荷主の「買いたたき」、公取委が迅速に取り締まり…「2024年問題」を受け下請法改正へ(24年5月22日 読売新聞オンライン無料版)

 

記事の概要

(1)要点「公正取引委員会が下請法改正で、荷主と運送事業者の取引も監視対象に」

(2)「来年の法改正」<声「そんなに悠長でいいのか

(3)「現行 荷主は消費者と運送屋の「仲介」だからコスト上昇分は荷主には転嫁できない」

(4)「運送屋が、コスト増加分を荷主に転嫁し、賃上げ原資にする環境を整える」

(5)「トラック運送 コスト上昇分を転嫁できたのは24%」(中小企業庁の調査)

(6)「独禁法による違反行為の排除措置命令を出すには年単位の時間がかかる」

 

記事

 

(1)要点「公正取引委員会が下請法改正で、荷主と運送事業者の取引も監視対象に」

トラック運転手の不足で輸送力の低下が懸念される物流の「2024年問題」を受け、公正取引委員会が下請法改正に乗り出すことがわかった。

荷主と運送事業者の取引は現在、下請法の対象外だが、同法を適用できるようにする。

運送事業者に支払う運賃を著しく低い水準に抑える「買いたたき」を行う荷主を下請法で迅速に取り締まれるようにすることで、運送事業者がコスト上昇分を取引価格に転嫁しやすくする。

 

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(2)「来年の法改正」<声「そんなに悠長でいいのか

自民党中小企業・小規模事業者政策調査会などが近く政府に対し、法改正を提言する。

政府は6月に策定する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に盛り込む方針で、来年の通常国会での改正を視野に入れている。

 

(3)「現行 荷主は消費者と運送屋の「仲介」だからコスト上昇分は荷主には転嫁できない」

仕事を発注する荷主の立場が強いことが多いものの、下請法では明確な下請け関係にないとされている。

例えば、

消費者が家電を買う場合、荷主となる家電量販店は運送事業者を手配して消費者の自宅に有料で商品を配送するが、下請法では、荷主は消費者と運送事業者の取引を「仲介」しているだけで、下請け関係とはみなされない。

 

 

 企業が取引先の部品メーカーから部品を買う場合も同様だ。荷主となる部品メーカーが運送事業者を手配して企業に部品を届ける取引は、下請法の適用外となる。

 

(4)「運送屋が、コスト増加分を荷主に転嫁し、賃上げ原資にする環境を整える」

政府は、荷主と運送事業者の取引が下請け関係にあるとみなせるように法改正することで、公取委が荷主による買いたたきなどを積極的に取り締まれるようにする。

運送事業者がコストの増加分を取引価格に転嫁し、賃上げの原資が確保できる環境を整えることで、物流業界が直面する運転手の人手不足の解消につなげる狙いもある。

 

(5)「トラック運送 コスト上昇分を転嫁できたのは24%」(中小企業庁の調査)

コスト増に対する取引価格への転嫁率は、「トラック運送」が24%と主要業種中で最も低かった。

人件費やガソリン価格の上昇分について荷主が取引価格への反映を拒む例や、荷主の都合で積み下ろし場所で運転手が待機する「荷待ち時間」の料金支払いを拒む例があるという。

 

(6)「独禁法による違反行為の排除措置命令を出すには年単位の時間」

荷主と運送事業者の取引については、悪質なものは独占禁止法の優越的地位の乱用で取り締まることができる。

ただ、独禁法で違反行為をやめさせる排除措置命令を出すには年単位の時間がかかり、迅速な法執行に課題がある。