トランプ氏、討論会で優勢 復権ならドル高転機も(24年6月30日 日本経済新聞電子版)

 

記事【ニューヨーク=斉藤雄太】

 

(1)27日の討論会で優勢と評されたトランプ前大統領は「ドル安志向」で知られる。

返り咲きの可能性が高まれば、ドル高を容認してきたバイデン政権からの方針転換が意識されそうだ。ただトランプ氏の経済政策はインフレ再燃や米金利高止まりのリスクも抱える。

 

(2)27日のテレビ討論会では、民主党候補のバイデン大統領と共和党候補のトランプ氏の双方から為替について言及はなかった。

討論会全体を通じてバイデン氏の苦戦が目立ち「投票先で揺れる有権者を安心させることができなかっただけでなく、彼の支持基盤も萎縮させた」(米債券運用大手ピムコのリビー・キャントリル氏)。

相対的なトランプ氏優位が浮かび上がり、市場は政権交代を意識せざるをえない。

 

(3)「トランプは反円安。「円安・ドル高は米国の大惨事だ」」

「34年ぶり(当時)の円安・ドル高は米国にとって大惨事だ」。トランプ氏は4月下旬、自身の交流サイトにこう投稿した。

ドル高が続けば、海外からみた米国製品が割高になり「製造業は競争できない」と強調。

米製造業の復活を掲げ、輸出に有利なドル安を好むと公言してきた前政権時代から考え方に変化がないことを印象づけた。

 

(4)トランプ氏は中国などからの輸入品の関税引き上げや大型減税の延長・拡充などの政策も掲げる。

政権奪還後にこうした政策を実行に移せばインフレ再燃を招き、米連邦準備理事会(FRB)が利下げに動きにくくなるとの見方も根強い。

米運用会社ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのアヌジート・サリーン氏は「トランプ氏の通商政策はドル安を必要とするものだが、当初はむしろドル高を促すリスクがある」と指摘する。