春秋(24年4月23日 日本経済新聞電子版)

 

記事

 

(1)「全体として潜水艦による被害が格段に大」。

太平洋戦争で日本が多数の船舶を失った原因を、旧防衛庁は戦後こう分析した。商船も次々海中から狙われた。資源に乏しい島国が海路を断たれて生きる術(すべ)はない。日本を袋小路に追い込んだのは潜水艦だったともいえる。

 

(2)▼深い海にひそむ潜水艦は、現代に至るまで非常に強力な兵器である。

だからこそ海上自衛隊の航空部隊は対潜戦が主要任務とされる。その難度は高い。「海中は複雑極まる環境。相手は常にこちらを出し抜こうと狙っている」。裏の裏の読み合いが延々続く世界だと、海自元幹部の岡崎拓生氏は説く(「潜水艦を探せ」)。

 

(3)▼海自の対潜ヘリ2機が太平洋上で墜落した。

フライトレコーダーが近接して見つかり、衝突した可能性が高いという。海面近くで音波収集装置(ソナー)を投じて相手艦の動向を探るヘリは、対潜戦で重要な役割を果たす。深夜の厳しい訓練のさなか、予期せぬトラブルに見舞われたのか。不明者の捜索と救助が急がれる。

 

(4)▼1年前は陸自ヘリが墜落し10人もの死者が出た。

災害多発もあって自衛隊の負荷が増す昨今である。練度不足か疲弊なのか、事故が続く背景が気にかかる。最高指揮官の首相が日米同盟強化をうたったからとて、現場の体制が十分かどうかは別の話だ。冷静な現状分析と対処が要る。先の大戦で日本が欠いたことでもある。