英国初の女性財務相、リーブス氏は労働者のための成長経済目指す(24年7月6日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)

 

記事(Ailbhe Rea)

  •     チェスのチャンピオンはオックスフォード大、英中銀を経て政権入り
  •     増税を否定、3年前からスターマー党首と財界や市場にアピール

 

写真 英国初の女性財務相に指名されたレイチェル・リーブス氏 Photographer: Hollie Adams/Bloomberg

 

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英国初の女性財務相に指名されたレイチェル・リーブス氏にとって、ガラスの天井を破るのは今始まったわけではない。

  サッチャー政権が誕生した1979年に生まれ、サウス・ロンドンで公立教育を受けて育ったリーブス氏は、地元のチェス競技大会で並み居る強豪(ほとんどが私立学校に通う男子)を打ち負かすことに誇りを持っていた。

後のインタビューで同氏は「お高くとまった連中が大勢いた」と振り返る。「私は彼らに負けず強い。それを証明してみせたかった」と語った。

  

リンク 英国で政権交代、スターマー労働党首が首相就任-総選挙で大勝

  

(2)「低成長、高負担、多債務」

リーブス氏が保守党政権から引き継ぐ英経済は、成長が鈍く、国内総生産(GDP)の100%近くに相当する債務を抱え、税負担は過去70年間で最も重い。

「私が引き継ぐ試練の厳しさを甘くは見ていない」とリーブス氏は選挙戦が始まって間もない頃、BBCのインタビューで述べている。

「難しい決定を下さなくてはならない」と語った。

 

グラフ

Labour Faces a Challenge to Lift Economic Growth to 2.5%

 

 

Source: Bloomberg Economics

 

(3)

1)リーブス氏は自分の提案が多くに歓迎されないし、特に労働党の左派には不評となる覚悟だ。

 

2)(一部のアクティビスト的な党員)

 長年続いた保守党の緊縮財政を経て、財政の締め付けを緩め、劣化する公共サービスに資金を投入することを望んでいる。

 

3)左派的色合いの強いコービン前党首下での労働党と現在の労働党は違うと、リーブス氏はスターマー党首とともに財界や金融市場に3年前からアピールしてきた。

昔から労働党の特色とされている税と支出の政策には戻らないと、安心させようとしてきた。

  

(4)「経済成長による歳入増を目指す」

財務省の4大歳入減である

 所得税と

 国民保険料、

 付加価値税、

 法人税

について、2人はいずれの引き上げも否定。

その他の増税を必要とする計画もないとし、債務が時間の経過とともに減少に向かうことを確実にする財政規律を守ると約束している。

  「私が最優先する公約は、経済に安定を取り戻すことだ」とリーブス氏はBBCに語った。

写真 リーブス氏(右)とスターマー氏(左)Photographer: Anthony Devlin/Bloomberg

  

(5)「オックスフォード大卒後ゴールドマン・サックスからの就職勧誘を断り英中央銀行に」

2000年のオックスフォード大学卒業後は、ゴールドマン・サックスから就職のオファーを受けたが、リーブス氏はイングランド銀行(英中央銀行)でエコノミストとして働いた。

高額の報酬を断って、「もう少し役に立つ何か」を選んだという。

  

(6)「労働者のために機能する英国経済にしたい」

「保守党がやってきたことを直ちにすべて是正することはできないだろう」とリーブス氏。「労働者のために機能する英国経済にしたい」とBBCに語った。

 

原題:Rachel Reeves Goes for Growth as UK’s First Female Chancellor(抜粋)