病院敷地内の薬局、調剤報酬引き下げ 「かかりつけ機能不足」で 業界は反発(24年5月24日 日本経済新聞電子版)

 

記事

 

(1)要点

厚生労働省は6月の調剤報酬改定で、医療機関と同じ敷地に立地する「敷地内薬局」について収入のベースとなる「調剤基本料」を引き下げる。敷地外の薬局はいずれも職員の賃上げなどを理由に基本料を上げる。8年前の規制改革で生まれた敷地内薬局には「医薬分業」から反対意見が根強い。

 

(2)薬局の処方箋による売上高は、国が定めた調剤報酬の点数で決まる。

1点あたり10円で、多いほど薬局の収入が増える。薬局の規模やタイプで決まる調剤基本料に各種加算や薬自体の値段を上乗せする。

調剤基本料

 地域薬局の「基本料1」

 病院のそばにある「基本料2」、

 大手チェーン店舗の「基本料3」、

 敷地内薬局などの「特別基本料」、

 いずれにも該当しない

の4種類。

 

(3)

6月施行の2024年調剤報酬改定では、1~3で点数を3点引き上げる一方、特別基本料のうち敷地内薬局は2点引き下げる。

改定後の点数は、最も高い基本料1が45点、敷地内薬局は5点となり、差は40点に開く。

敷地内薬局は他医療機関との連携などで評価する各種加算も減額となる。

薬局チェーンが加盟する日本保険薬局協会(NPhA)の吉野隆之・前専務理事は「敷地内薬局をやるなというのに等しい」と述べた。

 

(4)「医薬分業原則を2016年に規制緩和して敷地内薬局ができた」

敷地内薬局は16年に政府の規制改革によって誕生したが、その基本料は改定のたびに引き下げられてきた。

医療機関と薬局を切り離す「医薬分業」の観点から、報酬を決める中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)で懸念意見が多いためだ。

 

(5)

厚労省は地域に根ざして幅広く患者に対応する「かかりつけ薬局」を推進しており、「現状の敷地内薬局はあるべき姿ではない」(安川孝志薬剤管理官)というスタンスだ。

敷地内薬局

 1)立地する医療機関の患者が主に来店するため、かかりつけ薬局としての機能が不十分

 2)医療機関に土地や建物の高額な賃借料を支払うという関係性にも問題。

 

(6)

規制緩和をしながら報酬は下げるというやり方に企業側の理解は得られそうにない。

NPhAの吉野前専務理事は「規制そのものではなく、調剤報酬の側から戻そうという動きは不自然。改革しても数年で締め付けるということが起きると、今後行政の規制改革に期待することができなくなる」と指摘する。