「考え方などの多様性は組織のパフォーマンスに役立ち性国籍年齢などの多様性は役立たない」
〈多様性 私の視点〉2つの多様性、その違いは 経営学者 入山章栄氏(24年4月29日 日本経済新聞電子版)
記事
(1)「企業・組織でダイバーシティが進まない理由」
過去3回にわたり、多様性は組織のパフォーマンス向上に有効との学術的根拠が多く示されているにも関わらず、多くの企業・組織でダイバーシティが進まない理由を説明してきた。
「ダイバーシティが進まない理由」
ア)日本企業が多様性となじまない製造業モデルで成功してきたから、
イ)そのモデルが「経路依存性」で固められてきたから、
ウ)「ホモフィリー」により人は同質な他者との交流を好む傾向があるから、
の3点だった。
「4つめの理由」
今回と次回では経営学で重視される「多様性が進まない第四のメカニズム」を解説したい。それは社会分類理論による説明である。
(2)「多様性には2つの種類がある タスク型とデモグラフィー型」
前提として、多様性には2種類ある。
多様性は世界の経営学でも重要論点であり、既に半世紀以上の研究蓄積がある。
「統計的な解析でわかってきたこと」
多様性には大まかに2つの種類がある
ア)「タスク型の多様性」認知的な多様性。 外見や属性ではなく、その人の経験、知見、考え方など、人が内面で持つ認知的な多様性のことである。
イ)「デモグラフィー型の多様性」 性別、国籍・人種、年齢などの属性に基づく多様性のことだ。日本で「ダイバーシティ」は多くの場合、後者をイメージするのではないだろうか。
(3)「組織パフォーマンスにプラスになる多様性、マイナスになる多様性」
この2種類の多様性は組織にそれぞれどのような影響をもたらすのか。
「前者は組織パフォーマンスにプラスの影響をもたらす。後者はプラスにならなかったり、場合によってはマイナスの影響をもたらす」。
たとえば(米イリノイ大学のアパーナ・ジョシら)
過去の統計分析の結果を集積して検定するメタ分析という手法を使った研究でも、まさにそのような結果が得られている。
(4)なぜタスク型の多様性は組織にプラスで、他方でデモグラフィー型はマイナス効果を与えかねないのか。
その含意は何か……。それを次回、社会分類理論で解説しよう。