欧州議会選、極右躍進か 揺らぐEU統合の理念(24年5月26日 日本経済新聞電子版)

 

記事(欧州総局長 赤川省吾)

 

(1)要点

6月6~9日に行われる欧州議会選で、極右・右派政党が躍進しそうだ。今秋のドイツ地方選やオーストリア議会選でも極右が伸びる見込み。

「極右旋風」が吹き、多様性を重んじるリベラルな欧州社会が危機にさらされている。

 

写真 フランスの極右政治家ルペン氏=ロイター

 

(2)オーストリア

「我々は常軌を逸した欧州連合(EU)に支配されている。もうEUの命令はうんざり」。5月10日、ウィーンの集会で極右・オーストリア自由党の幹部は声を張り上げた。政権公約に「自国優先」を掲げ、愛国主義が大切だと説く。

 

(3)欧州議会はEUの産業規制などに大きな影響力を持つ。そんな重要な役割があるのに移民排斥や反EUを公言する極右・右派政党の合計支持率が2割強に達し、首位の穏健保守会派(支持率25%前後)に迫る。

 

(4)

有権者にとって身近ではない欧州議会選では、もともと不満票が出やすい。そこに移民・難民への嫌悪感や、物価高による生活苦が重なり「エリート政治の打破」を訴える極右政党に追い風が吹く。

極右は、ジェンダー意識の高まりなど社会の急速なリベラル化に反発する守旧派も取り込む。社会の分断が深まる米国で、トランプ前大統領に支持が集まる構図に似た面がある。

 

(5)

選挙後、EUの政策はどう変わるのか。

極右への対抗上、穏健政党は移民制限に傾き「寛容な移民政策」はさらに後退する。

景気停滞と改革疲れで環境政党は伸び悩む。旗振り役が失速し、温暖化対策は足踏みしそうだ。

 

(6)

幸いにも極右・右派政党は「反移民」のほかは各党の意見の隔たりが大きく、一枚岩になりそうにない。

右傾化を好ましく思わない民意もあり、第1党はフォンデアライエン欧州委員長の出身母体である穏健保守が維持しそうだ。そうなら焦点の外交・安全保障政策で大転換はないだろう。

 

穏健保守の軸となるドイツの保守政党・キリスト教民主同盟(CDU)の有力者、キーゼウェッター連邦議会議員は取材に応じ、今後はウクライナの北大西洋条約機構(NATO)への加盟を「排除してはならない」と語った。対ロシア強硬路線が続く。

欧州の最大の試練は政策面ではなく、むしろ社会の変質ではないか。

 

極右勢力は白人キリスト教文化を優先し「文化的な他人」を排除すべきだと訴える。これまで欧州では人種差別は「隠すべきもの」だったが、公言しても構わないかのような危うい風潮がうまれつつある。

欧州は世界における「倫理観のリーダー」を自任し、人権の尊重や民主主義を強権国家に求めてきた。自らの排他主義を抑え込めないなら、現代版の啓蒙主義といえる欧州流の価値観外交は色あせる。

「多元主義、非差別、寛容の社会」と定めるEUの理念が揺らげば、欧州統合が根底から揺らぐ。いま欧州の良心が問われている。

(欧州総局長 赤川省吾)

 

<私見:

そもそも「極右」の定義はあるのでしょうか。ただ自分たちの理念に合致しない政党、政治団体のレッテル貼りにみえる。トランプ氏が「極右」なら民主党のサンダース氏は「極左」?そんなことは言えない。

記事の内容も赤川氏のただの独りよがりにしか見えないのは、どういうこと?

移民が各国で具体的に「犯罪や福祉財政の負担」などで国民から支持を得られなくなっていると日経も報道していたと思う。

移民で喜ぶのは「低賃金労働者」の供給源となるから、賃金水準を低く抑えられる業界の経営者。

赤川さん、どうしちゃったのかしら>