トランプ氏有罪評決、政治的迫害の訴えに中ロが同調-民主主義を批判(24年6月5日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)

 

記事の概要

(1)要点

  •     中国ではトランプ氏支持者らに再び米議会襲撃を呼びかける声も
  •     同盟国は米国の民主主義よりも軍事支援が重要、他に選択肢なく

(2)「中露専制国家が米国民主主義攻撃、トランプ擁護」

(3)「中露の主張は米共和党トランプ派議員らの言い分と共有」

(4)「米大統領前のタイミングの有罪評決」

(5)「トランプ含む米国指導者がプーチンや習近平による侵略から守るとの確約するのかが最大関心」

(6)「日韓豪比を含め米国同盟国は『自分に何か利点があるのか』と取引重視の大統領に対応せざるを得ない」(元シンガポール外務次官)

(8)「トランプ氏は控訴可能で、起訴したニューヨーク州の検察はすでに議会で証言を求められている」

(9)「政治家が有罪判決を受けてきたと言うことは民主主義制度が正常に機能していることの表れ」

 

記事(Daniel Ten Kate、Philip Heijmans、Anna Edgerton)

 

(1)要点

  •     中国ではトランプ氏支持者らに再び米議会襲撃を呼びかける声も
  •     同盟国は米国の民主主義よりも軍事支援が重要、他に選択肢なく

 

(2)「中露専制国家が米国民主主義攻撃、トランプ擁護」

トランプ前米大統領に有罪評決が下された先週、中国とロシアのコメンテーターは即座に米国の民主主義の失敗だと断じた。

(中国)

 ソーシャルメディア上では、ユーザーがトランプ氏の支持者らに再び米議会議事堂を襲撃するよう呼びかけ、内戦に発展する恐れがあると警告した。

中国国営中央テレビ(CCTV)は11月の米大統領選を「茶番」と一蹴。

(ロシア大統領府)

ペスコフ報道官はトランプ氏が「合法か非合法かを問わずありとあらゆる手段」で迫害されているのを「全世界」が目にしていると述べた。

 

(3)「中露の主張は米共和党トランプ派議員らの言い分と共有」

もっとも、ロシアと中国はかねて、米国の制度を非難してきた。だが、両国の主張は、米共和党議員らの言い分とも重なる。

共和党幹部ですら、今回の裁判を「司法制度の武器化」と表現。これに対抗して、民主党員を裁判にかけてみせるとの声も上がる。

トランプ氏は「選挙を妨害するための不正な裁判で有罪評決を受けた」とし、政治的な迫害だと主張する。

  

(4)「米大統領前のタイミングの有罪評決」

米大統領選を数カ月後に控えたタイミングで下されたトランプ氏への有罪評決は、世界に影響を与える。

民主主義を守る砦(とりで)として振る舞う米国は、その真価が再び問われることになるだろう。

大統領経験者に対する有罪評決は米国では異例だが、ブラジル、イスラエル、韓国、イタリア、フランスなど他の民主主義国家では、これまで元指導者が裁判にかけられている。

スウェーデンの独立調査機関V-Dem研究所のデータによると、過去15年間で、世界の人口に占める割合で独裁国家が民主主義国家を抜いた。とりわけ東欧とアジア諸国の一部で民主主義が著しく後退した。

  

(5)「トランプ含む米国指導者がプーチンや習近平による侵略から守るとの確約するのかが最大関心」

米ピュー・リサーチ・センターの2月の報告書は、調査対象とした22カ国の半数で、統治形態として議会制民主主義が非常に良いと考える人の割合が2017年以降減っていることを明らかにした。

  だが、ウクライナや台湾、フィリピン、バルカン諸国の政府にとっての懸念は、米国の民主主義がどれほど強いかよりも、むしろトランプ氏を含め米国の指導者がロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席による侵略から守るとの確約を提供してくれるかどうかだろう。

他に信頼できる選択肢がないという純然たる事実があるためだ。

  

(6)「日韓豪比を含め米国同盟国は『自分に何か利点があるのか』と取引重視の大統領に対応せざるを得ない」(元シンガポール外務次官)

「米大統領が誰であっても、聖人であろうと罪人であろうと、われわれはその大統領に対処しなければならない」。1993-98年にシンガポール外務次官を務め、国連安全保障理事会の元議長でもあるキショール・マブバニ氏はこう話す。

その上で「日本、韓国、オーストラリア、フィリピンを含め、この地域の米国の同盟国はすべて、『自分にとって何の利点があるのか』とそれぞれに問うような取引重視の大統領に対応せざるを得なくなると思う」と続けた。

  

(7)第2次イラク戦争、世界的な金融危機、根深い人種問題などによって、米国のソフトパワーは数十年にわたって損なわれてきたとアナリストは指摘する。これらは米国による中国共産党批判に対して反論する際に取り上げる問題だ。

  

(8)「トランプ氏は控訴可能で、起訴したニューヨーク州の検察はすでに議会で証言を求められている」

民主党はトランプ氏に対する有罪評決について、権力者であっても罪を犯せば責任を問われるという、米国の制度が適切に機能していることを示す事例だと主張。

一方、共和党は、有罪評決に値するほどの深刻な内容ではないと反論している。

トランプ氏は控訴が可能なほか、起訴したニューヨーク州の検察はすでに議会で証言を求められている。

 

(9)「政治家が有罪判決を受けてきたと言うことは民主主義制度が正常に機能していることの表れ」

民主主義擁護を目的とする団体「フリーダム・ハウス」の暫定トップを務めるニコール・ビビンズ・セダカ氏によると、2001年以降、米国内の独立司法機関により有罪判決を受けた米政界の要人は両党合わせて数十人に上る。

「これは政治的な取り組みではなく、民主主義制度が正常に機能していることの表れだと考えている」と同氏。

「民主主義が実行されている証拠であり、民主主義と法の支配に対する信頼を強めるきっかけになることを願う」と述べた。

 

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原題:Trump’s Persecution Claims Get Amplified by US Rivals Abroad

 

<私見:

「(9)「政治家が有罪判決を受けてきたと言うことは民主主義制度が正常に機能していることの表れ」

これは否定しようがない。あたしはこの見方を支持する。

ともかく、議会襲撃を止めることができたはずの大統領が襲撃を阻止しなかった。共和党は、大統領選挙候補としてほかに有力な人材がいないと言うことが根本原因。

共和党はリンカーンを輩出し、世界恐慌でもできるだけ政府の介入を控えようとした「自由主義」の政党です。

それが戦中、戦後、野党になったので、政権奪取の秘策として自分たちが国家を動かすという「教会」や、自由を最大化する「自由至上主義」や「ティーパティ」のような極端に小さな政府を目指す勢力、そして元は民権運動に熱心な民主党員だったゴールドウオーターが、民主党の公民権法案があまりのも「連邦政府」の権限が大きすぎることに反対し、共和党に鞍替えし、彼が「保守主義の政治家」として共和党の中心になり、選挙を戦ったら、結構、うまくいった。

さらに元民主党内部の保守派が共闘に鞍替えして「ネオコン」としてイラク戦争を推進した。

ここから共和党が狂い始めた。>