC, Exchanges to Probe Monday’s VIX Surge (1)

 

記事(アンスティー・クリストファー)

 

(1)要点

  •     VIX指数、5日に投資家のパニックを連想させる水準に上昇
  •     サマーズ氏、流動性の問題が要因ではないかとの見方を示す

 

(2)ローレンス・サマーズ元米財務長官

 9日、米証券取引委員会(SEC)と関連取引所に対して、恐怖指数として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)が5日に急上昇したことについて調査するよう促した。

 (サマーズ氏) 

 「私の理解では、VIXの算出には流動性の低い金融商品も含まれるため、5日にはVIXがやや人為的な動きをした」とブルームバーグテレビジョンで指摘。

「VIXは非常に広く注目されている指標であるため、流動性や算出方法を巡る問題は、業界の関係者やSECなど規制当局によって点検されるべきだ」と述べた。

 

(3)

VIX指数は株価が急落した5日、記録的な上昇となり、一時は投資家のパニックを連想させる65を超えた。

(ボラティリティーに関する専門家)

 その後ブルームバーグに対し、急上昇は流動性不足、裏目に出たボラティリティー戦略のショートカバー、あるいは算出方法そのものなど、いくつかのテクニカルな要因によって引き起こされた可能性があると語っている。

 

原題:Summers Calls for SEC, Exchanges to Probe Monday’s VIX Surge (1)(抜粋)

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