北朝鮮の核攻撃時は核で対応報復…韓米首脳、文書化追認(24年7月12日 朝鮮・中央日報日本語版無料電子版)

 

写真 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領

 

(1)北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席するため米国ワシントンDCを訪問中の韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が11日午前(現地時間)、米国のバイデン大統領と韓米首脳会談に臨み、共同声明を発表した。

共同声明

 

(2)両国国防部が今年6月に検討を終えた韓・米核協議グループ(NCG)の共同指針文書を追認した。

機密事案であるため具体的な内容は公開されてはいないが、該当の指針には北朝鮮が先制核攻撃を行った場合、韓米が米国の核兵器と韓国の在来式武器体系を統合して北朝鮮に対応報復を加える手続きと両国武器体系統合方案が盛り込まれたという。

北朝鮮の核攻撃に対する米国の拡大抑止と韓国の在来式戦力を加えた統合ガイドラインだといえる。

 

(3)韓国国家安全保障室の金泰孝(キム・テヒョ)第1次長はブリーフィングで「韓半島(朝鮮半島)核運用において、韓米が共にする一体型拡大抑止システムが構築された」としながら「両国首脳は韓国に対する北朝鮮のすべての核攻撃は即刻的、圧倒的、決定的対応に直面することを再確認した」と明らかにした。

 

(4)「インド太平洋パートナー4カ国(IP4、韓国・日本・オーストラリア・ニュージーランド)首脳会談」

両首脳が会ったのは昨年11月米サンフランシスコで行われたアジア太平洋経済協力(APEC)サミット当時の韓米日首脳会談以来、約8カ月ぶりだ。

特に北朝鮮とロシアが準同盟水準で軍事協力を格上げした中で行われて注目を集めた。

尹大統領はこれに先立ち、インド太平洋パートナー4カ国(IP4、韓国・日本・オーストラリア・ニュージーランド)首脳会談に出席し、朝露の不法軍事協力に対抗した国際共助を促した。

 

◇尹大統領、IP4首脳会談に出席…「朝露糾弾」共同声明結実

 

(5)IP4は尹大統領の要請に共感を表し、

  インド太平洋と欧州の平和安定を害する朝露間の不法軍事協力を強力に糾弾し

  朝ロ間の包括的戦略パートナー関係条約の締結など国連安保理決議に違反した軍事・経済協力を深く懸念し

  朝ロのあらゆる国連安保理違反行為に対して即時に中断要求をする--

などが盛り込まれた4カ国共同声明を発表した。

 

(6)尹大統領は会議で「欧州とインド太平洋地域の安全保障を同時に脅かす朝露軍事協力の徹底した遮断が必要だ」とし「ロシアと北朝鮮の軍事協力は国連安保理常任理事国であるロシア自らが国連体制の根幹を傷つけること」と批判した。

韓国とNATO間の軍事協力強化および情報共有も発表された。

国連安保理決議を明らかに違反している朝露軍事協力は欧州大西洋とインド太平洋地域の平和と安定に対する深刻な脅威で、国際社会が一丸となって対応しなければならないということで意見を一致させた。

 

(7)この日、5月の韓日中首脳会議以降、2カ月ぶりに再会した尹大統領と岸田文雄首相は「再開できて本当にうれしい」(尹大統領)、「「ソウルで会った記憶がまだ鮮明だ」(岸田首相)と話しながら笑顔で挨拶を交わした。

両国首脳は国連安保理決議を違反した朝ロの包括的戦略パートナーシップ条約の締結などの軍事協力に懸念を表わし、協力して対応していくことにした。

尹大統領は「最近の朝ロ密着は東アジアはもちろんグローバル安保に深刻な懸念をもたらしている」とし「韓米日のキャンプデービッド協力がどれほど重要なものだったかを示している」と強調した。

 

(8)韓独首脳会議ではドイツの国連司令部加入を歓迎する挨拶が行き来した。

尹大統領はショルツ首相に「ドイツの国連軍司令部加入申請を歓迎する」とし「今後関連する手続きが早期に完了し次第、ドイツが国連軍司令部加盟国として必要な役割を果たすよう期待している」と話した。

ドイツは2019年国連軍司令部への加入を希望したが、文在寅(ムン・ジェイン)政府が拒んだ。

当時終戦宣言を推進する過程で、韓半島有事時に韓米連合司令部を支援する国連軍司令部を拡大することに対して具合が悪かったのではないかとの解釈が多かった。

 

■国連軍司令部

伊藤弘太郎「新たな高みへ引き上げられた日米韓安保協力と国連軍司令部を巡る動き」キャノングローバル戦略研究所 月刊『東亜』 No.677 2023年11月号(

 

国連軍司令部は、1950年に北朝鮮による南侵で始まった朝鮮戦争の際に、国連安保理決議に基づき、米軍に加えて英国、フランス、豪州、カナダなどの戦力提供国が集い東京に創設された。マッカーサー将軍が国連軍総司令官として指揮した。朝鮮戦争の休戦後1957年に司令部はソウルに移された。1978年に米韓連合司令部ができると、韓国軍に対する作戦統制権は在韓米軍司令官に継承され、実戦部隊の配置を伴わない休戦協定の執行を主導するための限定的な役割を担ってきた。

 

しかしながら2006年以降、国連軍司令部の機能を拡大させるための動きが始まり、2014年に本格的に司令部機能の再活性化(Revitalization)が行われていることが明らかになる。具体的には、米国と国連軍への戦力提供国である豪州やカナダを中心に司令部要員の増員が実施された。2018年に米軍以外で初となるカナダ陸軍のエア中将(現カナダ軍参謀総長)が国連軍副司令官に就任し、その後副司令官ポストは豪州海軍中将、そして現在の英国陸軍中将へと引き継がれている。

 

このような国連軍司令部機能の再活性化に反発したのは文在寅前政権と与党政治家であった。