韓国南北軍事合意停止を決定<声「北からソウルへのトンネルを塞ぐ。統一協会は日韓トンネル掘削北へ提供

韓国、南北軍事合意 停止を決定 境界近くで訓練準備(24年6月5日 日本経済新聞電子版)

 

記事【ソウル=甲原潤之介】

 

(1)韓国政府は4日、北朝鮮と2018年に結んだ南北軍事合意の効力を停止すると決定した。

軍事境界線周辺で制限していた射撃訓練を再開する準備に入る。北朝鮮によるミサイル発射などの軍事活動や、汚物風船の散布に対処する。

 

 

(2)閣議で合意の全面停止を決め、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が許可した。

18年の合意は韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長(ともに当時)が平壌で結んだ。南北の緊張緩和に向け「一切の敵対行為を全面中止する」と約束した。

韓国と北朝鮮は合意に基づき、軍事境界線から2キロメートルの非武装地帯(DMZ)の外側に、双方が軍事活動を控える地域を設けていた。

 

(3)韓国は23年11月、北朝鮮の軍事偵察衛星の打ち上げを受けて軍事合意を一部停止し、境界線周辺の空中で偵察活動を再開した。

北朝鮮は24年1月に海上の境界線の近くで砲弾を撃ち、韓国は合意順守を解いて海上で対抗射撃した。

今回の合意の全面停止を受け、韓国軍が陸上でも北朝鮮により近い地域で射撃訓練などを実施できるようになる。

 

(4)韓国国防省は6月4日、軍事境界線から5キロメートル以内の制限されていた区域で射撃や訓練を正常化すると説明した。訓練再開の時期は明示していない。一方的に緊張を高めず、北朝鮮の出方を見極める姿勢がうかがえる。

 

(5)北朝鮮は5月27日に軍事偵察衛星の打ち上げを断行し、28日以降はゴミなどをくくり付けた「汚物風船」を韓国に相次ぎ散布した。

韓国大統領府は国民の動揺を誘う「心理戦」とみて、拡声器で北朝鮮に不利な情報を流す対抗措置をちらつかせている。

韓国軍の広報担当者は6月4日、スピーカーを地面に設置する「固定式」と、車両に取り付ける「移動式」があり、移動式はすぐ作戦に投入できると説明した。18年の合意に基づき撤去されたスピーカーを、軍が装備として維持管理しているという。

 

(6)北朝鮮は2日の談話で、汚物風船の散布を「中断する」と表明した。

韓国の民間団体が風船を使い、北朝鮮側に反体制ビラを散布していることへの対抗措置と位置づけ、韓国が散布するなら「再開する」としている。

南北の緊張の高まりを「韓国側の責任」と主張できるようにする狙いがあるとみられる。

 

(7)北朝鮮は6月下旬に朝鮮労働党の重要政策を決める中央委員会総会を予定する。韓国は7月に米首都ワシントンで開く北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に招かれている。夏には定例の米韓合同軍事演習も計画され、政治日程などを契機に偶発的な衝突が起こるリスクがある。