ECBセンテノ氏、賃金伸び加速はインフレ懸念する理由にならず(24年5月26日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)

 

記事(Ragnhildur Sigurdardottir、Mark Schroers)

 

(1)要点

  •     センテノ・ポルトガル中銀総裁がブルームバーグに語る
  •     実質賃金の回復は2%へのインフレ率の収束と両立し得る

 

(2)「実質賃金の回復は、2%へのインフレ率の収束と両立し得る」

(欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバー、センテノ・ポルトガル中銀総裁)

24日、ユーロ圏の賃金の伸びが1-3月(第1四半期)に加速したことについて、インフレを懸念する理由にはならないとの見解を示した。

  センテノ氏は、ロシアのウクライナ侵攻を受けた消費者物価高騰による実質賃金の低下は今後数年間で反転する見通しだが、そのペースはまだ分からないと語った。

  同氏はアイスランドのレイキャビクで開かれた会議の合間にブルームバーグに対し、「われわれの予想を0.2ポイント上回ったことについて深読みし過ぎることはない。この実質賃金の回復は、2%へのインフレ率の収束と両立し得る」と述べた。

リンク ユーロ圏賃金、1-3月は伸び加速-ECBに警戒促す結果に

 

グラフ Euro-Area Wage Growth Ticked Up Again in First Quarter

 

(3)「賃金やユーロ圏経済回復が定着するデータがあり、追加利下げは投資家には不透明」

6月に想定されている最初のECB利下げ後の金融政策の道筋は不透明になっている。

賃金データや、ユーロ圏経済の回復が定着しつつあることを示唆する別の統計を受け、最初の利下げ後の追加金融緩和について投資家の期待は後退している。

  センテノ氏の発言は、物価の下落基調がなお続く中で市場は過剰反応したと同氏が見なしていることを示唆している。ECBのラガルド総裁も今月、消費者物価の急激な伸びはおおむね抑制されたとの認識を示した。

 

リンク ECBのラガルド総裁、6月利下げを示唆-インフレ抑制を強く確信

  

(4)

(ECB政策委員会メンバーのビルロワドガロー・フランス中銀総裁)

今週の賃金データをECBが「過剰に解釈すべきではない」と述べ、当局はディスインフレのプロセスになお自信を持っているとした。

(ミュラー・エストニア中銀総裁)

ブルームバーグとのインタビューで同様の見解を示した。

 

リンク ユーロ圏、賃金加速もインフレ低下に変化ない-エストニア中銀総裁

  

ECB政策委員会のタカ派メンバーであるナーゲル・ドイツ連邦銀行総裁は24日、想定されている6月の初回利下げ後に追加利下げをする場合、恐らく9月まで待つ必要があるとの見方を示した。主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が開催されているイタリア北部ストレーザでブルームバーグテレビジョンに語った。

 

リンク ECB追加利下げ、9月まで待つ必要があるだろう-独連銀総裁

  

(5)「中銀当局者はユーロ圏2の経済回復には楽観的で、消費者物価の伸びの鈍化続くという見通し」

センテノ氏は、ユーロ圏20カ国の経済回復について楽観的な見方を示した上で、それでも消費者物価の伸び鈍化が続くと自身を含む中銀当局者はみていると説明。

  

(6)「生産性の数字の回復が、ディスインフレのプロセスを確実なものにするのに寄与する」

成長の数字が「続くことを目にする必要がある。ユーロ圏経済が多少回復してもディスインフレのプロセスを危うくすることはないだろう。ここ数年間はポジティブではなかった生産性の数字の回復が、ディスインフレのプロセスを確実なものにするのに寄与するだろう」と述べた。

 

原題:ECB’s Centeno Sees No Reason to Worry Over Jump in Wages(抜粋)