中国企業が「世論工作システム」開発か、Xアカウントを乗っ取り意見投稿…ネットに資料流出 (24年5月12日 newsYahoo! 読売新聞オンライン)

 

要点

システムの目的

 中国国外の世論を監視し、工作を仕掛けることとし、

 <好ましくない反動的な世論を検知するニーズに応えるためにシステムを構築した>

 <社会の安定には、公安機関が世論をコントロールすることが極めて重要>などと示

 

記事の概要

(1)「企業の営業用資料とみられる文書がインターネットに流出」

(2)「上海「安洵信息技術有限公司」のものが「ギットハブ」に公開された」

(3)「好ましくない反動的な世論を検知し公安機関が世論をコントロールすること」

(4)「不正URLを送信しクリックさせることでアカウントを乗っ取る」

(5)「Xで、中国語や日本語で中国の反体制派を批判するケースが増加」

(6)「2010年設立企業 国や地方の公安、警察などがパートナーとして感謝状」

(7)「契約先は地方都市の公安当局が多い」

(8)「記載されている工作の手口などから「本物」と確信」(台湾のサイバーセキュリティー企業)

 

記事

 

(1)「企業の営業用資料とみられる文書がインターネットに流出」

中国政府と取引関係にあるIT企業(本社・上海)が、X(旧ツイッター)のアカウントを通じて、世論工作を仕掛けるシステムを開発した疑いがあることがわかった。

このシステムを紹介する営業用資料とみられる文書がインターネットに流出していた。

日本の情報機関も入手して本物とみて分析を進めており、中国の対外世論工作との関連を詳しく調べている。

 

リンク【図解】ソーシャルメディアを使った中国の世論誘導のイメージ(メタの報告書に基づく)

 

(2)「上海「安洵信息技術有限公司」のものが「ギットハブ」に公開された」

ネットに流出した文書は約20ページで、上海に拠点を置く「安洵信息技術有限公司」のものとみられる。2月中旬、同社の別の内部資料とされる約580ファイルとともに、IT技術者らがネット上で情報を共有するサービス「ギットハブ」に公開された。

 

(3)「好ましくない反動的な世論を検知し公安機関が世論をコントロールすること」

読売新聞が入手した文書には、

1)表紙

 中国語で<ツイッター世論誘導統制システム 製品紹介資料>という題名と、2022年の第1版であることが書かれている。

 

2)システムの目的

 中国国外の世論を監視し、工作を仕掛けることとし、

 冒頭には<好ましくない反動的な世論を検知するニーズに応えるためにシステムを構築した>

     <社会の安定には、公安機関が世論をコントロールすることが極めて重要>などと示している。

(写真:読売新聞)

 

(4)「不正URLを送信しクリックさせることでアカウントを乗っ取る」

文書などによると、このシステムを使って

 1)他人のXのアカウントに不正URLを送信し、

 2)クリックさせることでアカウントを乗っ取ることができる。

 3)その結果、

   本来は外部から閲覧できないダイレクトメッセージを盗み見たり、

   中国当局の意に沿った意見を勝手に投稿したりすることが可能になる。

 

(5)「Xで、中国語や日本語で中国の反体制派を批判するケースが増加」

日本政府関係者によると、近年、他人に乗っ取られたとみられるXのアカウントが、中国語や日本語で中国の反体制派を批判するケースが相次いでいる。こうしたシステムが使われている可能性がある。

 

(6)「2010年設立企業 国や地方の公安、警察などがパートナーとして感謝状」

同社のホームページ(現在は閉鎖)によると、同社は2010年に設立され、北京や四川、江蘇、浙江省に拠点がある。スパイの摘発などを行う国家安全省にIT製品を納入する業者に選定されたほか、国全体の治安維持にあたる公安省や、地方警察の公安当局を「パートナー」として紹介。各機関から贈られた感謝状も掲載していた。

 

(7)「契約先は地方都市の公安当局が多い」

流出した約580ファイルには同社の契約台帳も含まれ、利用者の多くが地方都市の公安当局だった。

通信アプリ「テレグラム」向けの工作システムとみられる製品を地方の公安当局に販売した記録も残されていた。

 

(8)「記載されている工作の手口などから「本物」と確信」(台湾のサイバーセキュリティー企業)

読売新聞は同社に電話やメールで問い合わせたが、11日夜までに回答はない。

 同社の動向を20年から注視している台湾のサイバーセキュリティー企業「TeamT5」チーフアナリストのチャールズ・リー氏は、資料に記載されている工作の手口などから「本物の流出文書と確信している」との見方を示した。

さらに「中国が世論工作のために西側諸国のSNSを利用する意志と能力を持っていることを示す初の証拠だ」と指摘した。