実はあの本のパクリだった!札幌高裁「同性婚」判決、驚きの真実 八木秀次(麗澤大教授)(24年5月10日 産経新聞オンライン無料版)

 

記事

 

(1)「「同性どうしで結婚できないのは違憲 名古屋地裁」(朝日新聞)は誤報」

マスコミ報道は分かりやすさを追求するためか、しばしば法律論が大雑把になりがち。

同性婚問題についてはちょっと粗雑に過ぎる。

昨年までに全国5カ所の地裁で、同性同士の「婚姻」を認めない現行の民法や戸籍法の規定などについて判決が出された。

多くのマスコミが、このうち4地裁で同性婚を認めていないことを「違憲」「違憲状態」とする判決が出た、と報道していた。

例えば朝日新聞は「同性どうしで結婚できないのは違憲とした5月の名古屋地裁判決」(昨年6月21日付)と書いた。しかし、これは明らかに誤報だ。

 

(2)判決をよく読めば分かるが、実はこれらの中に、単純に同性婚を認めないこと自体を「違憲」や「違憲状態」とした判決は一つもない。

これらの判決は、同性愛者に対し結婚そのものを認めなければならないと言っているのではなく、結婚で得られるメリットの一部(例えば社会的承認など)を得られるようにすべきだと言っているに過ぎない。

逆に言えば、「同性婚」そのものの導入を命じることは慎重に避けられている。

 

(3)例えば、札幌地裁の判決

 「同性愛者に対しては、婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは…合理的根拠を欠く差別取扱いに当たると解さざるを得ない」と述べるにとどめ、「婚姻を認めないこと」自体で違憲と断定されていない。

言い換えれば、せいぜい同性パートナーシップ制の法制化を示唆している程度で、同性婚法制化には躊躇していると言っていい。

少なからざる裁判官が、結婚を男女間に限定した現行制度を改めさせたいと思っているのは事実だろう。

しかし、結婚を男女間に限定することを「違憲」とすることには躊躇しているのである。

 

(4)「憲法24条「婚姻は両性の合意のみに基いて成立」があるから裁判官は違憲に躊躇する」

躊躇せざるを得ない理由の一つに憲法24条の文言がある。同条は1項で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と定めている。つまり結婚は男性と女性の「両性」の合意によるものだと明言する24条の文言が、同性婚推進派の裁判官に対するストッパーになり、ストレートな違憲判決が出せないのが現実なのだ。

それなのにマスコミはこれを「同性どうしで結婚できないのは違憲とした」などと騒ぎ、多くの国民に「憲法が同性婚導入を命じている」と誤解させている。これでは、きちんとした同性婚をめぐる憲法論議はできない。

 

すり替えられた言葉の意味 憲法24条の「両性」が…

 

(以下有料記事)