経団連、選択的夫婦別姓を提言 早期実現求める(24年6月11日 日本経済新聞電子版)

 

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(1)経団連は10日、選択的夫婦別姓の早期実現を求める提言を発表した。

婚姻時に夫婦いずれかの姓を選ばなければならない今の制度は「女性活躍を阻害する」と訴えた。経団連が選択的夫婦別姓についての主張を政策提言にまとめたのは初めて。

 

(2)「通称とパスポート記載の姓が異なると海外ホテルでトラブルやクレジットカードつくれないことも」

同日に記者会見した十倉雅和会長は「当事者個人の問題として片付けられず、企業にとってビジネス上のリスクになっている」と述べた。

選択的夫婦別姓は「ダイバーシティー(多様性)政策の一丁目一番地」だとも語った。

経団連が5月に実施した調査では、役職員に戸籍上の姓とは別の旧姓などの通称の使用を認めている企業が9割だった。

他方、通称とパスポートなどに記載された姓が異なるため、海外でホテルのチェックイン時にトラブルになったり、クレジットカードをつくれなかったりする事例が挙がった。旧姓を使い続けるために「形式的離婚をした」との声もあった。

 

(3)「希望すれば生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる制度に」

会員企業の女性役員に聞くと、旧姓の通称使用が可能な場合でも「何かしら不便さや不都合、不利益が生じる」との回答が88%に上った。

10日に発表した政策提言では改姓による負担が女性に偏っていると分析した。新たに「希望すれば生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる制度」が必要だと提起した。

 

(4)選択的夫婦別姓を導入する民法改正を唱えた1996年の法制審議会(法相の諮問機関)の答申は「現在においても社会の実情を踏まえた極めて妥当な内容だ」と指摘した。通称の使用を法制化する案も出ていると触れて、国会での議論が進展するよう促した。