AIの学習、原則規制せず 内閣府検討会 知財侵害、利用とは区別 生成創作物「人の発明」(24年5月29日 日本経済新聞電子版)
記事の概要
(1)「AI時代の知的財産権検討会」の中間とりまとめ(高市経済安全保障相)
(2)「権利者を守るためには法規制強化でなく、技術対策や対価還元と組み合わせて」
(3)「データ学習段階では意匠法や商標法、不正競争防止法の規制の対象外」
(4)「6月の「知的財産推進計画2024」に反映」
(5)「著作権法の解釈は文化庁の小委員会での議論を踏まえた」
(6)「規制を強化せずに知財を保護する方策」
(7)「発明の保護のあり方」
(8)「クリエーターなどからは原則、法規制の対象外とすることに反発」
記事
(1)「AI時代の知的財産権検討会」の中間とりまとめ
内閣府は28日、生成AI(人工知能)と知的財産保護のあり方を議論する「AI時代の知的財産権検討会」の中間とりまとめを公表した。
知財権についてAIに学習させる段階では原則、権利侵害は発生しないと整理した。
知財担当の高市早苗経済安全保障相が28日の記者会見で発表した。
(2)「権利者を守るためには法規制強化でなく、技術対策や対価還元と組み合わせて」
クリエーターなどには実効性を疑問視する意見もある。
(3)「データ学習段階では意匠法や商標法、不正競争防止法の規制の対象外」
データ入力などの学習段階と、画像・音声・文章などを出力する生成・利用段階にわけて考え方をまとめた。
意匠法や商標法、不正競争防止法において、学習段階は原則規制の対象外になると明記した。
(4)「6月の「知的財産推進計画2024」に反映」
検討会は2023年10月に始まったもので、6月に公表する政府の「知的財産推進計画2024」に反映する。
例えば、
1)デザインなどの意匠は商品やサービスに使われることで権利侵害が生じる。学習すること自体は侵害にならない。
2)ただし、営業秘密データを不正に取得して学習するようなケースは不競法の規制対象になり得るとした。
3)著作物も原則許諾なく学習できる。
4)ただし、「創作的表現をそのまま出力」する目的で学習させるなら規制の対象となる可能性がある。
(5)「著作権法の解釈は文化庁の小委員会での議論を踏まえた」
AIによる記事や画像の無断学習が権利侵害に当たりうる事例といった著作権法の解釈は文化庁の小委員会での議論を踏まえた。
(日本新聞協会)
1)文化庁の見解に関し、著作権者に一定の配慮を示した内容で「権利の適正保護に向け一歩前進した」との認識を表明していた。
2)「新聞社などのウェブサイトから、AI開発事業者などがデータを無許諾で収集することに一定の歯止めをかける解釈だ」と評価する。
3)AIの開発事業者には「適切な対価を払って著作物を正々堂々と利用」するよう要請。「他人の知的財産にタダ乗りするビジネスは許容されるべきではなく、根本的な法改正に向けた議論が必要だ」とも指摘した。
(6)「規制を強化せずに知財を保護する方策」
内閣府の中間とりまとめでは
(生成・利用段階による権利侵害について)
1)意匠法、商標法、不競法においてAI特有の事情が考えづらい」とした。
従来の考え方を適用し、他の意匠や商標に似ているかどうかが権利侵害の判断になる。
2)著作権においても従来の解釈通り、元の作品と似ているか、元の作品に接してまねたかといった視点で判断する。
3)「規制を強化せずに知財を保護する方策」
ア)AIが生成したコンテンツを識別する「電子透かし」などの技術
イ)契約によって開発者が権利者に対価を支払い、良質な学習データを得られるライセンス市場の形成――
を挙げた。
(7)「発明の保護のあり方」
1)創作物にAIを利用した場合、現時点では「人の発明」だと結論づけた。
(理由)AI自身が自律的に創作活動に関与しないから。
ただし、これからの技術進展に伴って検討が必要になる可能性にも言及した。
(8)「クリエーターなどからは原則、法規制の対象外とすることに反発」
AIの学習段階の扱いを巡り、クリエーターなどからは原則、法規制の対象外とすることに反発する声があがっている。
「やったもん勝ち」(著作権法に詳しい中島博之弁護士)
「クリエーターなどが『自身の著作権が侵害された』と訴えても、実際の裁判でAI事業者が学習データをしっかり出すのか。提出しても膨大なデータを検証できるのかといった問題がある」と話す。
「いったん整理したがこれで終わりではない」(知財法制が専門の飯島歩弁護士)
AIによって「『人』と『道具』の関係が曖昧となり、人間も完全にコントロールできない」と語る。
政府の取りまとめについては「いったん整理したがこれで終わりではない」と指摘した。