車載ソフト開発でトヨタ・ホンダ・日産が連携へ…米中勢に対抗で自前主義を転換(24年5月16日 読売新聞オンライン無料版)

 

記事

 

(1)要点

トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車が、車に搭載するソフトウェア開発で連携する方向で検討に入った。

メーカーが個別に開発する自前主義からの転換を進め、一部の仕様を共通化して開発の効率化につなげたい考えだ。

米中勢に電気自動車(EV)のデジタル化技術で先行されるなか、日本勢が協力態勢を敷いて対抗する狙いがある。

 

(2)「経産省と国交省の自動車のデジタル戦略 25年度以降の連携」

経済産業省と国土交通省が月内にまとめる自動車のデジタル戦略に盛り込まれる。

夏以降に具体策を協議し、2025年度以降の連携を目指す。スズキやマツダ、SUBARU(スバル)、三菱自動車など他の国内勢にも広げたい考えだ。

 

(3)「ソフトが中核部分だがメーカーごとに仕様が異なる状況を変える必要」

最近の車はハンドル操作やブレーキなど、基本機能もソフトが制御している。

ソフトが中核部分を担い、その優劣が競争力に直結しつつある。「自動車大国」の堅持には、メーカーごとに仕様が異なる状況を変える必要があると判断した。

 

(4)「ソフトやシステム間をつなぐ役割を担う基盤部分APIの仕様の共通化」

今後、「API」と呼ばれるソフトやシステム間をつなぐ役割を担う基盤部分の仕様の共通化を検討する。

3社が仕様を共通化すれば、バッテリーやセンサーなどもメーカーの垣根を越えて搭載できる。参入障壁が下がり、スマートフォンアプリのように、外部企業による多様なサービス開発も期待される。音声認識や地図、自動運転といったサービス間の連携も容易になる。

 

◆API  ビジネス+IT

APIとは? プログラム同士をつなぐ「インターフェース」

APIとは「アプリケーション・プログラミング・インターフェース(Application Programming Interface)」の略称です。一言で表すと、ソフトウェアやプログラム、Webサービスの間をつなぐインターフェースのことを指します。 

「インターフェース」とは、何かしらの「境界面」「接点」のことで、異なる2つの事物の間をつなぐという意味を持ちます。

たとえばキーボードやマウス、ディスプレイは人間とコンピューターの境界上で使われる「ユーザーインターフェース」の1つとして知られます。

「APIを利用するメリット」

 たとえば、Web APIの場合は「ログイン情報」「クレジットカードの決済情報」など個人情報に関わる認証処理、「画像認識システム」「データ分析AI」といった高度で複雑な情報処理が、APIを通してカード会社やITプラットフォームにアクセスすることで可能になります。

 

「APIの利用のリスク」

 たとえば、API経由で送ったデータをAPI提供者がどのように使うか分かりません。また、自社のサービスやソフトウェア機能の一部を外部に依存することは、自社のソフトウェアやサービスの動作が不安定になったり、維持費が増加したりする恐れもあります。 

 さらに、APIを使うことでアプリケーションやサービス全体の処理が不透明になってしまう場合も少なくありません。リクエストに対するレスポンスの多くが想定どおりのものだったとしても、APIの内部で行われている処理が開示されていない場合には、想定外のレスポンスによって大きなトラブルが発生する恐れがあります。

(以上)

 

(5)「米中の新興メーカーは、ソフトを設計や開発の中心にして車の価値を高めている」

 ただ、新たな仕様の選定ではメーカー間の公平性を巡る議論などが避けられない。各社は必要性では一致しつつも、実現に向けてのハードルは多い。

 それでも協調を急ぐのは、世界で車の設計・開発思想が刷新されようとしているためだ。

米中の新興メーカーは、ソフトを設計や開発の中心に据えて車の価値を高める戦略をとる。

 

(6)テスラ 中国

(米テスラ)

 スマホのようにインターネットを通じて車のソフトを更新し、性能をアップデートできる。

有償で機能も追加でき、販売後の車で稼ぐ仕組みづくりに成功した。

(中国)

21年以降、業界でAPIを共通化する取り組みを進め、AI(人工知能)などの先端技術を搭載し始めている。

 

ソフト人材の育成も課題だ。会社の壁を越えて協調できる領域を設け、自動運転などの先端分野に人材を充てられる環境を整える。