AI演算処理、電力4分の1 エッジコーティックスの半導体チップ 競合製品比、価格も抑制(24年6月27日 日本経済新聞電子版)

 

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(1)(半導体チップの設計・開発を手掛けるEdgeCortix(エッジコーティックス、東京・中央))

 生成AI(人工知能)の演算処理に特化した新たな半導体チップを開発した。

独自の設計技術を活用し、処理能力あたりの電力を一般的な競合製品の4分の1に抑えた。高速演算と低コストを両立させ、幅広いAI関連企業の需要に応える。

 

(2)半導体チップは電子基板に搭載する中核部品の一つだ。

電気信号を制御し、コンピューター内の演算処理を担う。生成AIなどに用いる高度な演算では一度に大量の情報を処理する際に大量の電力を消費する。コストがかかるため、消費電力の抑制と高速演算を両立することが求められている。

 

(3)チップと接続端子などを組み込んだ電子基板を2024年内に国内外の企業に発売する。

5月には自社のサイト上で予約注文の受け付けを始めた。台湾積体電路製造(TSMC)が持つ台湾国内の工場にチップの生産を委託し、年内にも量産販売する。設備が整えば、同社熊本工場での製造も視野に入れるという。

 

(4)稼働時の消費電力を10ワット以下に抑え、1秒間に60兆回演算できるようにした。

販売価格は1枚249ドル(約3万9000円)から。

同じ演算能力を持つ一般的な競合製品では、稼働時の消費電力が40ワット程度と高く、価格も1000ドル近くするとされる。

処理能力あたりの電力効率を最大4倍に高め、同コストも約75%低減させた。

 

(5)チップのサイズも小さくした。

縦22ミリメートル、横80ミリメートルの電子基板に1枚搭載でき、最終製品の小型化で採用が広がるボード型の電子基板規格「M.2(エムドットツー)」に対応する。記憶や動作に関わる部材を効率的に減らした。

開発には異なる計算エンジンを幅広く適切に接続し、効率よく演算できるようにする独自技術を生かした。エッジコーティックスは19年に設立したスタートアップで、半導体チップを動かすソフトウエアなどの設計技術に強みを持つ。