EU、メタを追加調査 インスタなどに「中毒性」(24年5月17日 日本経済新聞電子版)

 

記事【ブリュッセル=辻隆史】

 

(1)「インスタグラムとフェイスブックの仕組みに中毒性があり未成年者の健康を損なう」

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は16日、米メタに対する追加の調査を始めたと発表した。

メタの動画共有アプリ、インスタグラムとフェイスブックの仕組みに中毒性があり、未成年者の健康を損なうと問題視した。

 

(2)EUのベステアー上級副委員長は16日の声明で「私たちはオンライン利用者の安全を確保するための新たな一歩を踏み出した。若者の心身の健康を守りたい」と強調した。

ブルトン欧州委員(域内市場担当)も声明で「メタはデジタルサービス法(DSA)の義務を順守するために十分な対応をとっているとは思えない」と指摘。今後厳しい措置も辞さない構えを示した。

 

(3)「インスタグラムには「ウサギの穴効果」という依存症を引き起こすリスクがある」

調査開始は違法コンテンツ対策をプラットフォーマー企業に義務付けるEUのDSAに基づく。

欧州委は4月、メタが6月の欧州議会選を前に十分な偽情報対策をとっていないとして調査に入った。同じ法律に基づき別の問題を指摘しメタに新たな圧力をかけた。

欧州委はインスタグラムの仕組みが「ウサギの穴効果」と呼ばれる依存症を引き起こすリスクを明示した。

アプリ上で「おすすめ」をたどると、似たような種類のコンテンツが次々に表示される。その結果、未成年者の関心が狭まることを懸念する。

 

(4)年齢確認の仕組みや、性的・暴力的といった不適切なコンテンツへのアクセス防止の措置も不十分だと指摘した。

未成年者が視聴する際、心身の健康に害が及ばないようメタがどのような対応をとっているかを調べる。メタ関係者との面談や査察を通じ、法律違反がないか証拠を集める。

 

(5)「「ウサギの穴」問題を巡り「TikTok」の運営会社も調査」

「ウサギの穴」問題を巡っては、欧州委はすでに動画共有サービス「TikTok(ティックトック)」の運営会社に対しても指摘し、調査を続けている。

欧州委は4月、TikTokの簡易版アプリの機能に依存リスクがあると批判した。アプリ内でポイントを稼いでクーポンなどに交換できる仕組みだ。未成年に有害と判断した欧州委はサービスの停止措置をとると警告。

TikTok運営会社は最終的に、この機能を欧州で自主的に停止すると発表した。

 

(6)「EUはデジタルサービス法(DSA)で、米国は子どものメンタルヘルスに有害で」

EUはプラットフォーマーへの締め付けを強める。DSAに加え、巨大IT(情報技術)企業による独占・寡占を防止するデジタル市場法を活用する。

「デジタルサービス法(DSA)」では偽情報対策に加え、「未成年者の保護」の観点からプラットフォーマーへの調査を積極的に進める段階に入った。

同法への違反が確認された場合、巨額の制裁金を科す可能性がある。

米国でもSNS(交流サイト)による自死の誘発など、子どものメンタルヘルスへの悪影響に関する認識が広がる。子どもがSNSアカウントを持つことを禁じるなど、州レベルでの規制が先行する。