菌類なのに…「食」から「衣」「住」のキノコへと環境に優しく“繁殖中”(24年6月13日 読売新聞オンライン無料版)

[New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「キノコ多角化」。

 

記事

 

(1)「環境に優しいキノコ菌糸を使用した新技術による皮革の代替品」

キノコを食するだけではなく、観賞や別の素材としての活用が広がっている。環境に優しいキノコ菌糸を使用した新技術による皮革の代替品など、様々な分野で繁殖中だ。

 

◆健康志向の高まり 販路開拓

 

(2)「キノコを活用した「代替肉」料理」雪国まいたけ製

サクサクとした食感の串カツに、甘くてやわらかい具材が入ったビーフシチュー、かみごたえのあるジャーキー。どれもキノコを活用した「代替肉」料理だ。

(開発したキノコ生産「雪国まいたけ」(新潟県)の加藤真晴・研究開発室長)

「自社生産のキノコと調味料を調合し、肉らしいおいしさにこだわった」と話す。それぞれの料理に合った肉っぽい食感を楽しめ、かむほどにうま味を感じる。

 

(3)「牛肉や豚肉よりも高たんぱく低カロリーで食物繊維が豊富なキノコの代替肉」

同社は約2年かけ、牛肉や豚肉よりも高たんぱく低カロリーで食物繊維が豊富なキノコの代替肉を開発した。

代替肉は料理ごとに大きさや硬さを調整できるという。同社は「高齢化が進む中、健康を意識する人々のニーズを捉えたい」とし、今年度中の商品販売を目指している。

 

(4)「近年は、キノコの生産量や消費量は横ばい傾向」

キノコは日本に深く根付いた食品で、2022年の主なキノコの国内生産量は46万トンに達し、60年前に比べ約8・7倍になる。だが近年は、生産量や消費量は横ばい傾向にあり、生産業者は新たな販路を模索してきた。その一つが、環境配慮や健康志向の高まりによって広がる代替肉市場だ。

キノコ生産「ホクト」(長野県)も販売を視野に、研究を進めている。

 

◆育てて食べるキット 売れ行き好調

 

(5)「キノコ栽培キット」(キノコ種菌製造「森産業」(群馬県))

「育てて楽しむ」に焦点を当て、栽培キットを約20年前から販売してきた。売り上げが急増したのはコロナ禍が始まった20年。巣ごもり需要により、自宅でキノコ栽培に挑戦する人が増え、商品の売り上げは前年比でおよそ25%増加した。

 

(6)「1週間ほどで収穫できたり観賞しても楽しい」

自宅で収穫し、食べるだけではなく、日々成長する様子やかわいらしい形状も人気だ。

品種によっては1週間ほどで収穫でき、「キノコ嫌いの子が食べるきっかけになった」という声も寄せられた。

観賞用として栽培を楽しむ人も増え、食用・非食用ともに売れ行きは好調だ。

 

(7)「菌糸活用の技術で「衣」「住」へと応用が進んでいる」

キノコは菌類で、糸状の「菌糸」が集積したものだ。菌糸を活用した技術は、「マイコテック」と呼ばれ、「食」から「衣」「住」へと応用が進んでいる。

 

(8)「菌糸を使った代替皮革「マッシュルームレザー」を製造」(マイセルジャパン)

国内外の企業が出資し、22年に設立した「マイセルジャパン」(長野県)は、培養した菌糸を使った代替皮革「マッシュルームレザー」を製造している。生産時に使う水の量など環境負荷は少なく、羊の革と同等の耐久性を持つ。

キノコならではの独特な色合いも特徴で、キノコ菌糸100%の素材を使った財布や名刺入れが商品化された。

(同社の小渕皇太取締役)

「将来的には需要に伸び悩む食用キノコ生産者に既存の設備を活用しながら生産してもらい、増産を目指したい」と語り、成長性に手応えを感じている。

 

◆新素材の可能性

 

(9)「キノコ菌糸使用した製品の開発は海外が先行。発泡スチロールの代替品も実用化」

キノコ菌糸は様々な生活必需品を生み出す可能性を秘めているが、開発は海外が先行しているのが実情だ。米国の企業などでは発泡スチロールの代替品が既に実用化されている。