ウォール街のスマート軍団、株高に打ち負かされる-今こそ警戒か(24年6月23日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)

 

記事(Denitsa Tsekova)

 

(1)要点

  •     集中的な株高の犠牲となったのは分散投資だ
  •     時価総額世界一となったエヌビディア、20、21両日で計7%ほど下落

 

(2)

ウォール街は絶好調だ。高利回りのオプション取引や銀行融資をパッケージ化したファンドなど、投資のプロとしての強みを個人投資家にもたらすと称する戦略の当たり年になりそうだ。

 

リンク 米株式市場の平穏に賭ける取引に巨額資金-2018年の二の舞いはないか

  

(2)「今はS&P500指数が最も稼げる」

経済や米連邦準備制度の政策に不安を抱える顧客に対し、あらゆる金融会社が独創的な取引を売り込んでいる。

しかし事実上、今はS&P500種株価指数を買い保有するという最もシンプルな資産配分ほど稼げる取引はない。

  

(3)「分散投資をうたう上場投資信託(ETF)4本につき約3本がS&P500種にまけてる」

マネーマネジャーらは、分散投資とされる戦略の数々に資金をつぎ込んできた。だが、上場投資信託(ETF)4本につき約3本がS&P500種に打ち負かされるのを黙って見ているしかなかった。これは少なくとも2010年以来最悪の負け方だ。

ミューチュアルファンド運用担当者のお気に入り銘柄は、半年間の成績でそうした運用担当者が最も敬遠している銘柄<インデックスファンド>に大きく後れを取っている。

 

グラフ Fewer Equity ETFs Are Outperforming the S&P 500

Less than one in four stock ETFs have outperformed the benchmark this year

 

Source: Bloomberg Intelligence

 

 

◆株高の犠牲

  

(4)最大級の時価総額加重平均型株価指数からあえて外れた投資家は、何度も何度も惨敗した。

1)エヌビディアやマイクロソフトなどの株価が雪だるま式に上昇し、S&P500種の年初来上昇率はまだ6月だというのに約15%に達している。

 

2)集中的な株高の犠牲となったのは分散投資だ。

資産クラスとしての債券は依然として値下がり。ブルームバーグ・コモディティー指数で追跡される原材料はわずか3%の上昇にとどまっている。

 

3)アクティブ運用ETFやクオンツ運用のスマートベータ、テーマ型ETFなど、パフォーマンスを追い求める戦略は相対パフォーマンスが最も低いETFの一角だ。

  

(5)「今年の指数上昇の3割余りをエヌビディアだけに負っているのはいびつだ」

S&P500種やナスダック100といった株価指数の絶え間ない上昇を、多くのアナリストは依然として不安の種として捉えている。今年の指数上昇の3割余りをエヌビディアだけに負っている市場のいびつさに警戒しているためだ。

 

(6)「エヌビディアは6月20、21両日で合わせて約7%下落」

人工知能(AI)半導体メーカーのエヌビディアは、かつては考えられなかった時価総額世界一という称号を手にした後、20、21両日で合わせて約7%下落した。

リンク エヌビディア、株続落で時価総額2000億ドル消失-首位の座から陥落

  

(7)「分散化とリスク回避は下期(7-12月)に向けた正しい行動だ」

(ジョーンズトレーディングのチーフ市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏)

「分散化とリスク回避は下期(7-12月)に向けた正しい行動だ」と指摘し、「投資家はエヌビディアがS&P500の強さをほぼ単独でけん引し続けることを期待すべきではない」と語った。

 

  

 

原題:Wall Street’s Smart-Trade Brigade Thrashed Again on Stock Boom