鉄道改札で全国初の「顔認証」本格導入、6駅にタブレット8台…従来の切符と定期券の新規発売取りやめ(24年6月15日 読売新聞オンライン無料版)

 

記事

 

(1)要点

千葉県佐倉市のユーカリが丘ニュータウンを走行する鉄道「山万ユーカリが丘線」で15日、顔認証で乗り降りできるシステムが全国で初めて本格導入される。

利用者は事前に専用サイトでクレジットカード情報と顔を登録し、改札に設置されたタブレットに顔をかざして乗車する。

両手に荷物を持っていてもスムーズに利用できるなど、利便性が高まることが期待される。(渡辺亮平)

 

写真 山万ユーカリが丘線の車両(昨年12月、佐倉市で)

 

(2)「同ニュータウンの「山万コミュニティバス」にも導入」

鉄道とバスを運営する不動産会社「山万」(東京)によると、設置するタブレットは15台。鉄道6駅の改札に計8台、バスの車内に7台だ。

 

(3)「1か月分利用料をまとめてクレジットカードから引き落とし」

事前登録を済ませた利用者は、タブレットに顔を読み込ませて乗車する。降車時はそのまま降りられる。1か月分の利用料がまとめてクレジットカードから引き落とされる。

 

(4)(国土交通省)

顔認証で乗り降りできるシステムの本格導入は全国の鉄道で初めて。バスについても「全国的に聞いたことがない」という。

 山万は2013年、自社建設のマンションの出入り口に顔認証システムを導入し、鉄道にも応用できないか検討を重ねてきた。

 

写真 鉄道駅の改札に設置された顔認証システムのタブレット(山万提供)

 

(5)「ICカード対応改札機は高コスト、顔認証システムは「タブレット1台」で低コスト」

鉄道への導入を加速させる一因となったのが、改札機の老朽化だ。

鉄道6駅には現在、切符や定期券にだけ対応した改札機が設置されているが、切符が詰まりやすくなり、いつ壊れてもおかしくない状態だ。

 利用者からはICカードの利用を希望する声も上がっていた。

しかし、ICカードに対応した改札機に切り替えるには多大なコストがかかる。一方で顔認証システムは、「タブレット1台で運用できるので、利便性だけでなく、コストも抑えられる利点がある」(山万の担当者)という。

 

(6)21年5月から約2年間、顔認証技術を持つ「パナソニックコネクト」(東京)、乗り換え案内検索大手で決済・チケット管理システムを提供する「ジョルダン」(同)と共同で実証実験を実施。

利用した地域住民約100人からは、「子連れでも手を離さず通過できる」「現金を用意しなくていいので便利」などの肯定的な意見が寄せられ、本格導入を後押しした。

 

(7)「顔認証システム以外は駅でQRコードのついた乗車券を購入しQR認証機に通して乗り降り」

山万は15日以降、従来の切符と定期券は新規の販売をしない。

顔認証システムを利用しない人は、駅の券売機でQRコードのついた乗車券を購入し、QR認証機にかざして乗り降りする。購入済みの定期券などは期限が切れるまで使用できる。

 

(8)「公共交通機関を足がかりに暮らし全体に顔認証が利用できる街づくりを進めたい」

1970年代から、同ニュータウンの開発を続けてきた山万。

今後は、顔認証システムで決済できる仕組みを周辺の商業施設や飲食店にも広げていきたい考えだ。担当者は「公共交通機関を足がかりとして、暮らしのあらゆる場面で顔認証が利用できる街づくりを進めたい」と話している。

 

(9)顔認証の登録は15日午前4時半から、専用サイトでできる。駅窓口での申し込みも可能だ。