邦人刺傷、52歳男を拘留 中国「偶発的」と安全強調(24年6月26日 日本経済新聞電子版)

 

記事【北京=田島如生、蘇州=若杉朋子】

 

(1)中国の警察当局は25日、江蘇省蘇州市で24日に中国人の男が日本人の母子を刃物で切りつけた事案を巡り、中国人の52歳の男を刑事拘留したと発表した。

 

中国外務省は偶発的な事件だとの見方を示した。

 

(2)「日本人2人は軽傷、バス案内中国人女性は重体」

中国の日本人社会には衝撃が広がっており、日中関係に悪影響が及ぶのは必至だ。

蘇州市公安局は25日、容疑者は無職で近ごろ蘇州へ移住してきたと明らかにした。

襲われた日本人のうち1人は治療中だが命に別条はなく、もう1人はすでに退院したという。バス案内の中国人女性も刺され、重体だとされる。

 

(3)(中国外務省の毛寧副報道局長)

 25日の記者会見で「遺憾」の意を表した。

「警察は偶発的な事件だと判断している」と述べ、日本人を狙った計画的な犯行との見方を否定した。

毛氏は「このような事件は世界のどの国でも起こりうる」とも語った。

日中関係への影響について言及を避けつつ、外国からビジネスや留学、旅行目的の訪中を歓迎した。「中国は世界で最も安全な国の一つだ」と強調した。

 

(4)(林芳正官房長官)

 25日の記者会見で「事案が発生したことは遺憾だ」と述べた。赤松秀一・上海総領事は同日、呉慶文・蘇州市長と面会し事件の背景を含めた情報提供を求めた。呉氏は迅速な情報共有を約束した。

 

(5)

日中筋は「今回のように日本人学校のスクールバスを刃物で狙った犯行は聞いたことがない」と話す。日本政府の沖縄県・尖閣諸島の国有化で中国各地に反日デモが広がった2012年も、子供を傷つける事例はなかったという。

(蘇州の日本人学校)

 25日に休校となり通常ならスクールバスで子どもが帰宅する夕方も事件現場のバス停は利用者がまばらだった。

近くに住む中国人男性は「この辺では中国人と日本人の関係はとてもいい」と今回の事件を残念そうに話した。

 

(6)「10日には吉林省で米国人大学教員4人が刺傷した」

蘇州は上海市に隣接した場所にある。日系企業の工場などがあり、日本人の在住者も多い。

蘇州に工場や事務所を持つ日系企業の中には25日、帯同家族のケアが必要な人の在宅勤務を認める措置をとる社もあった。

中国では今月10日にも、東北部の吉林省吉林市内の公園で米国人の大学教員4人が刃物で刺されて傷を負った。

中国外務省の林剣副報道局長は記者会見で「偶発的な事件だ」と説明し、米中の人的交流への影響はないと主張した。

 

(7)

中国で外国人が襲われる事件が相次いだことから現地の日本人社会は動揺している。蘇州の現場近くに住む30代の日本人駐在員は「犯行の動機は明らかになっていないので安全面が心配だ」と話した。