富士通が量子計算機を外販 産総研と60億円で契約(24年6月19日 日本経済新聞電子版)

 

記事

 

(1)要点

富士通は18日、次世代の高速計算機である量子コンピューターの外販を始めると発表した。

第1弾として産業技術総合研究所(産総研)に約60億円で納入する契約を結んだ。量子コンピューターは新しい素材や医薬品の開発、人工知能(AI)の計算などに革新をもたらすと期待される。開発で先行する米IBMなどを追う日本企業の動きが活発になってきた。

 

(2)「極低温に冷やす「超電導方式」 「量子ビット」数を世界トップクラスに増やせる」

納入する量子コンピューターは極低温に冷やして電気抵抗をなくす「超電導方式」と呼ばれるタイプ。性能の目安となる「量子ビット」数を世界トップクラスの数百まで増やせる設計を採用した。産総研は2025年初めの稼働を目指す。

 

(3)「産総研は富士通の新型スパコンと組み合わせて計算ミスを補う」

量子コンピューターは複雑な問題を超高速で解く次世代技術だ。創薬で必要な効果を得られる最適な分子の組み合わせを計算するような使い方が想定される。

 

1)ただ、計算ミスが多いといった課題があり、実用レベルには100万量子ビットが必要とされる。

 

2)産総研は富士通の新型スーパーコンピューター「ABCI-Q」と組み合わせて計算ミスを補い、実用的に使える手法を探る。電力供給の最適化や交通渋滞の緩和といった計算を実現する構想を掲げる。

 

(4)「富士通は計算速度世界一のスパコン「富岳(ふがく)」の実績がある」

富士通は計算速度で世界一になったスパコン「富岳(ふがく)」などを手掛けた実績を持つ。

量子コンピューターは理化学研究所と組んで技術を蓄積し、23年10月に日本企業で初めて実機を稼働させた。

 

(5)「量子コンピューターの市場は世界で拡大する見通し」

ボストン・コンサルティング・グループは35年ごろに最大8500億ドル(約130兆円)の経済効果を生むと見込む。

いち早くクラウドで量子コンピューターの提供を始めたIBMを筆頭に、米国勢が開発競争で先行してきた。

日本では富士通などと国の研究機関が組み、「冷却原子方式」と呼ぶ新しいタイプの量子コンピューターの商用化を目指す動きも出ている。