マクロン仏大統領が賭けに出た選挙、ブレグジットの悪夢再来リスク(24年6月16日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)

 

記事(William Horobin、Alberto Nardelli、Alessandra Migliaccio)

 

(1)要点

  •     当局者らはフランス総選挙と英EU離脱との類似点を意識している
  •     金融市場は混乱、極右の勝利を懸念-仏国債利回りスプレッド拡大

 

(2)「自信家、ポピュリスト右派の標的の既成権力の象徴、国内問題解決の自信⇒リスクの投票」

フランスのマクロン大統領による国民議会(下院)解散・総選挙の決定は、欧州当局者の脳裏に英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)をフラッシュバックさせている。

  マクロン大統領が自身の決断を発表するやいなや、即座にEU離脱をめぐる2016年の国民投票に踏み切って敗北した英国のキャメロン元首相と比較する声が相次いだ。

「2人とも自信家で、ポピュリスト右派の攻勢にさらされた既成の権力を象徴する人物であり、国内の問題を解決できると確信して、リスキーで不必要な投票の計画に打って出た」というわけだ。

 

(3)「「金融危機を招きかねない」もとのキャメロンと同じ言いよう」

仏大統領側は選挙戦最初の週にキャメロン元首相のレトリックの要素を踏襲さえしている。

ルメール仏経済・財務相は、マリーヌ・ルペン氏が率いる極右政党・国民連合(RN)の政策が実行に移されるようなことになれば、金融危機を招きかねないとの予測を示した。

 

(4)「フランスの危機は最終的にEUに深刻な脅威となる可能性」

ルメール氏は短い任期に終わったキャメロン元首相の後継者の1人の名前を挙げて、経済の混乱を警告したが、その戦略はブレグジットの是非を問うキャンペーン中にキャメロン氏自身が繰り広げた「プロジェクト・フィアー」として知られる戦略に似ている。

  EU当局者は、英国の離脱投票による影響への対応に多くの時間を費やしてきた。

だが、フランスで本格的な危機が生じれば、ユーロ圏の中核を直撃することになり、最終的にEUにとってより深刻な脅威となる可能性がある。

  ある外交官は、今ブリュッセルでは全ての会話で、フランスの危機が最初に取り上げられる話題になっていると話す。

 

(5)「英国のEU離脱投票は「ブレグジットプレミアム」で何年も金融の動揺を引き起こした」

こうした懸念は金融市場にも波及しており、フランスとドイツの10年債利回り格差(スプレッド)は週間ベースで過去最大の拡大を記録。フランス株の時価総額は同期間に約2100億ドル(約33兆円)消失した。

  英国のEU離脱を問う投票は、投資家が英国資産を保有するためにいわゆる「ブレグジットプレミアム」を求めるなど、何年も続く金融の動揺を引き起こした経緯がある。

 

原題:Macron’s Election Gamble Gives Europe Brexit Nightmares Again(抜粋)