春秋(24年6月21日 日本経済新聞電子版)

 

記事

 

(1)こんなことを言ったら、失礼かもしれない。

でも、わが国のある政党と任(にん)侠(きょう)団体の統治は、ちょっぴり似ているような気がする。トップを総裁と呼ぶ悪名高い組織もある。現場を束ねる有力幹部である若頭、本部長、舎弟頭などを、「三役」と称することもあるらしい。

 

(2)▼「与党内の覇権争いなどがあり、いつ何があるかわからない」。

自民党派閥のパーティーを巡る政治資金規正法違反事件の公判で、二階派(志帥会)の元会計責任者は、裏金をため込んだ動機を明かした。が、「すべて一任されていた」と親分の関与はきっぱり否定。仁義のお手本である。義理がすたれば、この世は闇だ。

 

(3)▼「実弾が飛び交う」とは、おっかない男たちの抗争だけでなく、国政選挙でも聞く。現金による買収工作だ。

2019年の参院選広島選挙区の事件が思い浮かぶ。確定判決によると、元法相は立候補した妻を当選させる目的で地元議員ら100人に現金をばらまいた。カネに色はついていないが、どのように調達したのか。

 

(4)▼改正政治資金規正法が成立した。

資金集めの手段であるパーティー券購入者の公開基準を、20万円超から5万円超に引き下げた。「禍根を残すような改革だけはやってはいけない」。ギャング映画のボスのような帽子が似合う自民党の実力者は、改正に不満だと報道された。「未曽有」の有権者の反発を招くかもしれない。