ウォール街、株価暴落へのヘッジ需要消失-落ち着き取り戻す(24年5月12日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)

 

要点

(7)資産全体のストレスレベルがこれほど低下した場合、投資家は注意を払うべきだと指摘。

「重要なのは周りの市場の恐怖ないし満足感が行き過ぎている時を見極め、適度な規模で反対方向に動くことだ」と説明した。

 

記事(Denitsa Tsekova、Emily Graffeo)

 

(1)要点

  •     先月は米金利がより高くより長く維持されるとの懸念が広がっていた
  •     株式、債券、債券のボラティリティーが低下

 

(2)数週間にわたった米市場のドラマが終わり、ウォール街の至る所に平和が訪れている。

  トレーダーは今年に入りハト派的な金融政策見通しの撤回を迫られているものの、ポートフォリオを市場の混乱から守るヘッジ需要は消失した。

  

(3)株式から債券まで大小さまざまなオプション取引で恐怖感が薄れる中、株価暴落に対するヘッジ需要は、ある指標では9年ぶり低水準となった。

(バンク・オブ・アメリカ(BofA)のクロスアセット・ストレス指標)

市場の穏やかさを示唆している。

  

(4)「先月は、高金利の長期化での暴落の恐怖があったが」

先月は政策金利がより高くより長く維持されるのではないかとの懸念が市場に広がり、株のボラティリティーが高まる中で投資家は下落に備えるヘッジを積み増していた。

  しかしその後、好調な企業決算や揺るがない景気拡大によりセンチメントは変わった。投資家はデータを重視する米金融当局をもはや敵視していない。

 

  

 

(5)ウォール街は落ち着きを取り戻した。

S&P500種株価指数は3週連続で上昇。米国債も2週連続で上っげた。

「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数の予想変動率指標であるVVIX指数は2015年以来の低水準となり、株価急落に対する投資家のヘッジ意欲後退が示唆された。

  

(6)「強気派は過去、株価急落への備えを解除して大やけどを負っている」

落ち着きが戻ったことは強気相場の持続を示唆している。しかしウォール街の強気派は過去、株価急落への備えを解除して大やけどを負っている。

また経済データはまちまちで、専門家も景気循環の方法を見極めるのは難しい。

  ジョーンズトレーディングのチーフ市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏は予想を上回るインフレ率が発表されれば直ちにヘッジは戻るだろうと述べた。4月の米消費者物価指数(CPI)は15日に発表される。エコノミストは前月比0.4%上昇と、3月から横ばいになると予想している。

  

(7)

(ハーベスト・ボラティリティー・マネジメントのトレーディング・調査責任者マイク・ジグモント氏)

資産全体のストレスレベルがこれほど低下した場合、投資家は注意を払うべきだと指摘。

  「認識されるリスクのレベルが低ければ低いほど、ショックに対する市場の反応も大きくなる」とした上で、「言うはやすく行うは難しだが、重要なのは周りの市場の恐怖ないし満足感が行き過ぎている時を見極め、適度な規模で反対方向に動くことだ」と説明した。

 

原題:Wall Street Offloads Crash Insurance as Fear Fades Across Assets(抜粋)