中国大使の恫喝に「同意」 鳩山由紀夫氏よ、世界中で愚昧な発言繰り返すのは慎め 岩田温(24年6月2日 産経新聞オンライン無料版)

日本の選択

 

記事

 

写真 中国大使館で開いた座談会で発言する呉駐日大使(中央)。鳩山氏(左)と、社民党の福島瑞穂党首(右)も出席していた=20日、都内

 

(1)ドイツの哲学者ニーチェ『この人を見よ』という著作

 一読してみると、

 「なぜ私はこんなに賢明なのか」

 「なぜ私はこんなに良い本を書くのか」

など、自分でここまで書くのかと思われるような目次(章のタイトル)に驚く。ここまでの自画自賛は珍しい。

『この人を見よ』を思い出したのは、民主党政権の初代首相、鳩山由紀夫氏の異常な発言に驚愕(きょうがく)したからだ。

 

(2)先日、中国の呉江浩駐日大使は、台湾問題をめぐって次のように日本を恫喝(どうかつ)した。

「日本という国が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」

日本が台湾独立に加担することへの警告のつもりのようだが、これは警告というより恫喝だ。

以前、北朝鮮は他国の都市を「火の海にする」と喧伝していたが、まるで北朝鮮の威嚇を思い起こさせる発言だといってよい。

 

(3)「鳩山由紀夫氏」

この発言が飛び出した中国大使館での座談会に出席した鳩山氏

驚くべきことに、「日本は台湾が中国の不可分の一部であることを尊重しなければならない」「基本的に同意する」などと述べたという。

文字通り、わが眼を疑うとはこのことだろう。

日本の首相まで務めた人物が、中国大使の日本に対する恫喝に同意しているのだ。あきれるより他ない。

 

(4)現代日本において『この人を見よ』とのタイトルで鳩山氏を論ずるとすれば、「なぜ鳩山氏はこんなに愚かなのか」「なぜ鳩山氏はここまで中国に阿(おもね)るのか」が中心とならざるを得ないだろう。

 

(5)「鳩山氏のすべての著作、論考、対談を調査したが、国家観がまったく希薄だった」

われわれ日本国民が反省すべきなのは、このような人物を首相に就任させてしまったこと。

現在でも、元首相として世界中で日本に仇(あだ)なす愚行、奇矯な発言を繰り返している。

以前、国会図書館で鳩山氏のすべての著作、論考、そして対談まで調査したことがある。

その際に見えてきたのは、彼には国家観がまるで希薄であるという事実だ。

 

(6)宇宙から眺めれば国境は見えないなどと主張しているのだ。これは極めて当然の事実で、国境とは人間の概念に他ならない。

概念は物質とは異なって眺めることは不可能だ。そして、彼は見えないのだから存在しないとばかりの論理を展開する。

だが、人間にとって概念は重要だ。

例えば、「夫婦」は概念だ。外から見て、「夫婦」と理解できない。だから、「夫婦」など存在しないという話にはならない。だが、鳩山氏にはこうした単純な人間の知的営為が理解できない。

 

(7)「引退した「亡国の宰相」は世界中で愚昧な発言を繰り返すのは慎むべき」

彼の中では「国境」など存在すべきではないのだろう。

だからこそ、中国大使が日本に対して恐るべき暴言を吐いても抗議の声すらあげない。恐るべき「亡国の宰相」が引退したことは歓迎すべきだ。

だが、世界中で愚昧な発言を繰り返すのは慎むべきではないか。

 

岩田温

いわた・あつし 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。大和大学准教授などを経て、現在、一般社団法人日本学術機構代表理事。専攻は政治哲学。著書に『いい加減にしろ!』(ワック)、『日本再建を阻む人々』(かや書房)、『興国と亡国―保守主義とリベラリズム』(同)など多数。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。