月の裏側で土壌採取、中国の無人探査機「嫦娥6号」が帰還へ…試料持ち帰れば世界初(24年6月25日 読売新聞オンライン無料版)

 

記事【瀋陽=出水翔太朗】

 

(1)「25日に月の裏側から試料を持ち帰る」

月の裏側で土壌採取に成功したとされる中国の無人探査機「 嫦娥じょうが 6号」が25日にも、中国の内モンゴル自治区の着陸場に帰還する見通しになった。

中国共産党機関紙・人民日報(電子版)などが報じた。

月の裏側から試料を持ち帰れば、世界初の成功となる。

 

写真 月の裏側で土壌を採取した無人探査機「嫦娥6号」の画像。移動式カメラで撮影された=中国国家宇宙局のホームページから

 

(2)「電波が届かない月の裏側で中継通信衛星を介した複雑な作業」

中国中央テレビは25日午前、5月に打ち上げられた嫦娥6号について「いま地球に戻る途中」などと伝えた。

中国国家宇宙局などによると、嫦娥6号は今月2~3日、ロボットアームとドリルを使って土壌を採取。

地球からの電波が届かない月の裏側で、中継通信衛星を介した複雑な作業となったが、6日には月の周回軌道で待機していた帰還カプセルに試料を移していた。

 

(3)回収予定の試料は、月の成り立ちを解明する上で重要な手がかりになると期待されていて、科学誌ネイチャーは「月全体の我々の見解に革命をもたらすだろう」とする専門家の見方を報じている。

 

(4)「月の表側の試料の持ち帰りは米国や旧ソ連、中国が成功」

月の表側の試料は米国や旧ソ連が持ち帰っており、中国も2020年に「嫦娥5号」で1731グラムを採取した。今回は2000グラムを目指しているという。

 

(5)「月の資源の扱いのルールが中国主導で形成される」

中国が月探査計画に着手したのは04年で、19年には「嫦娥4号」が世界で初めて月の裏側に着陸した。月の裏側の試料を回収すれば、月探査を巡る中国の存在感が高まりそうだ。中国は35年までに科学研究用の月面基地を完成させる計画で、「月の資源の扱いに関するルールが中国主導で形成される恐れがある」(外交筋)との懸念もある。