イラン大統領搭乗のヘリが事故、外相同乗 安否不明(24年5月19日 22:47 (2024年5月20日 7:42更新 日本経済新聞電子版)

 

写真 イランのライシ大統領=イラン大統領府提供・AP

 

記事【ドバイ=福冨隼太郎】

 

(1)イランメディアは19日、同国のライシ大統領が搭乗したヘリコプターが異常着陸する事故があったと報じた。

ライシ師は同日、隣国アゼルバイジャンとの国境近くを訪問していた。

イランのアブドラヒアン外相もヘリコプターに同乗していた。搭乗者の安否など詳しい情報は分かっていない。

 

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(2)同国のバヒディ内相によると、救助隊が現地に向かっているが濃霧などの悪天候のため作業が難航している。

ドローン部隊も現場に向けて緊急活動を実施しているという。

 

 

 

(3)同国メディアによると、異常着陸が発生したのはイラン北西部の東アゼルバイジャン州の山中。ライシ師やアブドラヒアン氏らを乗せて飛行中に「困難」に遭遇し、着陸せざるを得なかったと伝えた。

ヘリコプターは3機で編成され飛行していた。イランメディアによると他の2機は安全に着陸したという。

 

(4)ライシ師は同日、イランとアゼルバイジャン国境付近にあるダムの式典に出席した。アゼルバイジャンのアリエフ大統領と会談していた。

 

(5)イラン最高指導者のハメネイ師は19日、「国民は心配や不安を抱くべきではない。国の機能が支障をきたすことはない」と強調。ライシ師らの安全を祈るよう国民に求めた。同国メディアが伝えた。

 

写真 アゼルバイジャンとイランとの国境のダムの開所式に参加するイランのライシ大統領(19日、アゼルバイジャン)=イラン大統領府提供、ゲッティ共同

 

(6)イランはイスラム教シーア派の聖職者が国を統治する。

国政全般の最終決定権を持つ最大権力者はハメネイ師で、大統領は行政の長という位置づけにとどまる。

63歳のライシ師は司法府長官などを経て2021年6月の大統領選挙で当選し、同年8月に大統領に就任した。

対米強硬路線などを基軸とする保守派として知られている。

84歳と高齢のハメネイ師の後継者候補ともされている。

 

◆「後継者選びで、国際的孤立下にある国民の不満噴出の可能性も」松尾博文 (日本経済新聞社 本社コメンテーター・上級論説委員)

分析・考察

安否の確認が待たれます。万が一の場合、中東情勢の一層の流動化が避けられません。

大統領の身に何かあれば、それが事故であれ、なんらかの作為であれ、国内の保守強硬派にはイスラエルによる陰謀を唱える声があがるでしょう。

4月の対イスラエル攻撃はぎりぎりの線で抑制しましたが、テヘラン指導部の統制を超えた偶発的な衝突を招く恐れがあります。

イスラム革命体制の行方も不透明さを増します。

保守強硬派のライシ大統領は最高指導者ハメネイ師の後継者の有力候補とされてきました。ハメネイ師はすでに85歳。後継者選びが振り出しに戻ることで、国際的孤立下にある国民の不満が噴出し革命体制のひずみが拡大することになりかねません。

2024年5月20日 0:03 (2024年5月20日 1:03更新)