米中テク覇権争いでも関係強化、米財団がファーウェイの密かな味方に(24年6月26日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)

 

記事の概要

(1)要点

  •     オプティカ財団のCEO、昨年11月にファーウェイ本社を訪問
  •     財団関係者が4月に内部告発、米政府支援の研究が中国に流出と主張

(2)「財団CEOのファーウェイ本社訪問は秘密に」

(3)「4月に財団関係者が内部告発」

(4)「両者の提携は数十年にわたり強化されてきた」

(5)「ファーウェイが財団を通じて米大学での最先端研究に資金を秘密裏に提供していた」

(6)「議会が調査開始 財団はファーウェイからの資金を返還」

(7)「国防総省が研究費出していた研究者が同時期にファーウェイからも資金受けていた」

(8)「財団が研究費の提供先を選定するのにファーウェイからの影響があった可能性」

(9)「米政府関係が研究費を出した研究や特許がファーウェイ・中国政府に渡っている」

(10)「財団広報担当者は、この主張は「純然たる誤り」と否定」

(11)「ファーウェイ 資金提供の目的は「世界的な知識の共有を促進」するため」

(12)「ファーウェイ8月最新スマホ 米国の輸出規制対象の回路線幅7ナノの半導体を搭載」

(13)「ファーウェイの新型スマホを発表は、輸出規制担当の米商務長官が中国を訪問してる時」

 

記事(Kate O'Keeffe)

 

(1)要点

  •     オプティカ財団のCEO、昨年11月にファーウェイ本社を訪問
  •     財団関係者が4月に内部告発、米政府支援の研究が中国に流出と主張

 

(2)「財団CEOのファーウェイ本社訪問は秘密に」

米ワシントンに本部を置くオプティカ財団は、エリザベス・ローガン最高経営責任者(CEO)が昨年11月に中国を訪問した際、内部やソーシャルメディアで訪中を広く告知した。

だが、中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)の本社訪問については触れていなかった。ブルームバーグ・ニュースが通信記録や文書の内容を確認した。

  

(3)「4月に財団関係者が内部告発」

4月には、オプティカ財団とファーウェイとの提携強化を巡って財団関係者が内部告発を行っており、ローガン氏による秘密裏の本社訪問もその中で指摘されている。

 

(4)「両者の提携は数十年にわたり強化されてきた」

オプティカの内部記録を調査したところ、両者の提携は公に知られている以上に深く、テクノロジーの覇権争いを繰り広げる米中の間で緊張が高まる中でも、数十年にわたり強化されていることが分かった。

  

(5)「ファーウェイが財団を通じて米大学での最先端研究に資金を秘密裏に提供していた」

ブルームバーグ・ニュースは5月、米政府が禁輸措置の対象としているファーウェイがオプティカ財団を通じてハーバード大学を含む米国の大学での最先端研究に資金を秘密裏に提供していると報道。今回の調査はこれをさらに掘り下げたものだ。

 

リンク 中国ファーウェイ、研究コンペ通じ米大学の最先端研究に資金提供

  

(6)「議会が調査開始 財団はファーウェイからの資金を返還」

関係が発覚したことで、米議会が調査に乗り出したほか、オプティカはファーウェイが拠出した資金を返還し、審査員からファーウェイの代表を外すことを決定した。

 

写真 首都ワシントンにあるオプティカ本部Photographer: Samuel Corum/Bloomberg

  

(7)「国防総省が研究費出していた研究者が同時期にファーウェイからも資金受けていた」

今回の調査では、ファーウェイがオプティカの研究コンペを通じてひそかに支援していた米国の研究者6人のうち、少なくとも3人がほぼ同時期に国防総省から資金提供を受けていたことが判明した。

  

(8)「財団が研究費の提供先を選定するのにファーウェイからの影響があった可能性」

4月4日にオプティカの顧問弁護士に提出された内部告発文書では、ローガン氏がファーウェイ本社を「非公開」で訪問したことに言及。

コンペを通じてどの科学者に資金を提供されるかを決めるにあたり、ファーウェイの役割に懸念があると指摘した。

またコンテストが国防総省傘下の国防高等研究計画局(DARPA)が支援するものも含め、米政府が資金提供する研究を危険にさらす恐れがあると主張している。

  

(9)「米政府関係が研究費を出した研究や特許がファーウェイ・中国政府に渡っている」

提出された内部告発の文書では詳細には踏み込まず、「DARPAを含め米政府機関から資金提供を受けている研究、および米政府が一定の権利を有する特許がコンペを通じて故意にファーウェイ、ひいては中国政府に渡ったと信じている」と記述されている。   

  

(10)「財団広報担当者は、この主張は「純然たる誤り」と否定」

オプティカの広報担当者は、この主張は「純然たる誤り」と否定。

ファーウェイ資金の取り扱いについては「適切かつ誠実に行動したと確信している」と述べた。ローガン氏は6月3日付けのスタッフ向け文書で「最善の慣行と最大限の透明性の双方を担保するため、積極的に方針を見直している 」と明らかにした。

 

(11)「ファーウェイ 資金提供の目的は「世界的な知識の共有を促進」するため」

ファーウェイの広報担当者は声明文で、同社がオプティカの研究コンペに資金を提供したのは「若い科学者のやる気を高め、学術交流を奨励するとともに、世界的な知識の共有を促進するためだ」と説明。ブルームバーグの調査結果に関する質問には回答しなかった。

  

(12)「ファーウェイ8月最新スマホ 米国の輸出規制対象の回路線幅7ナノの半導体を搭載」

ローガン氏がファーウェイ本社を訪問したのは、ファーウェイが昨年8月に新型スマートフォンを発表してからわずか数カ月後のタイミングだった。

ファーウェイの最新スマホは、米国の輸出規制によって開発が阻止されるはずだった回路線幅7ナノメートルの半導体を搭載。

これを受けて、米政府は正式な調査を開始した。

 

(13)「ファーウェイの新型スマホを発表は、輸出規制担当の米商務長官が中国を訪問してる時」

さらにファーウェイは米国の輸出規制を担当するレモンド米商務長官が中国を訪問している最中に新型スマホを発表するという、挑発的とも言える行動に出ている。

写真 ファーウェイの新型スマホ「Mate 60 Pro」に搭載されているSMIC製造の「麒麟9000s」チップPhotographer: James Park/Bloomberg

 

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原題:Huawei’s Secret Ally in the US-China Tech War: A DC Nonprofit(抜粋)

  • ally ジーニアス英和辞典 同盟国、協力者、盟友、支え、連合する

 

<私見:

米国では、東部のハーバードなど名門大学が「多様性」を名目に中国人留学生を減らすことに反対してきた。しかし、民間団体を介して中国から研究資金が得られるという「実利」が強く働いているのかもしれない。

研究者の中には「研究馬鹿」がいて、ともかく自分が業績をあげるためなら、手段を選ばず何でもやる人がいる。ハニートラップならイチコロで中国研究費熱烈歓迎だろう>