こころの健康学 若者のケア、学校と連携を(認知行動療法)大野裕(24年6月29日 日本経済新聞電子版)

 

記事

 

(1)「45歳までに8割が精神疾患にかかる、そのうちの6割は青年期までに発症」<45歳までに発症する人のうち6割は青年期に発症>

45歳までに86%の人が精神疾患にかかっていたという研究を前々回紹介したが、その研究では59%の人が青年期までに精神疾患を発症しており、人生早期に精神的なケアが必要な人が多いこともわかった。

 

(2)そのことが経験的にわかっているからだろう。

2024年4月から学校での合理的配慮の義務化の対象が広がった。そのこと自体は大切だが、実際にどのようにすればよいか、現場ではまだはっきりとした方向性が見つけられないでいるようだ。

先週、精神科医の最大の学会である日本精神神経学会が開かれ、いくつかのシンポジウムに協力した。

そのひとつは児童精神科医の企画だった。大人を専門にする私の役割は、年齢に関わりなく、受診した人をきちんと見立てることの大切さを伝えることだった。そのためには受診した人と向き合うことが大切だが、それだけの時間が取れない現状も議論になった。

 

(3)私は、十数年前から、全国の学校の教員と一緒に、生徒のメンタルウェルビーイングの向上を目的とした認知行動療法教育研究会の活動に協力している。

今年は北海道地区が立ち上がり、来月にはそれを記念して学校関係者向けの公開オンライン講演をすることになっている。

こうした活動に取り組む教員の話を聞くと、学校は学校で医療的な問題への取り組み方がわからず、手探りの状態のようだ。

学会では、教員との体験を紹介しながら、児童精神科医療と学校教育が協力し合える体制ができると、多くの若者に役立つ支援が可能になるのではないかという話をした。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)