「いい女って、やっぱり飽きる」 あぶ刑事で8年ぶり薫に戻った浅野温子が目指すもの(24年5月24日 産経新聞オンライン無料版)

映画「帰ってきたあぶない刑事」

 

「薫は寄り添うことができた最初の役」と語る浅野温子(石井健撮影)

 

(1)「帰ってきた あぶない刑事」(原廣利監督)は、タイトル通り、前作から8年ぶりに横浜に帰ってきたタカとユージが大暴れする痛快なアクション作品。

浅野温子(63)が、奇抜で強烈な異彩を放つキャラクターを演じるのも、このシリーズならではの話題だ。

 

(2)「あぶない刑事」は、舘ひろし(74)と柴田恭兵(72)が演じる刑事コンビ、タカとユージを主人公に昭和61~62年に日本テレビ系で1年にわたって放送されたドラマ。横浜を舞台に派手なアクションとしゃれたセリフで人気を博し、映画も今回が8年ぶり8作目を数える。

 

(3)前作で定年退職し、日本を離れたタカとユージだったが、8年ぶりに横浜に舞い戻り、探偵事務所を開く。

そこへ母親を捜してほしいという依頼人(土屋太鳳)が現れる。

浅野が演じる真山薫は、タカとユージを叱咤激励する美人刑事として最初のドラマから登場したが、そのキャラクターは次第にコミカルなものに変化した。

今回も強烈な登場のしかたをするが、この変貌は浅野自身の発案によるものだったという。

 

(4)「当時のドラマの女性刑事役は、たいてい母性が強い存在でした。だけど、それでは、タカとユージの世界観には合わない。2人に合わせて薫を変えていったんです。薫は自分で生み出したというか、寄り添うことができた最初の役でした」

ただ、薫の変化はどんどんエスカレート。奇抜な扮装も辞さない、きわめてコミカルで特異なキャラクターへ〝進化〟する。

 

(5)一方で浅野は、フジテレビ系のトレンディードラマ「抱きしめたい!」(昭和63年)で人気を博し、時代を代表する〝トレンディー女優〟でもあったのだが…。

 

「いい女って…うーん。やっぱり飽きる。美人って替えが利くし、役者としてはつまらない。きれいな女優さんは大勢いるから、私じゃなくてもいい。もっと幅のある演技ができる何かを見つけたかったんです」

 

(6)8年ぶりに薫を演じたが、「突然、話がきた。ドラマが再放送されていたわけでもないのに、誰がどういう意図で、この時期に映画を作ろうと言い出したのかしらね。でも、なんか、お尻に殻がついているみたいな感じで、薫にはすぐに戻れるんです」と笑う。

 

(7)日本の古典、民話などを題材とした一人舞台劇「浅野温子 よみ語り」を20年以上続け、ライフワークになっているが、薫という役もまた、浅野のライフワークといえそうではないか。

「え? あれれ、そうかもしれないですね。この番組、映画が、こんなに長く続くとは誰も思っていなかった。それが、舘ちゃんも恭平ちゃんも『ハーレーダビッドソンに乗れて、自分の足で走り回れる限り、〝あぶ刑事〟は続ける』なんていってますからね」(石井健)

24日から全国公開。2時間。

あさの・あつこ 昭和36年、東京都出身。52年、ドラマ「文子とはつ」(TBS系)で俳優デビュー。56年に「スローなブギにしてくれ」で映画初主演。ドラマも「あぶない刑事」シリーズのほか「101回目のプロポーズ」(平成3年、フジテレビ系)など多数出演。