変わる大統領選マネー(上) ウォール街「トランプ回帰」 バイデン氏は草の根献金(24年6月19日 日本経済新聞電子版)

 

記事

 

(1)11月5日の米大統領選まで5カ月を切った。趨勢を左右するのがカネだ。資金集めから政治広告まで、過去最大額とされる大統領選マネーの行方を追った。

 

(2)19日、米首都ワシントンで共和党のティム・スコット上院議員が「資金集めイベント」を開く。スコット氏はトランプ前大統領陣営の副大統領候補の一人。スコット氏への資金支援はトランプ氏の選挙戦と密接に連動する。

(講演者)

 ヘッジファンドのシタデル創業者のケン・グリフィン氏、投資ファンドのアポロ・グローバル・マネジメントを率いるマーク・ローワン氏、アクティビスト(物言う株主)のビル・アックマン氏らが名を連ねる。

さながらウォール街による共和の支持集会だ。

 

 

 

(3)「世界を安定させる強さをみせるだろう」

 「変革のためにトランプ氏を支持したい」と大手投資ファンドのブラックストーンのスティーブン・シュワルツマン最高経営責任者は表明した。

「トランプ氏は今の困難な時代に、世界を安定させる強さをみせるだろう」(シタデルのグリフィン氏)とトランプ支持に傾く発言も増えてきた。

 

(4)「バイデンの政策運に不満でトランプ支持へ」

実は両氏をはじめ、金融界の大物の多くは数カ月前までトランプ氏から距離を置いていたが、増税方針や金融規制などバイデン政権の政策運営に不満を強めた。

グリフィン氏は「政府支出の拡大でインフレを制御できていない」とみる。さらにイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘を巡る同政権への不信も重なった。

米調査サイト「オープンシークレッツ」によると、過去の大統領選で金融・不動産業界の献金は全体の2割程度を占め、業種別で最大の資金の出し手となっている。金融界のマネーは選挙戦の趨勢を左右しうる。

 

(5)

両陣営が競うのは大口献金者の支持獲得だけではない。米連邦選挙委員会(FEC)によると、4月末時点でバイデン大統領陣営の手持ち資金はおよそ8450万ドル(約130億円)とトランプ陣営より7割多い。原動力は1人200ドル未満の一般人の小口献金だ。

(オープンシークレッツの調べ)

 バイデン氏が集めた小口献金は約9200万ドル。金融業界からの献金の2倍以上に達する。

 トランプ氏は金融(5700万ドル)が小口献金(3700万ドル)より多い。

 

(6)「小口献金の割合が4割にまで増加」

米ジョージタウン大などの研究では、16年の選挙で3700万回だった個人の献金回数は20年に1億9500万回と5倍強に拡大。

個人の献金総額に占める小口献金の割合(両党のサイト経由)も16年の1割から20年は4割と跳ね上がった。

大統領選の費用は増え続け、今回も過去最高が確実視される。資金が多ければ勝つとは限らないが、なければ勝負の土俵に立てない。資金集めはこれからが本番だ。