GDP年率2.0%減 景気回復、足取り鈍く 1~3月実質、車不正・円安響く(24年5月17日 日本経済新聞電子版)
記事
(1)要点「実質では設備投資や輸出ともに減少」<消費減少は(2)譲る>
景気回復の足取りが鈍い。内閣府が16日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質が前期比で年率換算2.0%減と2四半期ぶりのマイナスになった。自動車の生産停止の影響で設備投資や輸出が減少した。
(2)「GDPの6割を占める個人消費は4四半期連続のマイナス」
GDPの半分以上を占める個人消費は前期比0.7%減で4四半期連続のマイナスだった。
4期連続の減少はリーマン危機に見舞われた2009年1~3月期以来で、さかのぼれる範囲で減少期間として最も長い。
(内閣府の担当者)
「消費のマイナス要因の多くは自動車問題が占めた」と説明する。
認証不正に伴うダイハツ工業の生産停止が販売減につながった。日本自動車工業会によると乗用車の販売台数は1~3月にかけ前年割れが続いた。
(3)「雇用者報酬は実質で前期比0.4%減」
円安や原油高を背景とした物価上昇に賃金の伸びが追いついていない。
国内の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比で3.6%上昇と6四半期連続でプラスだったが、収入の動きを示す雇用者報酬は実質で前期比0.4%減だった。
(4)「人手不足の建設工事や生産の目詰まりで、企業受注残高が37兆円と過去最高」
消費に次ぐ民需の柱である設備投資は前期比0.8%減だった。減少は2四半期ぶりとなる。普通乗用車やトラックへの投資が落ち込んだ。
人手不足による建設工事や生産の目詰まりも解消されていない。
民間の非居住用建築の出来高は2月まで5カ月連続で前年同月割れだ。企業が発注した生産設備などの機械類のうち出荷や受け渡しに至っていない受注残高が2月末で37兆円と過去最高に積み上がる。
(5)「民間住宅 資材高や人手不足による建築費の高騰で着工件数減少」
民間住宅は2.5%減で、住宅メーカーは資材高や人手不足による建築費の高騰で着工件数が減っていると指摘する。
(6)内需は民間部門が総崩れで、プラスだったのは公共投資(3.1%増)や政府最終消費(0.2%増)など政府部門だった。
(7)「輸出は自動車に左右され減少」
外需も弱い。輸出は5.0%減と4四半期ぶりに減少。ここも自動車不正が影響した。稼ぎ頭となっている自動車に左右されやすい日本経済の現状を映す。
(8)「名目GDPは5.3%増の597兆円と最高 名目と実質が乖離」
4~6月は回復軌道に乗るとの見方が多い。
23年度の実質GDPは前年度比で1.2%増と3年連続のプラス成長となった。金額は558兆円と18年度以来、5年ぶりに過去最高を更新した。名目は5.3%増の597兆円と最高だ。
名目と実質の開きは家計や設備投資で使う見かけ上の金額が増えても、数量は増えていない日本経済の実態を示す。
(9)
電気・ガス料金の負担軽減策は5月分で終了し、6月には定額減税が始まる。政策頼みではなく、賃上げを通じて成長の歯車を回せるかが持続成長の条件となる。