良かれと思ってさせた「習い事」で、子どもの自尊心がガタガタに 3兄弟の母が伝えたい“習い事地獄”の教訓(24年5月19日 newsYahoo! AERA with Kids Plus)

 

要点

「なんとなく」「楽しそう」で始めた習い事が結果的に本人の充足感やいつの間にか成長につながっていたとは本当に皮肉。

 

記事

 

(1)「子どもの得意を伸ばしたい」「学習面で1歩リードしたい」といった親の願いをよそに、うまく続かず悩むことが多い子どもの習い事。

3兄弟を子育て中のコミックエッセイストtomekkoさんも、習い事ラビリンスをはまってしまい、毒親丸出し&失敗の連続だったといいます。

ダイヤの原石を磨いているはずが、ズタボロにしてしまった子どもの自己肯定感。どん底から抜け出すきっかけとなった心境の変化について綴ります。

 

(2)「T大生が子どもの頃にやっていた習い事は!?」

こういうランキング、子育てしているとよく目に入ってきますよね。

 頭の出来と習い事には実は相関関係などなく、通わせやすく習う人の絶対数が多いから結果的に有名大学に合格した人の割合も多いだけ、とわかってはいても。

 

(3)長男は小さい頃から受け身で意思が見えにくい子だっただけに親のほうが前のめりでした。

習い事にもいろんな目的があるでしょうが、わが家の場合は得意なことを見つけて/苦手なことは克服して「自信をつけさせたい」こればかりを考えていました。

ここにご参考までに、子の気持ち置いてけぼりで毒親が『良かれと思って』やらせた習い事地獄の結末を、自戒を込めてまとめておきますね。

 

(A)運動が苦手→全身運動だし夫が好きなスポーツだから教えられる!→サッカースクール

結果:人とぶつかることが嫌で、ボールの場所に関係なくひたすらコートの周りを走るだけのジョギングで終わる

 

(B)それならぶつかり合いがなく個人競技でプレッシャーにならないスイミングだ!

結果:同時期に始めた同級生と送迎バスで通っていたことにより、一人だけずっと進級できずどんどん置いていかれ劣等感の塊に。

 

(C)左利きだけど両手をバランスよく使って脳に刺激を与えたい。あわよくば暗算が得意になって算数に苦手意識を持たないように→そろばん教室

結果:類まれなる不器用さと興味のなさから全く玉の動かし方を覚えず、計算力に微塵も影響を及ぼさなかった。

 

(D)論理的思考力をつけて地頭を鍛えれば勉強も得意に→オンラインプログラミングスクール

結果:最初のうちは面白がって自作のゲームを作ったりしていたが、難易度が上がってくるとやる気を失う。親も教えられないし、オンライン指導の限界を感じて退会。

 

(E)勉強がそんなにできなくてもせめて英語が得意なら!→コロナ禍のオンライン英会話

結果:文法、単語などの基礎ができていない状態でいきなり英会話だけをやっても何も身につかなかった。カメラに映らないところで漫画読んでいたことが後々発覚。

 

(4)ほかにも塾や体操教室……懲りずにありとあらゆる習い事に飛びつきましたね。

これらすべて、やればやるだけ「できない」ことを露呈させ、子どもの自尊心を傷つける本末転倒な結果になりました。

親毒でビタビタに漬け込んでいたことに気づいた時には長男は「どうせボクなんて」が口癖になってしまっていました。

こうなってから「そんなことないよ!」「自信を持って」なんて言ってもムダムダムダ。

 

(5)そんな習い事地獄の中で、長男の反応が他とまったく違ったものが2つだけありました。

A)ご近所のママ友が先生でだったので、軽い気持ちで始めた書道は、左利きの長男の知られざる右手の力を知らせてくれました。

緊張感ある固い字を丁寧に書く左手の硬筆に対して、右手の程よく力の抜けた悠々とした毛筆を初めて見た時の驚きと感動は忘れられません。自分と向き合いひたすら納得いくまで黙々と進められる書道は、彼自身の癒しにもなっていたみたい。

B)もう一つは次男の勢いに引きずり込まれる形で始めた少年野球。

2年生からここまで、一度も辞めたいと言わずに通いました。

監督曰く試合運びをいつも誰よりしっかり見て動き、腐らず練習して見違えるほど腕を上げたのだそう。そして中学でも野球を続ける選択をしたのでした。これぞ「好きこそものの上手なれ」であり「継続は力なり」。

 

(6)次男と三男は長男とは真逆ではっきり意思表示をし、やりたいとなったらやれるまであきらめず訴え続けます。

習い事に笑い、習い事に泣いた子育て13年目。私と同じ道をたどる親が少しでも減ることを願っています。

誤解してほしくないのは、子どもにいろんな習い事をやらせてみること自体は否定していません。なんの気なしに触れてみた刺激がその子にどう刺さるかは未知数だもの。

大事なのは、これが得意になれば有利、あれが苦手だから克服させたい、脳や体の成長を活性化させたい……なんて期待するのは子のためではなく全部親のエゴ。

現在はというと、親の思惑とはまったく異なり3兄弟が全員野球人となりました。

野球を通してこれを学んでほしい、甲子園を目指してほしいとかの具体的な目標は何一つありません。

それでも毎週遠い練習場まで自転車で通う長男は自然と地理と時間感覚と主体性を身につけているし、ピッチャーを担う次男は度胸と状況判断力を鍛えているし、暑さ寒さに弱い三男は忍耐力がついてきているし……。

 

○tomekko

主婦力は低いが妄想力は高いアラフォー。3兄弟に育てられる日々。

主な著書に『飛んで火に入る』(講談社モーニング)、『おっとり長男もっちり次男きょうだい観察手帳』(赤ちゃんとママ社)など。『AERA with Kids』で連載中の「脱・カンペキ親修行」は7年目に突入!